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お墓参り 編
祖父母の家
「よぉ来たね。疲れたやろ、入り」
祖母は白髪染めをせず、ボブヘアにオン眉のお洒落な人だ。
身長は平均的だけど、痩せているので小柄に見え、それを利用してフワッとしたナチュラルテイストのワンピースを着ている事が多い。
勿論、お高級な場所へ行く時は着物のコレクションの中から、季節に合わせた物を選んでいる。
ずっと前に色々見せてくれたけれど、箸置きみたいに可愛い帯留めも、色んな種類があって見ているのが楽しかった。
「初めまして、篠宮尊と申します」
大勢いるので、先頭にいる人たちが靴を脱いでいるなか、尊さんは祖母と奥から出てきた祖父に向かって頭を下げる。
暑いだろうに、尊さんは車から降りる前に半袖シャツを出して着ていた。
さすがにネクタイは締めなかったけれど、襟のある服を着たほうがいいと判断したらしかった。
「ご丁寧におおきにありがとう。疲れてはるやろから、続きは中に上がってからにしましょ」
祖母は尊さんから手土産を受け取り、もう一度「おおきに」と微笑み、「どうぞ」とスリッパを示す。
「お祖母ちゃん、お腹空いた!」
「あんたは相変わらずやね。ご飯たんと作ったさかい、食べよし」
「はーい!」
私たちは廊下を通ってリビングダイニングに入る。
「素敵なお宅だな……」
尊さんは中を見て、感心したように呟く。
「そうでしょ~。私、子供の頃この家に来るたびにテンション爆上げしてたよ」
ヴォーリズ建築は大丸心斎橋店でも採用されていて、エントランスの上にある半円形のレリーフには、精緻な彫刻で孔雀が彫られている。
御堂筋側から見る外壁もそうだし、美しいステンドグラスに飾られたエントランスホールや、エレベーターなどもヴォーリズ建築によるものだ。
なぜこんなに知っているかと言うと、子供の頃に『お姫様の家』と言ったら祖母がいたく機嫌を良くして、伝統あるヴォーリズ建築について子供相手に語り、そのまま私を大阪まで連れて行って、百貨店でも説明し、色々食べさせてくれたのだ。
ついでに近江八幡にある、クラブハリエもヴォーリズ建築で、そこにも何度となく連れて行ってもらい、美味しいおやつにありついた。
とはいえ、祖父母の家は百貨店ほど華々しく華麗な雰囲気ではなく、しっとりレトロなお洒落さのある家だ。
艶のある板張りのリビングにはこだわりの敷物が敷かれ、やはり年期の入った焦げ茶色のテーブル、ゆったりと座れる籐の椅子やソファがある。
天井からはレトロなデザインのシャンデリアが下がり、壁際には他の家具と色を合わせたチェストがあり、ステンドグラスが使われたランプや、美しい装飾の鏡などもある。
祖母がセンスの塊みたいな人だからか、家は綺麗に片づけられていて、見学料をとってもいいと思えるほどだ。
「昼間になったら格子状の窓の向こうに庭の緑や花が見えて、すっごく綺麗なんですよ。近くに瑠璃光院がありますけど、丁度あんな感じ。家の中が少し暗いから、余計に外の光が際立つんです」
「それは楽しみだな」
リビングの端には暖炉があり、マントルピースの上にはモダンな絵画が掛けられ、左右の壁には本棚がしつらえられてある。
「昔はこの暖炉を使っていたそうだけど、最近では火事になったら困るから、全然使ってないみたい」
「確かに、この辺り一帯が歴史的に価値のある地区に見えるし、火事があったら大変だな」
祖母は台所にいて、母が手伝いしているようだ。
お屋敷的な作りなので、リビングダイニングから台所は見えないようになっている。
だから私は声を張り上げて祖母に尋ねた。
「お祖母ちゃん、尊さんに家の中を案内してもいい?」
「ええよ。ついでにいつもの部屋に荷物置いてきぃや」
「はーい」
私はボストンバッグを持ち、「こっち」と先を歩く。
「外観は洋風なんですけど、立派な和室もあるんですよ」
廊下の反対側は和室ゾーンになっていて、パチンと電気をつけると二間続きの和室の向こうに縁側がある。
「リビングの奥にはサンルームもあるんです。庭と繋がっていて、暖かい時期はそこでご近所さんとお茶するんですって」
「凄いな」
尊さんは先ほどから感心しきりだ。
「さて、私のお気に入りの〝お姫様の部屋〟ですよ」
祖母は白髪染めをせず、ボブヘアにオン眉のお洒落な人だ。
身長は平均的だけど、痩せているので小柄に見え、それを利用してフワッとしたナチュラルテイストのワンピースを着ている事が多い。
勿論、お高級な場所へ行く時は着物のコレクションの中から、季節に合わせた物を選んでいる。
ずっと前に色々見せてくれたけれど、箸置きみたいに可愛い帯留めも、色んな種類があって見ているのが楽しかった。
「初めまして、篠宮尊と申します」
大勢いるので、先頭にいる人たちが靴を脱いでいるなか、尊さんは祖母と奥から出てきた祖父に向かって頭を下げる。
暑いだろうに、尊さんは車から降りる前に半袖シャツを出して着ていた。
さすがにネクタイは締めなかったけれど、襟のある服を着たほうがいいと判断したらしかった。
「ご丁寧におおきにありがとう。疲れてはるやろから、続きは中に上がってからにしましょ」
祖母は尊さんから手土産を受け取り、もう一度「おおきに」と微笑み、「どうぞ」とスリッパを示す。
「お祖母ちゃん、お腹空いた!」
「あんたは相変わらずやね。ご飯たんと作ったさかい、食べよし」
「はーい!」
私たちは廊下を通ってリビングダイニングに入る。
「素敵なお宅だな……」
尊さんは中を見て、感心したように呟く。
「そうでしょ~。私、子供の頃この家に来るたびにテンション爆上げしてたよ」
ヴォーリズ建築は大丸心斎橋店でも採用されていて、エントランスの上にある半円形のレリーフには、精緻な彫刻で孔雀が彫られている。
御堂筋側から見る外壁もそうだし、美しいステンドグラスに飾られたエントランスホールや、エレベーターなどもヴォーリズ建築によるものだ。
なぜこんなに知っているかと言うと、子供の頃に『お姫様の家』と言ったら祖母がいたく機嫌を良くして、伝統あるヴォーリズ建築について子供相手に語り、そのまま私を大阪まで連れて行って、百貨店でも説明し、色々食べさせてくれたのだ。
ついでに近江八幡にある、クラブハリエもヴォーリズ建築で、そこにも何度となく連れて行ってもらい、美味しいおやつにありついた。
とはいえ、祖父母の家は百貨店ほど華々しく華麗な雰囲気ではなく、しっとりレトロなお洒落さのある家だ。
艶のある板張りのリビングにはこだわりの敷物が敷かれ、やはり年期の入った焦げ茶色のテーブル、ゆったりと座れる籐の椅子やソファがある。
天井からはレトロなデザインのシャンデリアが下がり、壁際には他の家具と色を合わせたチェストがあり、ステンドグラスが使われたランプや、美しい装飾の鏡などもある。
祖母がセンスの塊みたいな人だからか、家は綺麗に片づけられていて、見学料をとってもいいと思えるほどだ。
「昼間になったら格子状の窓の向こうに庭の緑や花が見えて、すっごく綺麗なんですよ。近くに瑠璃光院がありますけど、丁度あんな感じ。家の中が少し暗いから、余計に外の光が際立つんです」
「それは楽しみだな」
リビングの端には暖炉があり、マントルピースの上にはモダンな絵画が掛けられ、左右の壁には本棚がしつらえられてある。
「昔はこの暖炉を使っていたそうだけど、最近では火事になったら困るから、全然使ってないみたい」
「確かに、この辺り一帯が歴史的に価値のある地区に見えるし、火事があったら大変だな」
祖母は台所にいて、母が手伝いしているようだ。
お屋敷的な作りなので、リビングダイニングから台所は見えないようになっている。
だから私は声を張り上げて祖母に尋ねた。
「お祖母ちゃん、尊さんに家の中を案内してもいい?」
「ええよ。ついでにいつもの部屋に荷物置いてきぃや」
「はーい」
私はボストンバッグを持ち、「こっち」と先を歩く。
「外観は洋風なんですけど、立派な和室もあるんですよ」
廊下の反対側は和室ゾーンになっていて、パチンと電気をつけると二間続きの和室の向こうに縁側がある。
「リビングの奥にはサンルームもあるんです。庭と繋がっていて、暖かい時期はそこでご近所さんとお茶するんですって」
「凄いな」
尊さんは先ほどから感心しきりだ。
「さて、私のお気に入りの〝お姫様の部屋〟ですよ」
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