【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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ケアンズ最終日 編

空から見たグレートバリアリーフ

 やがてフライト時間が迫り、私はドキドキして尊さんの手を握る。

「朱里、船酔い大丈夫だったよな?」

 不意にヘッドセット越しに尊さんの声が聞こえ、私は「はい」と頷く。

「だったら酔いは大丈夫かな。揺れないのが前提だけど、たまに揺れる事もある。そんな感じに思っとけ」

「了解です」

 その時、涼さんの声が聞こえた。

「ははっ、恵ちゃん、そんなガチガチにならなくても」

「……い、今、集中してますから、声を掛けないで……」

 当たり前だけど、恵と涼さんの声もすぐ耳元で聞こえる訳で、ちょっとだけビクッとしてしまった。

 尊さんには秘密にしておこう……。

 パイロットが陽気に挨拶をしたあと、エンジンがかかってプロペラが回り始める。

 ヘッドセットをするのは爆音が凄まじくてろくに会話ができないからで、確かに物凄い音だ。

 日本でも基地の近くにいると、ヘリコプターや飛行機の音がかなり大きく聞こえるけれど、まさにあれを現場で聞いている事になる。

「わっ、わっ……」

 機体がフワッと浮かび上がったあと、飛行機ならグイーンと後ろ向きにGが掛かって、物凄いスピードで離陸していく。

 けれどヘリコプターは機体が少し前のめりになって進むので、一瞬ドキッとしてしまう。

 ギュッと尊さんの手を握ると、彼もしっかりと握り返してくれる。

 そのまま、ヘリコプターはどんどん上昇し、すぐ横のガラス窓からはケアンズの街並みが小さくなっていくのが見えた。

「わああ……!」

 ほどなくしてエメラルドグリーンの海が眼下に広がり、私は声を上げる。

 エメラルドグリーンの海という表現はあまりにシンプルすぎて、透明度の高い海の中、岩や珊瑚礁のある部分は黒っぽく見え、深さによっても色合いが異なる。

 ビーチの砂は白く、山側のほうを見ると、先日行ったキュランダの密林がモリモリしているのが分かる。

「凄いなぁ……」

 尊さんはGoProで撮影していて、私はスマホを機内モードにしたまま、写真や動画を撮る。

 パイロットさんは英語で色々と説明してくれて、尊さんと涼さんが代わる代わるそれを訳してくれる。同時通訳ありがたい。

「恵ちゃんに正式にプロポーズする時、地上にリング状の何かを用意して『君のためのエンゲージリングだよ……』ってやるのもいいね!」

「今からネタバレしてどうすんですか。そんな規模のでかい事をされても『そっすか』って言って終わりですよ」

「恵ちゃんは本当にあっさり塩味だよねぇ……。もっとこう、ハニーバタートースト味とかになってもいいと思うよ?」

「自分に合わない事を言っても、その内バランスが崩れてストレス過多になるんですよ」

「確かに一理ある。俺に媚びる恵ちゃんなんて、嫌だもんなぁ……」

 私は二人の会話を聞いて、クスクス笑う。

「こんな綺麗な海を見ながら、そんなイチャつき方をするのも、恵ならではだよね」

 茶々を入れると「朱里」と彼女に窘められた。

 そのあとのんびりと三十分ほどの空中散歩を楽しんだあと、私たちはケアンズに戻った。





 十時から買い物をして、そのあとヘリコプターは時間が決まっていたので、ランチは後回しになっていた。

 帰りの便は十八時二十分で、それから約三時間でシドニーに向かい、向こうで一泊、翌朝に日本に出発する予定だ。

 今はお昼過ぎで、夕方までには十分に時間がある。

 シドニーに着くのは二十一時近くなので、お昼にがっつり食べて夜は機内食に頼る事にした。

 という事で、私たちが向かったのは初日に向かった『ダンディーズ・レストラン・ウォーターフロント』と同じぐらい人気があり、受賞歴のあるお店『オーカー・レストラン』だ。

 こちらもウォーターフロント地区にあり、男性陣が景色のいい席を予約してくれたようだった。

 このお店でも、日本人スタッフが対応してくれるので心強い。

「最後の昼餐ですしね。がっつりオージービーフいっときますか」

 私はメニューを捲ろうとしてはたと我に返り、恵に尋ねる。
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