2 / 15
聖女として魔族を倒しました!
しおりを挟む
「さすがです、ガーネット様! 敵が何か言いかけても容赦なく攻撃をしかける、その非道っぷり! 痺れる!」
私はガーネット様に向けて、ビシッと親指を立ててみせる。。
「任せな! まずは先制攻撃が大切だよ!」
ガーネット様も私に向かって親指を立て、お気に入りの曲を口ずさみながら二発目の光球を作り出し、ギュンギュンと大きくしていく。
「ちょ……っ、ちょっ、まっ! お前達聖女だろ?! 初対面の人の話ぐらいちゃんと聞いたらどうだ!」
黒い人は全身から煙を上げながら、焦って怒鳴る。
「うるさい! 大切な儀式を邪魔……すんなっ!」
ガーネット様は「すんな」のタイミングで二発目の光球を飛ばした。
「だーっ! 待てっつってんだろ!」
黒い人が一際大きな声で言ったかと思うと、彼の背中にある六枚の羽が体を守り、ガーネット様の攻撃を霧散させる。
「チッ」
ガーネット様は舌打ちをし、今度は広範囲の術を使うため両手でロッドを構えた。
大聖堂の中では貴族たちが悲鳴を上げて避難し始め、お父様たちは騎士に守られながらこちらを見守っている。
「魔術部隊、用意!」
魔術師官がよく通る声で言い、部下達が手元で得意な術を溜め、一気に放つ準備をした。
……というか、いつもなら結界に阻まれて魔物は出現できないはずだけれど……。
「それだけ力の強い魔物ということかしら」
私は顎に手をやり、呟く。
有翼の魔族は多いけれど、通常なら一対のはずなのに三対もの翼を持っているとなると、かなり上位の魔族だろう。
高位魔族は人間に近い姿を持ち、知性も高い。
加えて角や翼、尻尾などには高い魔力を溜めると言われている。
――と、ガーネット様の声がした。
「あいつの狙いはあんただよ。危ないから下がってな」
そう言うけれど、今日から正式な聖女となるのに、はいそうですかと引き下がって守ってもらう訳にいかない。
「私も戦います!」
襲撃に驚いてボーッとしていたけれど、私も黒い人を迎撃すべく、両手を祈りの形に組む。
見たところ聖属性の魔術に弱いみたいだから、私にとって有利な戦いになる。
「話を聞けって言っただろうが!」
戦る気まんまんの聖女たちに業を煮やしたのか、魔族は私目がけて急降下してきた。
――このままだと、周りの人にも被害が及ぶかもしれない!
「消えなさい!」
カッと両目を見開いた私は、祈りの力を一気に高めて思いきり放出した。
「ぐえっ」
世界が光に包まれると思うほどの凄まじい光量の中、魔族は潰れたカエルのような声を残して灰と化した。
「勝った……」
額に浮かんだ汗を拭った私はうっすらと笑う。
そして儀式前の緊張と、襲撃を受けての初陣とで頭の中が真っ白になってしまい、その場に倒れてしまった。
**
「ん……」
目覚めると、自分の寝室の天井が見えた。
「私……」
呟いてから起き上がると、部屋の中は暗い。いつの間にか夜になっていたようだ。
頭が重たくてズキズキと痛み、私は眉間に皺を寄せる。
「一体何が……」
ガーネット様のように二日酔いになった訳じゃあるまいし……と思っていた時、次第に何があったのかを思いだしてきた。
「そうよ。儀式の途中で魔族の襲撃を受けて……。でも倒せたわ。良かった。聖女として皆を守れたわ」
「良かったな」
「ええ!」
ねぎらう男性の声が聞こえ、私は元気よく頷き――、目を見開いた。
(ん?)
私はガーネット様に向けて、ビシッと親指を立ててみせる。。
「任せな! まずは先制攻撃が大切だよ!」
ガーネット様も私に向かって親指を立て、お気に入りの曲を口ずさみながら二発目の光球を作り出し、ギュンギュンと大きくしていく。
「ちょ……っ、ちょっ、まっ! お前達聖女だろ?! 初対面の人の話ぐらいちゃんと聞いたらどうだ!」
黒い人は全身から煙を上げながら、焦って怒鳴る。
「うるさい! 大切な儀式を邪魔……すんなっ!」
ガーネット様は「すんな」のタイミングで二発目の光球を飛ばした。
「だーっ! 待てっつってんだろ!」
黒い人が一際大きな声で言ったかと思うと、彼の背中にある六枚の羽が体を守り、ガーネット様の攻撃を霧散させる。
「チッ」
ガーネット様は舌打ちをし、今度は広範囲の術を使うため両手でロッドを構えた。
大聖堂の中では貴族たちが悲鳴を上げて避難し始め、お父様たちは騎士に守られながらこちらを見守っている。
「魔術部隊、用意!」
魔術師官がよく通る声で言い、部下達が手元で得意な術を溜め、一気に放つ準備をした。
……というか、いつもなら結界に阻まれて魔物は出現できないはずだけれど……。
「それだけ力の強い魔物ということかしら」
私は顎に手をやり、呟く。
有翼の魔族は多いけれど、通常なら一対のはずなのに三対もの翼を持っているとなると、かなり上位の魔族だろう。
高位魔族は人間に近い姿を持ち、知性も高い。
加えて角や翼、尻尾などには高い魔力を溜めると言われている。
――と、ガーネット様の声がした。
「あいつの狙いはあんただよ。危ないから下がってな」
そう言うけれど、今日から正式な聖女となるのに、はいそうですかと引き下がって守ってもらう訳にいかない。
「私も戦います!」
襲撃に驚いてボーッとしていたけれど、私も黒い人を迎撃すべく、両手を祈りの形に組む。
見たところ聖属性の魔術に弱いみたいだから、私にとって有利な戦いになる。
「話を聞けって言っただろうが!」
戦る気まんまんの聖女たちに業を煮やしたのか、魔族は私目がけて急降下してきた。
――このままだと、周りの人にも被害が及ぶかもしれない!
「消えなさい!」
カッと両目を見開いた私は、祈りの力を一気に高めて思いきり放出した。
「ぐえっ」
世界が光に包まれると思うほどの凄まじい光量の中、魔族は潰れたカエルのような声を残して灰と化した。
「勝った……」
額に浮かんだ汗を拭った私はうっすらと笑う。
そして儀式前の緊張と、襲撃を受けての初陣とで頭の中が真っ白になってしまい、その場に倒れてしまった。
**
「ん……」
目覚めると、自分の寝室の天井が見えた。
「私……」
呟いてから起き上がると、部屋の中は暗い。いつの間にか夜になっていたようだ。
頭が重たくてズキズキと痛み、私は眉間に皺を寄せる。
「一体何が……」
ガーネット様のように二日酔いになった訳じゃあるまいし……と思っていた時、次第に何があったのかを思いだしてきた。
「そうよ。儀式の途中で魔族の襲撃を受けて……。でも倒せたわ。良かった。聖女として皆を守れたわ」
「良かったな」
「ええ!」
ねぎらう男性の声が聞こえ、私は元気よく頷き――、目を見開いた。
(ん?)
40
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる