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年末イチャイチャ 編
私たちは、私たちのやり方でいいんだ
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「……そう言われると『沢山食べてあげますよ』って言ってあげたくなるけど、…………ほどほどに!」
グラッときたけど理性でブレーキを踏んだ私の答えを聞き、尊さんはクスクス笑う。
「だな、ほどほどに」
そのあとも大晦日の番組を何となく見て過ごし、少しお腹がこなれた頃合いに、年越し蕎麦を茹でて食べた。
お蕎麦も、さすが尊さんの用意する物でとても美味しい。
彼は食いしん坊なイメージはないけど、とても舌が肥えている。
多分今まで沢山食べ歩きやお取り寄せをして、美味しいものを知っていったのだろう。
そして、お金も時間もかけて厳選したものの中から、私が好きそうなものを食べさせてくれる。
ありがたいな。贅沢だな……としみじみ感じた。
そんな彼にお返しをしたいと思っても、お金で解決しようとしたら駄目なんだろう。
先日のネクタイは、自分が渡すプレゼントとしてはとても高価だった。
でも尊さんの財力を思えば、普段身につけているレベルと言われても驚かない。
このマンションも、用意された食べ物も何もかも高級で、私の生活レベルとはかけ離れている。
だから、私ごときが彼にお金を使っても、あまり意味はない。
むしろ彼はこう見えて常識人だから、「あんまり俺のために金を使うな」と言いそうだ。
なので尊さんは気持ち的なもの……、デレて甘えるとか、イチャイチャを求めているのだと思う。
この人は自分の心にある〝穴〟はお金では埋められないと知っている。
お金を使って心が満たされ、幸せになれるなら、彼は今頃私と付き合っていないだろう。
(一筋縄でいかない人ですね。面倒だけど、そこが好きですよ)
私は赤ワインを一口飲み、しばしばと目を瞬かせて尊さんに寄りかかった。
元旦は遅めに起きておせちをつつき、カニやら海老やらご馳走まみれで食べまくった。
夕方になってから尊さんと近くの神社に初詣に行き、家に帰ってテレビを見ながらまたおせちの続きを食べる。
片付けをしてまったりとしている時、私はずっと思っていた事を質問した。
「……今さらですが、親戚の集まりとかいいんですか?」
「全然。毎年俺は省かれてるし、何も問題ないだろ」
「は!?」
お腹いっぱいになって眠たくなっていたけれど、私はそれを聞いてバッと顔を上げる。
「今さら驚く事か? 逆に『予想してなかったのかよ』ってびっくりしたけど」
尊さんは当たり前の事を言っている顔だ。
だから余計に悲しくなってしまった。
「……そういうの、慣れたら駄目ですって」
「お前こそどうなんだよ。せっかくの正月、親戚が集まるんじゃないのか?」
尋ねられ、自分も同じような理由で、あまり年末年始が好きじゃなかった事を思いだす。
私が沈黙したからか、尊さんはポンポンと頭を撫でてくる。
「イベントの時ってさ、必ずしも皆がやってそうな事をしなきゃいけない訳じゃないんだよ。クリスマスなら全員恋人とディナーして、セックスしなきゃなんない? 暴動が起こるだろ」
暴動と言われ、私は「ぶふっ」と噴き出す。
「俺たちがこうしてる間も働いてくれてる人はいる。皆それぞれだ。足並み揃えて〝同じ〟になろうとしなくていい。正月らしい事を……って言うんなら、俺たちなりのやり方で新年を祝ってるんだから、それでいいだろ」
「……そうですね」
私たちは、私たちのやり方でいいんだ。
今までずっと、周りにいる〝普通〟の人と違う事に悩んでいた。
昭人とイベントデートしても、彼と自分の価値観の違いに何とも言えないもどかしさを覚えていた。
けれど尊さんとなら、何もかもがぴったり合う。
――もう背伸びして〝普通〟のふりをしなくていいんだ。
そう思うと、物凄い安堵感がこみ上げる。
「来年もこうやって、のんびり過ごすぞ」
「そうですね」
私は身も心も安らげる場所を、ようやく見つけられたのかもしれない。
そんな感じで、私たちは仕事始めになるまでゆっくり過ごした。
が、日常に戻る前に、一月六日に決着をつけなければならなかった。
**
グラッときたけど理性でブレーキを踏んだ私の答えを聞き、尊さんはクスクス笑う。
「だな、ほどほどに」
そのあとも大晦日の番組を何となく見て過ごし、少しお腹がこなれた頃合いに、年越し蕎麦を茹でて食べた。
お蕎麦も、さすが尊さんの用意する物でとても美味しい。
彼は食いしん坊なイメージはないけど、とても舌が肥えている。
多分今まで沢山食べ歩きやお取り寄せをして、美味しいものを知っていったのだろう。
そして、お金も時間もかけて厳選したものの中から、私が好きそうなものを食べさせてくれる。
ありがたいな。贅沢だな……としみじみ感じた。
そんな彼にお返しをしたいと思っても、お金で解決しようとしたら駄目なんだろう。
先日のネクタイは、自分が渡すプレゼントとしてはとても高価だった。
でも尊さんの財力を思えば、普段身につけているレベルと言われても驚かない。
このマンションも、用意された食べ物も何もかも高級で、私の生活レベルとはかけ離れている。
だから、私ごときが彼にお金を使っても、あまり意味はない。
むしろ彼はこう見えて常識人だから、「あんまり俺のために金を使うな」と言いそうだ。
なので尊さんは気持ち的なもの……、デレて甘えるとか、イチャイチャを求めているのだと思う。
この人は自分の心にある〝穴〟はお金では埋められないと知っている。
お金を使って心が満たされ、幸せになれるなら、彼は今頃私と付き合っていないだろう。
(一筋縄でいかない人ですね。面倒だけど、そこが好きですよ)
私は赤ワインを一口飲み、しばしばと目を瞬かせて尊さんに寄りかかった。
元旦は遅めに起きておせちをつつき、カニやら海老やらご馳走まみれで食べまくった。
夕方になってから尊さんと近くの神社に初詣に行き、家に帰ってテレビを見ながらまたおせちの続きを食べる。
片付けをしてまったりとしている時、私はずっと思っていた事を質問した。
「……今さらですが、親戚の集まりとかいいんですか?」
「全然。毎年俺は省かれてるし、何も問題ないだろ」
「は!?」
お腹いっぱいになって眠たくなっていたけれど、私はそれを聞いてバッと顔を上げる。
「今さら驚く事か? 逆に『予想してなかったのかよ』ってびっくりしたけど」
尊さんは当たり前の事を言っている顔だ。
だから余計に悲しくなってしまった。
「……そういうの、慣れたら駄目ですって」
「お前こそどうなんだよ。せっかくの正月、親戚が集まるんじゃないのか?」
尋ねられ、自分も同じような理由で、あまり年末年始が好きじゃなかった事を思いだす。
私が沈黙したからか、尊さんはポンポンと頭を撫でてくる。
「イベントの時ってさ、必ずしも皆がやってそうな事をしなきゃいけない訳じゃないんだよ。クリスマスなら全員恋人とディナーして、セックスしなきゃなんない? 暴動が起こるだろ」
暴動と言われ、私は「ぶふっ」と噴き出す。
「俺たちがこうしてる間も働いてくれてる人はいる。皆それぞれだ。足並み揃えて〝同じ〟になろうとしなくていい。正月らしい事を……って言うんなら、俺たちなりのやり方で新年を祝ってるんだから、それでいいだろ」
「……そうですね」
私たちは、私たちのやり方でいいんだ。
今までずっと、周りにいる〝普通〟の人と違う事に悩んでいた。
昭人とイベントデートしても、彼と自分の価値観の違いに何とも言えないもどかしさを覚えていた。
けれど尊さんとなら、何もかもがぴったり合う。
――もう背伸びして〝普通〟のふりをしなくていいんだ。
そう思うと、物凄い安堵感がこみ上げる。
「来年もこうやって、のんびり過ごすぞ」
「そうですね」
私は身も心も安らげる場所を、ようやく見つけられたのかもしれない。
そんな感じで、私たちは仕事始めになるまでゆっくり過ごした。
が、日常に戻る前に、一月六日に決着をつけなければならなかった。
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