14 / 779
初デート 編
私は確かに可愛げがないです
しおりを挟む
「……長く一緒にいたからでしょうね。九年近く恋人同士だったから、失うとでかいです。『愛していたか?』って聞かれたら、分かりません。結婚してないけど家族みたいな関係でした。一緒にいても気を遣わない相手で、近年はあまり男女の仲にもなっていなかったのもあって……」
「上村が結婚を望んでいたなら、その空気感は丁度良かったんだろうな。でもその彼氏はもっとイチャイチャしたかったのかもしれない。結婚したあとにズレが大きくなるより、結婚前に別の道を歩む決意をした彼氏は、ある意味正しかったんじゃないか?」
昭人についてはまだ消化しきれてないから、何も知らない部長に知ったような口を利かれるとムカッとしてしまう。
でも第三者だからこそ、冷静に見られる事もある。
確かに部長がいう通り、私は昭人にイチャイチャを求めていなかった。
甘い雰囲気になるのも苦手で、昭人がイチャついてきても塩対応していた。
お互い二十代半ばだし、昭人はもっと若々しい付き合いをしたかったのかもしれない。
「……そうかもしれませんね。私は確かに可愛げがないです」
「まぁ、上村がそういう性格になったのは、これまで生きてきた環境が影響していると思う。何も知らないけど、お前は苦労したタイプじゃないのか? 男に対して女のほうが精神的に大人びてるのは確かだし、苦労なく育った同い年の男なら、精神年齢が合わなくても仕方ない」
確かに……、と思ってしまった。
私の家庭環境は〝普通〟ではない。
それゆえに、この淡々とした、人にあまり立ち入らない性格ができあがったのだと思う。
恵のように心を許した相手には本音を話し、喜怒哀楽も表す。
けれど初対面の人と打ち解けるのは遅いし、特に会社の人とはあまり深入りしないようにしていた。
会社の人が悪い訳ではなく、大切なものができたらそれで心が一杯になってしまうので、他に気持ちを割くものを作ろうとしなかった。
今までは昭人や恵、学生時代の繋がりを大切にしていた。
それ以外にも、家庭環境の事で気が滅入る事が多く、心の負担を増やしたくなかった。
でも昭人は普通の家庭の生まれで、両親に愛されて育った人だ。
できたお兄さんを持って、コンプレックスを刺激されていたという家庭事情はあったけれど、本人もそれに負けないように頑張って、今では商社勤めだ。
パリッとした細身のスーツを着て、がむしゃらに働いて、週末は同僚といいお肉を食べたあと、お洒落なバーで一杯。
休憩する時は有名コーヒーショップに行って、薄型ノートパソコンを開いてニュースや株価をチェック。
服装はシンプルながら質のいいものを好み、生き方そのものがお洒落だ。
そんな昭人を見て、私は「眩しい」と思っていた。
同時に、心のどこかで「あぁ、コーヒーショップで仕事する系ね」と馬鹿にしていた。
そうしないと、自分が昭人に不釣り合いだと不安になってしまうからだ。
(もしかしたら、私のそういう気持ちが分かっていたのかもしれないなぁ)
私ほどひねくれた女はいない。
学生時代から人気者だった昭人は、そのままのイメージで社会人になった。
途中で、どこかから合わなくなってしまってもおかしくない。
「……部長なら、年上だから精神年齢が合うって言いたいんですか?」
「年上な分、元彼よりは柔軟に合わせられると思うけど」
にっこり笑われ、私はしかめっ面をしてそっぽを向いた。
本気じゃないイケメンにそう言われても、何も嬉しくない。
今だって一緒に歩いていると、すれ違う女性からの視線が凄い。
高身長イケメンの本日の服装は、黒いチェスターコートにブランド物のマフラー、シャツにジャケット、グレーのパンツ。
とてもシンプルだけど、一見モデルかっていうぐらいこなれている。
それに「付き合おう」と言われてるこの状況、ハッキリ言って地獄なんですが。
チョロい私はすぐにでも「はい」と言ってしまいそうになっている。
部長は格好いいし、エッチもうまい。大人の包容力があるし、別れる時があってもうまくフッてくれるだろう。
だからこそ、自分が沼る未来しか見えない。
昭人以上に入れ込んで、ボロボロになるのはまっぴらだ。
「はぁ……」
私はわざとらしく溜め息をついてみせ、それ以上の会話を拒んだ。
話している間にも目的のフロアに着き、私たちはお洒落な内装のイタリアンレストランに入った。
ぬかりなく予約していたみたいで、私たちはすんなりと席に案内された。
「パスタのコースで良かった?」
「はい。お肉は夜で」
オーダーを確認して飲み物も頼んだあと、部長は水を一口飲んだ。
「夜までまだ時間があるけど、先に俺の事情を話しておくか」
彼はそう言って椅子に背中を預け、脚を組む。
そしてニヤリと笑った。
「昼ドラも真っ青だぞ」
「上村が結婚を望んでいたなら、その空気感は丁度良かったんだろうな。でもその彼氏はもっとイチャイチャしたかったのかもしれない。結婚したあとにズレが大きくなるより、結婚前に別の道を歩む決意をした彼氏は、ある意味正しかったんじゃないか?」
昭人についてはまだ消化しきれてないから、何も知らない部長に知ったような口を利かれるとムカッとしてしまう。
でも第三者だからこそ、冷静に見られる事もある。
確かに部長がいう通り、私は昭人にイチャイチャを求めていなかった。
甘い雰囲気になるのも苦手で、昭人がイチャついてきても塩対応していた。
お互い二十代半ばだし、昭人はもっと若々しい付き合いをしたかったのかもしれない。
「……そうかもしれませんね。私は確かに可愛げがないです」
「まぁ、上村がそういう性格になったのは、これまで生きてきた環境が影響していると思う。何も知らないけど、お前は苦労したタイプじゃないのか? 男に対して女のほうが精神的に大人びてるのは確かだし、苦労なく育った同い年の男なら、精神年齢が合わなくても仕方ない」
確かに……、と思ってしまった。
私の家庭環境は〝普通〟ではない。
それゆえに、この淡々とした、人にあまり立ち入らない性格ができあがったのだと思う。
恵のように心を許した相手には本音を話し、喜怒哀楽も表す。
けれど初対面の人と打ち解けるのは遅いし、特に会社の人とはあまり深入りしないようにしていた。
会社の人が悪い訳ではなく、大切なものができたらそれで心が一杯になってしまうので、他に気持ちを割くものを作ろうとしなかった。
今までは昭人や恵、学生時代の繋がりを大切にしていた。
それ以外にも、家庭環境の事で気が滅入る事が多く、心の負担を増やしたくなかった。
でも昭人は普通の家庭の生まれで、両親に愛されて育った人だ。
できたお兄さんを持って、コンプレックスを刺激されていたという家庭事情はあったけれど、本人もそれに負けないように頑張って、今では商社勤めだ。
パリッとした細身のスーツを着て、がむしゃらに働いて、週末は同僚といいお肉を食べたあと、お洒落なバーで一杯。
休憩する時は有名コーヒーショップに行って、薄型ノートパソコンを開いてニュースや株価をチェック。
服装はシンプルながら質のいいものを好み、生き方そのものがお洒落だ。
そんな昭人を見て、私は「眩しい」と思っていた。
同時に、心のどこかで「あぁ、コーヒーショップで仕事する系ね」と馬鹿にしていた。
そうしないと、自分が昭人に不釣り合いだと不安になってしまうからだ。
(もしかしたら、私のそういう気持ちが分かっていたのかもしれないなぁ)
私ほどひねくれた女はいない。
学生時代から人気者だった昭人は、そのままのイメージで社会人になった。
途中で、どこかから合わなくなってしまってもおかしくない。
「……部長なら、年上だから精神年齢が合うって言いたいんですか?」
「年上な分、元彼よりは柔軟に合わせられると思うけど」
にっこり笑われ、私はしかめっ面をしてそっぽを向いた。
本気じゃないイケメンにそう言われても、何も嬉しくない。
今だって一緒に歩いていると、すれ違う女性からの視線が凄い。
高身長イケメンの本日の服装は、黒いチェスターコートにブランド物のマフラー、シャツにジャケット、グレーのパンツ。
とてもシンプルだけど、一見モデルかっていうぐらいこなれている。
それに「付き合おう」と言われてるこの状況、ハッキリ言って地獄なんですが。
チョロい私はすぐにでも「はい」と言ってしまいそうになっている。
部長は格好いいし、エッチもうまい。大人の包容力があるし、別れる時があってもうまくフッてくれるだろう。
だからこそ、自分が沼る未来しか見えない。
昭人以上に入れ込んで、ボロボロになるのはまっぴらだ。
「はぁ……」
私はわざとらしく溜め息をついてみせ、それ以上の会話を拒んだ。
話している間にも目的のフロアに着き、私たちはお洒落な内装のイタリアンレストランに入った。
ぬかりなく予約していたみたいで、私たちはすんなりと席に案内された。
「パスタのコースで良かった?」
「はい。お肉は夜で」
オーダーを確認して飲み物も頼んだあと、部長は水を一口飲んだ。
「夜までまだ時間があるけど、先に俺の事情を話しておくか」
彼はそう言って椅子に背中を預け、脚を組む。
そしてニヤリと笑った。
「昼ドラも真っ青だぞ」
120
あなたにおすすめの小説
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。
音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。
見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。
だが、それではいけないと奮闘するのだが……
病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末
黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。
※設定はふわふわ。
※予告なく修正、加筆する場合があります。
※いずれ他サイトにも転載予定。
※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる