【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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営業部ラプソディ 編

気づいてしまった

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『そうなる前に、沙根崎にはもっとずるくなってほしいと思ったんだ』

『……まぁ、猪突猛進なところがあるのは自覚してます』

 私は大して好きでもないビールを、眉間に皺を寄せて飲む。

『もうちょっと素直になってもいいと思うよ。ああしてほしい、こうしてほしいって相手に頼むのは甘えじゃないし、媚びてる訳でもない。コミュニケーションのとり方一つにしても、〝こう言ってもらえたほうが嬉しいです〟って伝えると、相手のためになる。相手を否定するんじゃなくて、より良い方向に誘導して、お互いWin-Winになるやり方をするんだ』

『……そうですね。むやみやたらと衝突しないほうが、コスパいいですもんね』

『それな。……で、最初の話に戻るけど、相手にしてほしい事を言わないで、一人で怒りを溜め込むのはやめたほうがいい。不機嫌で相手をコントロールする人だと思われる。上司世代によくいるタイプだけど、ああいうの嫌だろ? わざとらしく音を立てて怒りを示して〝何かあったんですか?〟って言われるの待ってるのとか、怒る事で〝今自分は不機嫌だから、気遣え〟って無言で主張してるのとか』

 そう言われ、私は両手で頭を抱える。

『うわぁ……、やだ……。私、そんな感じだったんですね。最悪……』

『そこまであからさまじゃなかったけどな。……でも、今気付けたからいいじゃん。直そうと思う気持ちがあるなら、今からがスタートだ。今より早い時なんてないしな』

 六条さんはニカッと笑い、グラスに残っていたお酒を一気に呷る。

『沙根崎は頭がいいし、ガッツもある。だからやり方次第じゃ、凄く伸びると思ってる。俺も、二十五歳ぐらいまで営業成績に伸び悩んでたんだよ。その時にアドバイスっていうか、メンタルの持ち方かな。スパッと一刀両断してくれた人がいて、そのお陰で吹っ切れた。……だから、伸び悩んでる奴がいたら、俺も応援したいと思ったんだ』

 それを聞いて意外に思った。

『……六条さんって、生まれながらの強者じゃないんですね』

『おま……、俺を何だと思ってるんだよ。俺だって生まれた時は無垢な赤子でしたよ』

『赤子って……』

 私は彼の言い方に少しツボり、クスクス笑う。

『……とりあえず、ありがとうございました。来週から、少し気持ちを入れ替えて頑張っていきたいと思います』

 改めてお礼を言うと、彼は『ん』と頷いて笑った。



**



 そんなきっかけがあり、最初は苦手で嫌いだった六条さんの事を見直した。

 彼を意識するようになってから、仕事での有能さは勿論、さりげなくみんなに気を遣っている姿を見て『いいな』と思うようになった。

 六条さんに言われて、肩から余計な力が抜けた私は『可愛い』と言われても、以前のような抵抗感を覚える事はなくなった。

 なるべく考え方を変えるようにし、以前より生きやすくなったように思える。

 六条さんの隣に立つに相応しい女性になりたいな、と思ったけれど、彼の元カノがどんなタイプなのか分からない。

 彼と仲のいい男性の先輩に尋ねて、詮索してると思われるのも嫌だし。

 ――私は私で勝負していけばいいんだ。

 そう思っていたけれど、気づいてしまった。

 六条さんと組んで行動していると、彼は通る必要のない道を歩く事がある。

 営業の途中、路面店のフラワーショップがあると、少し立ち止まる。

 同様に、女性向けの雑貨やアクセサリー、コスメなどを目にしても、誰かにあげるプレゼントを考えるように、足を止めるのだ。

(もしかして、頑張ってる私をねぎらおうと思ってくれているのかな)

 おめでたい私はそう期待したけれど、すぐに違うと理解した。

 営業部と商品開発部のフロアは同じで、彼は何かと商品開発部のほうを気にする。

 新商品の情報をいち早く知りたいのかな? と思ったけれど、違った。

 ――上村朱里さん。

 商品開発部は綺麗どころが揃っていて、その中でも一際美人な女性だ。

 スラッとした高身長に、芸能人顔負けの整った顔。おまけに胸が大きくてスタイルがいい。

 六条さんだけじゃなく、商品開発部の男性社員も彼女を気にしているのがすぐに分かった。

 ――気に食わない。

 私は背が低いし、胸もあってないようなものだ。

 正反対な美女を見ていると、恵まれた彼女が妬ましくなる。

 六条さんは分かりやすいぐらい上村さんにちょっかいをかけ、目の前で彼のそんな姿を見るのが苦痛で堪らない。

 彼の上村さんを見る目はとても優しく、彼女に塩対応されて嬉しそうにしているのが、本当に嫌だ。

 ――私の六条さんは、もっと格好いい人のはずなのに。

 そんな勝手な想いが沸き起こり、二人を見るのが嫌になってしまう。

 だから上村さんと話す時も、無意識にツンツンしてしまっていた。
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