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見守るようになった理由 編
私の好きな人です
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『お父さんが亡くなったと聞きました。死因は教えてもらっていないのですが、仲のいい家族だったから、かなりガックリきたみたいで』
『……理由は多分それだろうな……。俺は名古屋近くの旅館に泊まっていたんだけど、夜に外を見ていたら、彼女が一人で歩いているのが見えた。時間的に子供が一人でうろつくには場違いな感じがあって、ついあとをつけた。……そしたら……』
あの時のギクッとした感覚を思いだし、俺は溜め息をつく。
『泣いてましたか?』
『ああ。……でも、当分は大丈夫なんじゃないかな、と思いたい』
言ったあと、俺は朱里との会話の大まかな内容を教えた。
話している間に、ケーキや飲み物が運ばれてきた。
好きな物を食べていいと言っておきながら、あまり美味しくなさそうにケーキを食べている中村さんを見て、少しだけ『悪いな』と思った。
『……朱里を助けてくれて、ありがとうございます』
中村さんはポツッと言ったあと、目元を手で擦った。
『朱里さんとは親友?』
尋ねると、彼女はしばし考えるように沈黙し、ケーキを一口食べる。
やがて、微妙な笑みを浮かべて言った。
『…………恩人だと思っています。あと、私の好きな人です』
俺は軽く瞠目したが、大げさには驚かなかった。
今の時代、同性が好きと言われても、おかしくない。
『今まで誰にも言えなかったから、ちょっとスッキリしちゃった』
中村さんは苦笑いし、先ほどより明るい表情でもう一口ケーキを食べる。
『シフォンケーキも頼んでいいですか?』
『どうぞ』
吹っ切れたのか、彼女はパクパクとケーキの残りを平らげていく。
その様子を見ながら、俺は悪巧みをしていく。
中村さんが朱里の親友なら、うまい事彼女の話を聞けるかもしれない。そのためには俺への警戒心を解かせ、信頼させる必要がある。
なら、少し自分の話をして、同情を買ったほうがいいかもしれないな。
『朱里さんの事も聞きたいし、良かったら中村さんの話も聞かせてくれないか? 俺も母親を亡くしていて〝訳あり〟には理解があるつもりだ。それに、今まで誰にも言えなかったなら、関係ない第三者に話してスッキリするっていうのもアリだと思う』
いつまでも朱里に関わるつもりはない。
あの現場にいた者として、ある程度の事情を把握しておきたいだけだ。
朱里が普通の女子中学生として、光の当たる場所を生きていけるまで――。
自分に言い聞かせる俺を見て、心の底にいるもう一人の自分が『あーあ、ズブズブの関係になるぞ』と皮肉げな笑いを浮かべていた。
そんな俺の心境を知らず、中村さんは物憂げな表情で語り始めた。
**
私、中村恵は、今までずっと〝皆の人気者〟として生きてきた。
父も母もアウトドアを好み、言いたい事をハッキリ言う性格をしている。
歯に衣着せない言い方をするが、サッパリした関係だからか、家庭内が嫌な雰囲気になった事はなかった。
兄弟は兄が二人と、弟が一人。
優しい姉か可愛い妹が欲しかったなと思いながら、私は女の子らしい遊びに興味を持たず、兄と弟とバスケットボールを追いかけて育ってきた。
幼稚園では周りの子たちから男の子みたいな扱いをされ、小学生になっても男子に女子として認識されなかった。
高学年になって男子に告白された事はあったけど、恋愛にはまったく興味がなかった。
男の子の事を考えるより、スポーツをしているほうが楽しかったからだ。
正直、女子が話題にするアイドルや歌手、キラキラしたアクセサリーの話には、あまり興味がない。
それでも話を合わせないとハブられるかも……という気持ちがあり、つまらないながらも一緒にいた。
小学校卒業後、中高一貫校に入学して、運命の出会いを果たしたのが朱里だった。
朱里は人目を引く容姿をしていて、皆が彼女を気にしていた。
彼女は髪が綺麗で長く、眉毛はキリッとしていて、いわゆるキツネ顔の美人だ。
目は大きくて睫毛が長い。鼻はツンと小作りながら高く、唇も形が良く血色がいい。
吸い込まれるような……という言葉が似合う目力があり、見つめられると少しドキッとしてしまう。
おまけに発育も良くて、女子はほぼ平らな胸をしている中、朱里の胸元はふっくらしている。
その上、朱里は成績も良く、先生たちから信頼されていた。
〝委員長〟タイプではないけれど、『頭がいいし、放っておいても変な事はしないだろう』と見られていたのだと思う。
非の打ち所がない才媛……と思ったけれど、彼女には人付き合いが壊滅的に悪いという、大きな欠点があった。
『……理由は多分それだろうな……。俺は名古屋近くの旅館に泊まっていたんだけど、夜に外を見ていたら、彼女が一人で歩いているのが見えた。時間的に子供が一人でうろつくには場違いな感じがあって、ついあとをつけた。……そしたら……』
あの時のギクッとした感覚を思いだし、俺は溜め息をつく。
『泣いてましたか?』
『ああ。……でも、当分は大丈夫なんじゃないかな、と思いたい』
言ったあと、俺は朱里との会話の大まかな内容を教えた。
話している間に、ケーキや飲み物が運ばれてきた。
好きな物を食べていいと言っておきながら、あまり美味しくなさそうにケーキを食べている中村さんを見て、少しだけ『悪いな』と思った。
『……朱里を助けてくれて、ありがとうございます』
中村さんはポツッと言ったあと、目元を手で擦った。
『朱里さんとは親友?』
尋ねると、彼女はしばし考えるように沈黙し、ケーキを一口食べる。
やがて、微妙な笑みを浮かべて言った。
『…………恩人だと思っています。あと、私の好きな人です』
俺は軽く瞠目したが、大げさには驚かなかった。
今の時代、同性が好きと言われても、おかしくない。
『今まで誰にも言えなかったから、ちょっとスッキリしちゃった』
中村さんは苦笑いし、先ほどより明るい表情でもう一口ケーキを食べる。
『シフォンケーキも頼んでいいですか?』
『どうぞ』
吹っ切れたのか、彼女はパクパクとケーキの残りを平らげていく。
その様子を見ながら、俺は悪巧みをしていく。
中村さんが朱里の親友なら、うまい事彼女の話を聞けるかもしれない。そのためには俺への警戒心を解かせ、信頼させる必要がある。
なら、少し自分の話をして、同情を買ったほうがいいかもしれないな。
『朱里さんの事も聞きたいし、良かったら中村さんの話も聞かせてくれないか? 俺も母親を亡くしていて〝訳あり〟には理解があるつもりだ。それに、今まで誰にも言えなかったなら、関係ない第三者に話してスッキリするっていうのもアリだと思う』
いつまでも朱里に関わるつもりはない。
あの現場にいた者として、ある程度の事情を把握しておきたいだけだ。
朱里が普通の女子中学生として、光の当たる場所を生きていけるまで――。
自分に言い聞かせる俺を見て、心の底にいるもう一人の自分が『あーあ、ズブズブの関係になるぞ』と皮肉げな笑いを浮かべていた。
そんな俺の心境を知らず、中村さんは物憂げな表情で語り始めた。
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私、中村恵は、今までずっと〝皆の人気者〟として生きてきた。
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高学年になって男子に告白された事はあったけど、恋愛にはまったく興味がなかった。
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正直、女子が話題にするアイドルや歌手、キラキラしたアクセサリーの話には、あまり興味がない。
それでも話を合わせないとハブられるかも……という気持ちがあり、つまらないながらも一緒にいた。
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吸い込まれるような……という言葉が似合う目力があり、見つめられると少しドキッとしてしまう。
おまけに発育も良くて、女子はほぼ平らな胸をしている中、朱里の胸元はふっくらしている。
その上、朱里は成績も良く、先生たちから信頼されていた。
〝委員長〟タイプではないけれど、『頭がいいし、放っておいても変な事はしないだろう』と見られていたのだと思う。
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