【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
60 / 778
クリスマスデート 編

思い出、作りませんか?

しおりを挟む
 そうやって、しばらくイチャイチャしていたけれど、チェックアウトの時間が近づいてきた。

 服を着て帰り支度をすると、一晩お世話になったゴージャスな部屋に別れを告げる。

 私たちはフロアコンシェルジュに挨拶をして、エレベーターに乗った。

「また来ような。他のホテルでもいいし、ここを贔屓にしてもいいし」

 エレベーターの中、尊さんが私の手を握って言う。

「はい。今度はこんなに立派な部屋じゃなくてもいいですよ」

 そう言うと、彼は繋いでいた手を放し、両手を壁について私をその中に閉じ込めてきた。

「躾その二は?」

 言われて、私はゾクゾクしながら答えてしまった。

「『遠慮しない』」

「Exactly.忘れんな」

 彼はそう言ったあと、チュッと私の額にキスをしてまた手を握ってきた。





 ロビーまで行くと、二人きりの時間が終わり、色んな人がいる場所に戻った自覚を得る。

 半分安心し、半分寂しく思っている私に、彼は「あそこで座って待ってな」とソファを示した。

 ソファに向かって歩き始めると、彼はフロントへ行った。

(忘れられないクリスマスになったな……)

 私はロビーのソファに座り、金色のシャンデリアに照らされた空間と、大きなクリスマスツリーを見る。

(ツリーの前で記念写真撮りたいって言ったら、嫌がるかな。言うだけ言ってみよう)

 そんな事を考えていると、コンシェルジュが歩み寄ってきた。

(忘れ物でもしたかな?)

 目を瞬かせると、彼は私の側にしゃがみ、手に持っていた紙袋を渡してきた。

「こちら、当ホテルのマカロンとショコラでございます。お土産にどうぞ」

「わ……、わぁ! ありがとうございます!」

 サプライズに、一気にテンションが上がった。

 泊まった部屋にはウェルカムスイーツが用意されてあって、摘まむ程度の量だったけれど、めちゃくちゃ美味しくて感動した。

(『また食べたいな』って未練がましく言ってたから、もしかしたら尊さんが手配してくれたのかな。……もぉぉ……。痒いところに手が届く男……)

 こうなったら、特別な時にセーラーを着る事も考えなければならない。

「ありがとうございます」

 もう一度コンシェルジュにお礼を言うと、彼は折り目正しくお辞儀をして立ち去っていった。

 そのタイミングで、尊さんがこちらに歩み寄ってくる。

「あの、これありがとうございます!」

 立ちあがって紙袋を示すと、彼は小さく笑った。

「さぁ? ホテルの厚意かも」

「かもしれませんね。誰かさんが伝えたから、気を利かせてくれたのかもしれませんね」

 ご機嫌になった私は、そう言って尊さんと腕を組む。

「ねぇ、せっかくだからツリーの前で記念撮影したいです。思い出、作りませんか?」

 彼にとって、クリスマスが楽しいものでないのは分かっている。

 お母さんと過ごすはずだったと、数え切れないぐらい涙を流したかもしれない。

 でもそれなら、私が新しく楽しい思い出を作ってあげたい。

 家族になるなら、そうしていきたい。

 そう思いながら見つめると、尊さんはフハッと笑って私の頭をクシャクシャ撫でた。

「そんな思い詰めた顔すんなよ。嫌なんて言ってねぇだろ」

「やった!」

 快諾され、私は彼と一緒に大きなクリスマスツリーの側に寄った。

「すみません、写真お願いできますか?」

 尊さんが近くにいたホテルスタッフに声を掛け、「勿論です」と返事をもらう。

「それでは写しますよ。三、二、一……」

 私たちはクリスマスツリーの前で寄り添い、笑顔を作る。

 彼の人生が彩りに溢れていきますように。

 悲しい思いはすぐには消えないだろうけど、私が少しでも尊さんに幸せと笑顔をあげられますように。

 願いながら、私は尊さんに肩を抱かれ、笑顔でピースをした。





 駅に向かって歩いていると、尊さんが尋ねてきた。

「お前、年末年始の予定は?」

「え? ……一応、毎年実家に戻ってますが……」

 尋ねられて、「もしかして……」と期待している自分がいた。

「うち来て一緒に過ごすか? そっちの家族の了承があったならだけど」

「行きます! 親に聞く年齢じゃないので大丈夫です! 三田みたですよね?」

「え?」

 尊さんのマンションがある場所を言うと、彼は目を丸くした。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...