【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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お道具デビュー 編

ハルニレヴィレッジ

 翌朝、朝食はせっかくだからレストランで食べようという事になり、例の棚田をイメージした所へ行った。

 信州では、夏野菜と発酵食品を組み合わせた〝やたら〟を食べる習慣があるそうだ。

 塩味と酸味で食欲を増し、夏バテを防止しようという食文化らしい。

 木製のお重には葉っぱに包まれたお寿司があり、それは信州の郷土料理〝すんき漬け〟――赤カブの葉を、塩を使わず発酵させた漬物――を刻んで入れたご飯を、食用の葉で包んだ物だ。

 お寿司が四つ並んだ隣には、楕円形のお皿が三枚あり、色とりどりの可愛い手鞠寿司もある。

 別のお重には、円形のお皿の上に、色を失わないよう丁寧に蒸された夏野菜がゴロゴロと入っている。

 ぐちゃっと置かれているんじゃなくて、パズルみたいに隙間なく綺麗に詰められているので、とても綺麗だ。

 もう一つのお重にはお花みたいな形をしたお皿が置かれ、その六枚の花弁の所に、花豆や酢漬けの夏野菜など、二種類のソースが盛られてあった。

 嬉しかったのは、食前酢の他にも、健康に良さそうな飲み物が全部で五種類提供された事だ。

 全部二、三口ぐらいで飲めるグラスで、甘酒とレモン汁を合わせたものや、濃厚な果物ジュース、紫蘇ジュースなど、その辺で買えない飲み物だ。

「ジョッキで飲みたいです……」

「お前ならそう言うと思ったよ」

 尊さんは綺麗な箸使いで料理を食べつつ笑う。

 デザートには、まるでお洒落なカフェで出てきそうなかき氷が提供された。

 と言っても、あの大きくて丸いかき氷ではなく、グラスの中に入ったお上品なサイズだ。

 かき氷はレストラン特製のお茶を使った物で、底にはお茶の寒天とジュレ、その上にフワフワとした氷が入れられ、甘酒や酒粕の入った濃厚なクリームがのり、一番上には湯葉がある。

 それに、このかき氷のために特別に調合された、柚子などの柑橘を主体とした、香りのいい七味をかけて食べるというので、お洒落以外の何ものでもない。





「はぁ……、満足。結構お腹いっぱいになるもんですね」

「俺は毎回、お前のストマックが満足してくれるか、ヒヤヒヤしてるよ……」

 私たちはチェックアウトの前に、腹ごなしに敷地内をグルッと散歩し、水辺の部屋に戻ったあと荷物を纏める。

「今回のお泊まりは、満足していただけましたか?」

 尊さんが改まって聞いてきて、私は笑顔で頷いた。

「勿論!」



**



 チェックアウトしたあと、ハルニレヴィレッジは目と鼻の先だけれど、駐車場に車を停め、緑に囲まれたお店たちを見て行く。

 お店はやっぱりお洒落な物を置く所が多く、食器のセレクトショップや、手作りの指輪工房もある。

 この辺りで採れた農産物や、オーガニックな雰囲気の加工食品を置くお店、雑貨やスパイスを売るカフェ、自然素材の家具や寝具、衣類のお店、手工芸品、あとはカフェやコーヒーショップ、レストランにお団子屋さんがある。

「……尊さん。あとでクレープとジェラートとお団子いい……?」

 目が釘付けになって言うと、「予想の範囲内だから、好きなだけ食え」と言われた。

 尊さんは例によってご当地コーヒーを買い、私はお土産にワインや食べ物を買っていく。

 美味しそうなパン屋さんもあったので、気になる物を買い、あとは欲望のままに胡桃団子を食べ、ピュアミルクととうもろこしのジェラートを食べ、シュガーバタークレープにカフェラテをいただいた。

 尊さんはパクパク食べている私を写真に収めているけれど、なんだか嬉しそうな顔をしている。

「食欲女子に目覚めましたか?」

「そういう癖はないけど、朱里が美味そうに食ってる姿が好きだよ。不思議な事に、お前って苦しそうな顔をしないよな。だから見ていて気持ちいいんだけど」

「せっかく食べ物様をいただいているのに、苦しそうな顔をするなんて侮辱ですからね。笑顔で美味しくいただくのが私の流儀です」

「立派な心がけだ」

 彼はクスクス笑い、さらに私の写真を撮った。

 昨日寄ったショッピングモールでも買い物をしたので、これで十分だと思った私たちは、帰路についたのだった。



**
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