【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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初デート 編

やっぱり、お前の事好きだわ

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「……愛情のない結婚をするんですか?」

 なんだかやり手のセールスマンに、ずっと口説かれている気分だ。

 半分うんざりした私は、パスタを食べながら返事をする。

「それは俺たち次第じゃないか? 朱里が俺にあまりいい感情を抱いてないのは分かるけど、良く見てもらえるように努力する。朱里の心の中にまだ元彼がいるのも分かってる。今すぐ結婚しようって言ってる訳じゃない。とりあえず一か月、三か月、半年、一年と小さいゴールを設けて、段階的に判断していかないか?」

 具体的な方法を提示されると、少し前向きになってしまう自分がいた。

 ……ちょろいなぁ……。

「一か月、俺と付き合ってみる事はできない?」

 言われて、「一か月なら……」と渋々考える。

「具体的には、どんなふうに付き合うんですか?」

「ん? 普通に付き合うだけだけど。こうやって飯に来たり、映画が好きなら映画デートもいいだろ。美術館とか水族館、テーマパーク、グランピングに本格的なキャンプ、BBQ、インドア、アウトドア、何でも対応する」

 そう聞いて「スパダリじゃん」と心の中で突っ込みかけ、「ん?」と引っかかりを覚えた。

「……尊さんは私とどう付き合いたいんですか?」

「え?」

 予想外の質問をされたらしく、彼は目を瞬かせる。

「それ全部、私の希望に合わせようとしてくれてるじゃないですか。嬉しいですけど、一方的な〝接待〟をされても、付き合っているとは言えないと思います。……可愛くない事を言って申し訳ないですが」

 私の言葉を聞き、彼はしばらく食べる手を止めてポカンとしていた。

 ……何か変な事言ったかな?

「……あの?」

「あぁ……、悪い。……こんな事言ってきた女、初めてだったから」

 尊さんの言葉を聞いただけで、何となく彼がどんな付き合いをしてきたのか分かってしまった。

「……今まで付き合った彼女って、〝接待〟されて喜ぶタイプだったんですか?」

 言い方が失礼だったかな? と思いつつ、私は素で尋ねる。

 もうすでに『頭スッカラカンですか?』と言ってしまったし、二回もセックスしたし、失礼も何もないな……と開き直ってしまった。

「んー……、だな。基本的に向こうの希望を叶えてあげたら、素直に喜んでた。買ってほしい物とか、連れて行ってほしいレストラン、カフェとか、……願いが叶ったら嬉しくないか?」

 尊さんは本当に困惑しているみたいだ。

「それってなんか、パパ活みたいです」

 思った事をズバッと言うと、彼はフォークに巻いたパスタを口に入れようとして、固まった。

 それから、物凄い顔をして私を見てきた。

「……いや、パパ活で傷ついたなら謝りますけど。……でも片方だけが望みを叶えてもらう関係って、対等じゃないでしょう。付き合う条件が〝願いを叶えてくれる人〟なら、お金を持ってる他の人でもいいはずです。……まぁ、尊さんなら、夜も良かったんでしょうけど」

 尊さんは溜め息をつき、途中だったパスタを口に入れた。

 モグモグと咀嚼して嚥下してから、しみじみと言われた。

「お前、思ってたよりずっとしっかりしてるんだな」

「はぁ?」

 何か、言外に「もっとアホだと思ってた」と言われてる気がする……。

「よく分かりませんが、これぐらいの事で『初耳』みたいな反応するって、今までまじめに女性と向き合ってこなかったんじゃないですか? 普通なら相手と自分の関係性にもっと悩むと思います。尊さんの今までの付き合いを否定するつもりはありませんが、他の男性なら『搾取されてる』ととる人もいると思いますよ。そう感じなかったっていう事は、相手の女性に期待をせず、『適当に言う事聞いて付き合っていればいいや』って思ってたからなんじゃないです?」

 私も大概、ズバズバ言い過ぎだ。

 ……だから昭人に、可愛げがないって思われたのかなぁ……。

 尊さんはしばらく黙ってパスタを食べ続け、やがて残るソースも綺麗にパンで拭って食べ終えた。

 それから私を見て柔らかく笑う。

「やっぱり、お前の事好きだわ」

「は?」

 今まで、セフレだの、条件つきで付き合おうだのは言われていたけれど、ハッキリと「好き」と言われたのは初めてだ。

「『やっぱり』って……、は、初耳です!」

 私はうろたえて、水をゴクゴク飲む。

 尊さんはそんな私を見て、今まで見た事のない優しい顔をしていた。

 ……調子狂う……。
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