ミステイク・オブ・ゴッド~オネェ男子が迫ってきます~

雪宮凛

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馴れ初め編/第二章 お酒と油断はデンジャラス

17.情報過多です茅乃さん その3

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「……って、柳ちゃんも思わないー?」

「は、はい。そう……ですね」

 間接キス。國枝の口から何気なく紡がれた言葉は、恋愛免疫ゼロの千優を混乱へ陥れた。
 思いつきで言っただけか、それとも何か意図があるのかは不明。しかし、それを確かめる勇気などあるはずもない。
 千優は先程から、楽し気に話す彼を時折視界にとらえ、最低限の相槌を打ってばかりだ。そこに、彼女の心は伴っていない。
 それではダメと頭ではわかっているのに、どうしても意識と視線が、無意識に彼からそれてしまうのだ。

「…………」

「ふふっ」

「……っ!」

 チラリと盗み見た先で、男は無邪気に笑った。
 その様子から、千優はあからさまに目をそらす。
 変な奴、と思われているのは百も承知だと重苦しい心の中では、彼が一体何を思っているのかと、漠然とした疑問が揺蕩たゆたい続ける。
 飲み物の回し飲みなど、友達同士や家族でさんざんやってきたことなのに、三十歳を目前に控えその行為を意識するなど、誰が予期出来るだろう。
 あからさまに卑猥な言葉で表す男を恨むべきか、その冗談を真に受け狼狽える自分を呪うべきか。

(茅乃ー、早く戻ってきてー!)

 千優の願いはただ一つ。この膠着こうちゃく状態を切り抜けるための切り札だけだ。


「さっきから何回も言ってるだろう。特典欲しさで、どうせ探しまくるんだから、もう少し我慢しろって」

「発売日当日にゲットしないで何がオタクじゃー!」

「同じ本を二冊持ってても、場所を取るだけだ。予約し忘れてたお前が悪い」

「説教すんな、バカ介のくせに」

「あ? 誰がバカ介だこら。……最後の一冊、買ったのが俺で良かったな。他の奴だったら、お前また走り回る……って、蹴るな、地味に弁慶を蹴るな。いてぇだろうが!」

 苦行を耐えること数分。待ち望んでいた声が聞こえてくると、千優は勢いよくふり返り、そして固まった。
 彼女が見つめる先、そこには居るのは確かに友人茅乃だ。しかし、茅乃は一人で帰ってきたわけではないらしい。
 その隣を歩いていたのは、千優の同僚であり先輩の後藤だ。理由はよくわからないが、不思議なことに、茅乃が何度も彼の足を蹴っている。
 
(えっ……?)

 普通に世間話でもして帰ってくるのなら、目的地が一緒だったからと納得出来る。
 しかし現実は違った。
 誰が見てもわかる程茅乃はご立腹の様子だ。彼女は何度も後藤の背後に回り込み、彼のふくらはぎへ己の足を蹴り込んでいる。
 二人共かなり歩き難そうだが、道行く人々の視線も気にせず、攻防を止める様子は無い。
 茅乃と後藤の関係性を、顔見知り程度と認識していた千優は、目の前の光景を飲み込めず、ただ唖然とするばかりだった。





   ◇   ◇   ◇   





「はぁ……疲れた」

 何の偶然かはわからないが、あの後四人は同じテーブルを囲み一時間程話をした。
 その場で解散すれば、千優は茅乃と一緒にショッピングモールを後にし、二人で最寄り駅へ向かうと、しばし電車に揺られ各々の自宅を目指し途中で別れた。
 一人暮らしを始めて数年の古びたアパートへ帰ってきた千優は、部屋着に着替えリビングに腰を下ろす。
 彼女の手には、作り置きをしていた烏龍茶の入ったグラスが握られていた。
 それを一口含んで喉を潤し、ぼんやりと己の顔が映るテレビ画面を見つめる。
 しばらくして思い出すのは、数時間前に知った衝撃的な事実について。





『あの、今、なんて?』

『……? この二人、付き合ってるのよ……って、柳ちゃん、知らなかったの?』

 千優は、買い物客が行き交う憩いの場で、初耳な事実を知ることとなった。
 キョトンと首を傾げる國枝の言葉に、激しく首を上下させてしまい、頭の中が揺れかける。
 恐る恐る隣の二人へ視線を向ければ、交際発覚を告げられたことが恥ずかしい様で、揃って明後日の方向を見つめていた。
 頬が薄っすら赤みがかっていることには、触れない方がいいのだろうと、慌てて口を噤む。


 二人が帰ってきた後、國枝の誘導により、茅乃達は迷わずテーブルへたどり着いた。
 國枝の隣には後藤が、千優の隣には茅乃がそれぞれ座り、四人掛けのテーブル席は瞬く間に埋まる。
 その後、二人が買おうとしていた本が同じだったこと、そして在庫が一冊しか無く、タッチの差で後藤が先に購入したことが報告される。
 それに対し憤慨する茅乃の暴走は、久しぶりに見るオタク全開モードだった。

『悠介があと五分遅く来れば良かったんだー!』

『さっきからギャーギャーうるせーんだよ。いい加減黙れ、いい歳こいてガキみたいな事で騒いでんじゃねぇよ。柳と國枝に迷惑がかかるだろうが』

『……っ!』

 そんな叫びをものともせず、後藤は自分へ迫りくる茅乃の頭を鷲掴みにし、進撃を阻止した。
 爆発寸前の怒りを顔に滲ませ、鋭い睨みを利かす。こちらまで息を呑みそうな表情を間近で目撃すると、千優の中である記憶が蘇った。
 それは以前、同期の篠原を交え三人で飲んでいた時のこと。
 きっかけは忘れたが、篠原の不用意な発言に対し、後藤は本気でキレたことがある。
 その時の様子が、茅乃に対するそれと酷似しているのだ。

『マジヤバかったー。あんな後藤さん見たこと無い。ブラックだ、ブラック後藤さんだー! やっぱあの人絶対元ヤンなんだって。……柳、ちょっと確かめて……あいたっ!』

 すっかり酔いが醒め、ブルブル震えながら火に油を注ぎかねない発言をしていた同期の姿が、脳裏を過る。
 小首を傾げ、無理難題を押しつけようとする姿に、思わず彼の頭を叩いたことは後悔していない。
 篠原の言うブラック後藤の姿を再び目の当たりにした千優は、久しぶりに見る迫力に言葉を失った。
 ちらりと隣へ視線を向ければ、先程まで騒がしかった友人が、すっかり大人しくなっている。
 しかし、完全には納得していないようで、彼女の頬はぷっくりと膨らんでいた。
 一先ず落ち着いて話が出来る状況が到来し、千優はホッと息を吐いた。


 完全に赤面する二人へ向いた意識は、なかなかそれることはない。
 他愛もない話をする中で、己が不意に発した「二人って仲良かったんですね」という言葉が、國枝による暴露へ繋がったのだ。
 そのため、驚きの他に、彼女達に対する申し訳なさを感じてしまい、どのように反応すればいいかと、頭を悩ませる。

『もう、二人して照れちゃって! 可愛いんだからー。後藤ちゃん、いっつも惚気てるじゃない。聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらい』

『誰が、いつ、どんな風に惚気たって? 國枝……お前、ふざけるのも大概にしろよ、あること無いことベラベラ喋ったら、週明けの仕事倍にすんぞ』

『キャー、こわーい!』

 何故か当事者ではない國枝まで頬を染め、身体をクネクネ揺らしながら火に油を注ぎ始めた。
 そのせいで、一度は静まったはずの後藤の怒りが噴出したらしく、みるみるブラック化していく。
 しかし、今にも國枝の胸倉へ掴みかからんとする己を、後藤はなけなしの理性で必死に抑え込んでいる事を、千優はすぐに察した。
 テーブルの死角になって見えづらいが、自分で自身の手を抑えつける姿が見えたからだ。
 その様子が視界にチラつく辺りから察するに、後藤の中にはまだ常識人で温厚な彼が残っているらしい。
 しかし、そんな努力を嘲笑うように、國枝は茅乃達を楽しげに囃し立てる。
 
『茅乃、大丈夫?』

 下手に割り込んだら、こちらまで被害が出ると判断した千優は、先程とは一転し大人しくなった友人の様子が気になり、そっと隣へ視線を向ける。
 すると、茹蛸のように頬を染めた女性が、所在なさげにモジモジと俯く様子が目についた。
 普段の明るさや、時折見せる大人っぽさ、そしてオタク熱が昂った時に見せるどの顔とも違う。千優の目の前にいたのは一人の恋する乙女。
 騒々しい男性陣とは対照的に、千優達の間に会話は無く、この日一番と言って良い程の現状へ、彼女はどう対応するかと頭を悩ませた。





「…………」

 グラスの中身を半分程飲み干しながら、両肩にズシリと圧し掛かる重みに負け、千優はテーブルへ突っ伏す。
 少しばかり氷が溶け、グラスについた水滴を指でなぞりながら、途中まで一緒に帰宅した茅乃の様子を思い返す。

『いつから、付き合ってたの? 全然気づかなかった』

『えっと……二年くらい、かな。千優って、そういう話題とか気にする人じゃないし、私も自分からホイホイ発信する性格でも無いし……はは、は』

 暴露された当初より赤みの引いた頬をポリポリ掻きながら、茅乃ははにかみ、嫌な顔をせず言葉を返してくれた。
 友人達の間には、こちらが思っていたよりも長い月日流れていることを知り、再び驚かされる。二年前と言えば、丁度自分達が親しくし始めた頃だろうか。

『國枝さんには、バレてたね』

『ほんとそれな。きっと、あいつがバレるような事したんでしょ。ま、でも……國枝さんは言いふらすような性格じゃないみたいだから、いいんだけどさ。ほら、社内恋愛って、気づかないうちに余計なことばかり噂されてそうじゃん』

『そ、そうなの?』

『そうなの。総務で恋バナとか出ない? 誰と誰が付き合ってるーとか、結構営業うちでは噂になってるよ』

『茅乃は、後藤さんと付き合ってること、バレたくない?』

『いいや、別にバレたらバレたでいいんだけど……後処理がめんどくせー。詮索されるのとかマジで無理。あと、私もあいつも、腐バレのリスクがあるからなぁ』

 そう言って、茅乃は心底面倒そうに顔をしかめた。そんな姿に、少しは回復したのかと千優は嬉しさを感じつつ、つい苦笑してしまう。
 そこでふと、気になるワードが頭の中で引っ掛かった。

『腐バレの、リスク?』

『うん。ほら、私も悠介も、腐ってること隠してるからさ』

 そう言って茅乃は、ケラリと笑いながら肩を竦める。しかし、笑顔の彼女とは逆に、千優の顔には驚愕の色が浮かんだ。
 友人達が交際しているだけに留まらず、まさかの後藤の密かな趣味まで知ってしまい、道端の塀に手をつき、遠のきそうになる意識を必死に繋ぎとめた。





 幾多の偶然が重なり起こった國枝との遭遇。
 結局真意はわからぬまま、彼の言動に翻弄されっぱなしだった自分。
 そして、思いもよらぬ知人達の交際発覚に、先輩の趣味発覚など、たった数時間の間に起きた出来事は、内容がどれも濃密すぎた。
 初めて訪れたコーヒーショップのレジ前で、魔法の呪文に頭を抱えていた自分が可愛く思えてくる。

「っと、そろそろ晩御飯の準備でもするかな」

 いつまでもリビングでダラけているわけにもいかず、千優は勢いをつけ上体を起こす。
 途中、壁掛け時計の文字盤が目につき、過去を懐かしんでいた頭の中が、現在へ強制的に切り替わる。
 すっかり頭を切り替えた千優は、残っていた烏龍茶を飲み干し、空になったグラスを手に立ち上がった。

(えっと……何が残ってたっけ。冷凍ご飯と、野菜……)

 冷蔵庫の中身を思い出しながら、彼女はキッチンへ足を向ける。


『お互いのことを大好きって堂々と言えるんだから、もっと素直に伝えたところで罰は当たらないわよ』


 ふと、國枝の声が耳元で木霊する。
 それは、フードコートを去る直前、再び言い合いを始めた友人達を微笑ましく見守っていた時のこと。
 隣にたたずみ、一緒になって微笑んでいたはずの彼が発した、どこか寂しげな呟き。
 一体何事かと急いで彼を見上げた千優だったが、その瞳に映ったのは「やっぱりラブラブよねー」と笑顔で素直じゃない二人を見守る友人の姿。

 冷蔵庫の扉を開くと同時に、耳にまとわりつく声を、そっと心の奥底へしまい込んだ。
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