リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき

文字の大きさ
182 / 302

181話 衝突(2)

しおりを挟む
「セディ格好いい……リズちゃん、聞いた? 『離れないで、側にいて』だって。どうしよう」

「えー……と、セドリックさんそんな風に言ってたかなぁ」

 言葉を並べればその通りなんだけど、ルーイ先生の言い方だと別の意味に聞こえちゃう。
 セドリックさんは私達にこの場から動くなと命じた。それは、現在セドリックさんと睨み合っているカレンの仲間の所在がはっきりしていないからだ。その仲間が屋敷の敷地内に……私達の近くで身を潜めているかもしれない可能性を危惧しての事。
 細かいニュアンスはともかくとして、先生はセドリックさんから心配されて嬉しいみたい。さっきまであんなに痛そうにお尻を押さえていたのに……今ではそれが無かった事のように、キラキラした目でセドリックさんを見つめていた。

「残念だよ、リズ。あなたとは良いお友達になれると思っていたのに」

「カレン……」

 彼女の言葉が胸に刺さる。そんなの……私だってそう思っていたんだ。その台詞をそのままカレンに返してやりたい。

「ジェフェリーさん、あなたには主君を救って貰った恩義があります。今後エルドレッド様に関する情報を口外しないと約束して頂けるのなら、命を奪うまでは致しません」

 速やかにこの場から去れば見逃すと、カレンはジェフェリーさんへ打診する。彼は完全に巻き込まれた形なので、わざわざ危険な場所に居続ける必要は無いのだ。ジェフェリーさんはゆっくりと視線を巡らせた。カレンからセドリックさん……そして先生ときて最後に私。

「みんなを置いて自分だけ逃げるってのはちょっと……。先生だって怪我してるかもしれないのに」

 ジェフェリーさんの返答を受け、カレンは深いため息を吐いた。

「そうですか……本当に、本当に残念です」

 カレンが武器を構えた。彼女が手にしているそれに意識が向く。大きさは10センチそこそこで、剣というよりはナイフと言った方がしっくりくる。動物の爪のように刃が大きく湾曲している。鎌のようなナイフ……変わった武器だ。

「悲愴感に浸っているところ恐縮ですが、私がいる限りここにいる方達に手出しはさせませんよ? 当然のように私を倒した前提でお話ししておられますが、舐められたものですね」

 セドリックさんはカレンを挑発するような言葉を投げかける。これまでの様子からして、怒りの沸点が低いであろう彼女は簡単に焚き付けられてしまうだろう。セドリックさん……どうしてわざわざそんな真似を。

「それほど己に自信があるのでしょう。しかし、私から言わせて貰えば、中途半端に戦う術を身に付けた素人にしか見えません。相手の力量も測ることができず、大口を叩く様は滑稽が過ぎる。これなら我が軍の新人隊員の方が数段マシです。まぁ、そこは子供ですので世間知らずでも仕方ないのかもしれませんが……」

 きっと何らかの意図があっての事だろうけど、セドリックさんの言動に心臓が縮み上がるような感覚を覚えた。嫌な汗が背中を伝う。外野にいる私がこんなにもあたふたとしているのに、セドリックさんは涼しい顔のまま、手にした棒をくるくると器用に回している。

「あっは! 言うねー。強気なセディも嫌いじゃないよ」

「ルーイ先生、そんな呑気な……」

「……殺す」

 カレンが低く呻いた。当然予想できた展開だった。馬鹿にするかのようなセドリックさんの態度に、カレンは怒り心頭だ。私達の方へ向いていた彼女の目線が再びセドリックさんへと移動する。なけなしの理性も吹き飛んでしまったのか、カレンはセドリックさんへ向かって飛び出した。

「セドリックさん!!」

 勢い余って彼の名を叫んでしまったけれど、セドリックさんはとても冷静だった。むしろそれを待っていたのだとでも言うように、カレンの攻撃を簡単にいなしてしまったのだ。
 
「すげぇ……」

 ジェフェリーさんがぽそりと漏らす。私も呆気に取られた。早過ぎて何が起きたのかよく分からなかったんだ。一連の流れを理解出来ないまま、気が付いたらカレンは地面に両膝をつかされていた。

「やばい、超カッコいい。セディ……好き」

 どさくさで先生が告白紛いな事をしている。いつもなら興味津々ですけど、生憎と今はそれどころじゃない。さっきのセドリックさんとカレンの攻防も、ジェフェリーさんはしっかりと見ていてくれたので、私のために解説をしてくれた。ジェフェリーさんって目が良いんだな。

 カレンがセドリックさんへナイフで切り掛かった。セドリックさんは手にしていた棒を彼女の手首辺りに素早く当てて攻撃を受け止めると、その棒を軸にしてそのままナイフを持った腕ごと捻り上げたのだと。
 片腕を拘束されてしまったカレンは、そこからもう一方のナイフで反撃しようとした。しかし、それよりも早くセドリックさんは、棒のグリップ部分をカレンの肩に目がけて打ち込んだ。彼女はその衝撃で立っていられなくなり、地面に崩れ落ちた……という事らしい。

 セドリックさんとカレンの戦いは終了した。結果はセドリックさんの圧勝。蓋を開けてみればあっけないものだった。カレンはセドリックさんにがっちりと拘束されながらもまだ諦めていないのか、彼に向かって悪態をついていた。棒で殴られたからちょっと心配したのだけど、大事には至っていないようだ。セドリックさん、手加減してくれたんだな……

「放せ!! クソっ……!!」

「身柄確保……素直に私の方へ突っ込んで来てくれて助かりました」

 セドリックさんの挑発はワザとだった。カレンが私達ではなく、自分に攻撃してくるよう念を押したのか。

「ジェフェリーさん、ちょっと手伝って貰えますか?」

「はっ!? 俺ですか」

 まさかここで名を呼ばれるとは思っていなかったのだろう。セドリックさんにご指名を受けたジェフェリーさんは驚愕に目を見開く。

「すみません。今、両手が塞がっているもので……私の胸ポケットにハンカチが入っていますので、それでこの少女の口を縛って貰えますか? 万が一自害でもされたら困りますし、何よりやかましいので……」

「……分かりました」

 返事をしたものの、ジェフェリーさんはなかなかその場から動くことが出来ない。セドリックさんが抑えているとはいえ、ついさっきまで刃物を振り回していた人間に近付くのは怖いのだろう。

「ジェフェリーさん、俺が行こうか?」

 見かねた先生が代わりを申し出たところで、この場の雰囲気に少々そぐわない明るい声が響いた。
 
「えーっ!! ちょっとちょっと何これ、どういう状況?」

「ミシェルさん!!」

 セドリックさんの書き置きを読んだのだろうか。ミシェルさんが小走りでこちらに向かっている。私達を見て困惑しているけれど、それにはお構いなしでセドリックさんは彼女に命じた。

「丁度良かった。ミシェル、手を貸せ」

「ほんと……意味わかんないんですけど」

 説明は後回しにされ、何も理解できないまま彼女はセドリックさんの元へ足を進めた。ミシェルさんが来てくれたのでジェフェリーさんの出番は無くなり、彼はホッとしたように胸を撫で下ろしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫
恋愛
シャーリー・サヴォワは伯爵家の双子の妹として産まれた 。実の父と双子の姉、継母に毎日いじめられ、辛い日々を送っていた。特に綺麗で要領のいい双子の姉のいつも比べられ、卑屈になる日々だった。 そんな事ある日、父が、 何も言わず、メイドして働いてこい、 と会ったこともないのにウインザー子爵家に、ポイされる。 そこで、やっと人として愛される事を知る。 ウインザー子爵家で、父のお酒のおつまみとして作っていた料理が素朴ながらも大人気となり、前向きな自分を取り戻していく。 そこで知り合った、ふたりの男性に戸惑いながらも、楽しい三角関係が出来上がっていく。 やっと人間らしく過ごし始めたのに、邪魔をする家族。 その中で、ウインザー子爵の本当の姿を知る。 前に書いていたいた小説に加筆を加えました。ほぼ同じですのでご了承ください。 また、料理については個人的に普段作っているのをある程度載せていますので、深く突っ込むのはやめてくださいm(*_ _)m 第1部の加筆が終わったので、ここから毎日投稿致しますm(_ _)m

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

処理中です...