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お道具デビュー 編
詳細な希望を聞きたいです
私はモソモソと尊さんの腕の中で回転し、彼をギュッと抱き締める。
「ちゃんと言えて良かった」
「ん、教えてくれてありがとう」
そう言ってくれる彼を「尊さんだな~」と思う。
「……尊さんって心が広いですよね。普通、エッチの最中に元彼の話をしたら怒って当たり前なのに。……それに、いい雰囲気だったのに途中でやめちゃったし……」
「心が広い……と言わないと思うけど。……いや、褒めてくれるのはありがたい。でもな、大切な人がトラウマを抱えているのに、無視して自分の欲を優先するのはただの馬鹿だ。俺はそういう男じゃない。そんだけ」
「……さっき、何をされるのが好きっていうのも、尊さんだから言えたんだと思います。普通の男性だったら『え? 好きなんだ~』ってニヤニヤされて、セクハラみたいな嫌な思いをしそうだけど、尊さんはこういう時に一切茶化さないって分かってるから言えたんです」
「ん……、当たり前の事だけどな」
彼は遠慮がちに微笑む。
「朱里もちゃんと俺の話を聞いてくれるだろ。だから好きだ」
「ん……、えへへへ……」
私は照れて、彼の胸元に額をぐりぐりと押しつける。
「……お天狗様、萎んじゃった?」
気になって尋ねると、後頭部をポンと叩かれた。
「もういいんだよ。お天狗様は満足して山に帰った。明日、ハルニレヴィレッジ行くなら、そろそろ寝とくか」
「あい」
「その前に、軽く体洗っとくか。ローション使っちまったし……」
「ですね」
私はピンポイントでベタついた自分の体を思って頷く。
「今って旅先なので、前に使った塩ソープなんてないですよね」
「イマナラナント」
尊さんが少し高い声を出して噎せる。
「あははっ、しっかり。あるんですか? 塩ソープ」
「旅先で困るだろうと思って。ローション持ってきたからには、始末もしっかりと」
「さすが!」
「よし、片づけタイムして寝るか」
「はーい」
尊さんは「ちょっと待ってな」と荷物を置いた場所まで行き、中から例のお清め塩のボディソープを出した。
「先、シャワー入ってくれ。こっちはこっちで片づけるから」
「なんかすみません」
「いや、付き合ってくれてありがとう。こっちこそ、せっかく高そうな下着をつけてくれくれたのに、汚して悪いな」
「いえ、洗えば大丈夫ですから」
私はグッとサムズアップしたあと、ボディソープを持ってバスルームに向かった。
髪は汚れてないのでクリップで留めて、丁寧に体を洗っていく。
尊さんは洗面所で洗い物をしているみたいで、私が汚してしまった物を洗わせてしまっているの、ちょっと気まずい……。申し訳ない。
(明日、アイスでも買ってあげよう)
尊さんが聞いたら「俺を何歳児だと思ってるんだ」と言いそうな事を思い、私は彼が乱入してくるのを期待して、ゆっくりめに体を洗う。
やがて、バスルームのドアがトントンとノックされた。
「いらっしゃいませようこそ~」
「急に居酒屋みたいになるの、やめてくれ」
「あれ、お風呂屋さんのつもりだったのに」
「そんな景気のいい挨拶しないだろ」
「じゃあ、どういう?」
「さあ……」
尊さんはシャワーを浴び始め、私はお風呂のお湯を汲んで彼の背中を流す。
「今は聞くだけなんですが、尊さんって私とどういう事をしたいですか? 『朱里とできるなら何でも』はナシで。さっきの私みたいに、詳細な希望を聞きたいです」
すると彼は少し考えてから答えた。
「んー……。ある程度、メジャーな体位はやってみたいかな。道具やソフトSMは今回できたし、座位とか立ってとか、ベッドじゃない所でやるのもいいと思うし」
「それぐらいならできそうです。良かった。乱れ牡丹とか首引き恋慕を望まれなくて」
「よく知ってるな、四十八手」
私の言葉を聞いた瞬間、尊さんはブハッと噴き出す。
「昔、友達のお姉ちゃんが『ピエールとカトリーヌ』をカラオケで歌ってたんですよ」
「ぶほぉっ!」
尊さんは今度こそ盛大に噴き出した。
「ちゃんと言えて良かった」
「ん、教えてくれてありがとう」
そう言ってくれる彼を「尊さんだな~」と思う。
「……尊さんって心が広いですよね。普通、エッチの最中に元彼の話をしたら怒って当たり前なのに。……それに、いい雰囲気だったのに途中でやめちゃったし……」
「心が広い……と言わないと思うけど。……いや、褒めてくれるのはありがたい。でもな、大切な人がトラウマを抱えているのに、無視して自分の欲を優先するのはただの馬鹿だ。俺はそういう男じゃない。そんだけ」
「……さっき、何をされるのが好きっていうのも、尊さんだから言えたんだと思います。普通の男性だったら『え? 好きなんだ~』ってニヤニヤされて、セクハラみたいな嫌な思いをしそうだけど、尊さんはこういう時に一切茶化さないって分かってるから言えたんです」
「ん……、当たり前の事だけどな」
彼は遠慮がちに微笑む。
「朱里もちゃんと俺の話を聞いてくれるだろ。だから好きだ」
「ん……、えへへへ……」
私は照れて、彼の胸元に額をぐりぐりと押しつける。
「……お天狗様、萎んじゃった?」
気になって尋ねると、後頭部をポンと叩かれた。
「もういいんだよ。お天狗様は満足して山に帰った。明日、ハルニレヴィレッジ行くなら、そろそろ寝とくか」
「あい」
「その前に、軽く体洗っとくか。ローション使っちまったし……」
「ですね」
私はピンポイントでベタついた自分の体を思って頷く。
「今って旅先なので、前に使った塩ソープなんてないですよね」
「イマナラナント」
尊さんが少し高い声を出して噎せる。
「あははっ、しっかり。あるんですか? 塩ソープ」
「旅先で困るだろうと思って。ローション持ってきたからには、始末もしっかりと」
「さすが!」
「よし、片づけタイムして寝るか」
「はーい」
尊さんは「ちょっと待ってな」と荷物を置いた場所まで行き、中から例のお清め塩のボディソープを出した。
「先、シャワー入ってくれ。こっちはこっちで片づけるから」
「なんかすみません」
「いや、付き合ってくれてありがとう。こっちこそ、せっかく高そうな下着をつけてくれくれたのに、汚して悪いな」
「いえ、洗えば大丈夫ですから」
私はグッとサムズアップしたあと、ボディソープを持ってバスルームに向かった。
髪は汚れてないのでクリップで留めて、丁寧に体を洗っていく。
尊さんは洗面所で洗い物をしているみたいで、私が汚してしまった物を洗わせてしまっているの、ちょっと気まずい……。申し訳ない。
(明日、アイスでも買ってあげよう)
尊さんが聞いたら「俺を何歳児だと思ってるんだ」と言いそうな事を思い、私は彼が乱入してくるのを期待して、ゆっくりめに体を洗う。
やがて、バスルームのドアがトントンとノックされた。
「いらっしゃいませようこそ~」
「急に居酒屋みたいになるの、やめてくれ」
「あれ、お風呂屋さんのつもりだったのに」
「そんな景気のいい挨拶しないだろ」
「じゃあ、どういう?」
「さあ……」
尊さんはシャワーを浴び始め、私はお風呂のお湯を汲んで彼の背中を流す。
「今は聞くだけなんですが、尊さんって私とどういう事をしたいですか? 『朱里とできるなら何でも』はナシで。さっきの私みたいに、詳細な希望を聞きたいです」
すると彼は少し考えてから答えた。
「んー……。ある程度、メジャーな体位はやってみたいかな。道具やソフトSMは今回できたし、座位とか立ってとか、ベッドじゃない所でやるのもいいと思うし」
「それぐらいならできそうです。良かった。乱れ牡丹とか首引き恋慕を望まれなくて」
「よく知ってるな、四十八手」
私の言葉を聞いた瞬間、尊さんはブハッと噴き出す。
「昔、友達のお姉ちゃんが『ピエールとカトリーヌ』をカラオケで歌ってたんですよ」
「ぶほぉっ!」
尊さんは今度こそ盛大に噴き出した。
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