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実家に挨拶 編
美奈歩は頑張ってくれてる
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階段前には尊さんがいて、私たちはチラッと視線を交わして「……お、おう」みたいな顔をする。
「朱里、美奈歩さんが話をしたいって」
けれど尊さんにそう言われ、とうとう決着をつける時がきたのだと覚悟した。
美奈歩は階段に座ったので、私は尊さんの隣に座る。
継妹はしばらく私を見つめたあと、一つ溜め息をついて尋ねてきた。
「私の事、嫌い?」
「え? なんで?」
ズバッと尋ねられ、私もズバッと素で聞き返す。
「嫌いじゃないよ。逆に美奈歩こそ、私の事嫌いじゃない? 今まで私がいるとわざとらしく溜め息ついたり、言葉に棘があったりで、快く思われてないんだなっていうのは感じていたけど」
「……お父さんやお兄ちゃんに、私の目の前でわざとらしく甘えていなかった?」
「なんですと?」
初耳だったので、思わずまた聞き返してしまった。
「……そんな事、した覚えないけど……」
これ以上ない、チベットスナギツネみたいな真顔で言うと、美奈歩は困惑する。
私はなるべく美奈歩を刺激しないように言葉を選びながら、自分が感じていた事を説明した。
「……悪く言ってるように感じたら申し訳ないけど、最初はどう接したらいいか分からなくて、お継父さんと亮平の事を完全に他人扱いしていた。亮平は仲良くなろうとしてくれてたみたいだけど、私にはその距離感が合わなくて、逆に警戒してしまった。……この辺は本人と先日会って話す機会があって、誤解がとけた……と思っているけど」
そう言うと、美奈歩もおずおずと頷く。
「……私も、先日お兄ちゃんからちょっと……言われた。『お互い言葉が足りてない』って」
きっと横浜の日のあとだ。亮平、一応言ってくれてたんだ。
「……言われて『確かにそうかも』って思って、色々考えた。……私は私なりの理由があって、……確かに、……ちょっと避けたり冷たい態度をとってしまっていた。……ムカついていたのは事実だけど、今、……『嫌い?』って聞いても訳分からない顔をしてたし、……やっぱりお兄ちゃんが言ってたみたいに、言葉足らずなのかもって思った」
彼女はボソボソと、時々言葉を止めては考え、少しずつ自分の気持ちを打ち明ける。
(美奈歩は頑張ってくれてる)
俯いて、とても恥ずかしそうで、言いづらそうな表情を見ていれば、物凄く頑張ってくれているのが分かる。
(私も歩み寄らなきゃ。きっと今しかない)
覚悟を決めた私は、小さく息を吸って自分の気持ちを伝える。
「……私も、今まで嫌な態度をとってごめん。『美奈歩は私を嫌っている』と思い込んで、直接気持ちを聞いた訳でもないのに決めつけてた。それで対話するのを面倒くさがって避けてた」
私の言葉を聞いて美奈歩はコクンと頷き、しばらく〝次〟の言葉を考える。
私も何か言おうと思うんだけど、なかなかいい言葉が見つからない。
美奈歩が私に突っかかってきたのは、大好きな亮平が私を気にしてる事も大きいと思う。
けど、亮平から直接気持ちを聞いたとはいえ、『亮平が私を意識してた』なんて自意識過剰みたいで言いづらい。
その時、どうにもならない空気を読んで尊さんが挙手した。
「私からも補足させてもらいます。亮平さんは美奈歩さんにとって、〝いいお兄さん〟だったでしょう? 優しくて頼りがいがあって、性格は温厚で滅多に怒らない」
「……そうです。私はそんな兄を自慢に思っていますし、大好きです」
尊さんに言われ、美奈歩は頷く。
彼女の言葉のあとに「だから兄に近づく継姉が嫌いでした」と続きそうな気がしたのは、被害妄想かもしれない。
「亮平さんは〝いい兄〟であった反面、我慢もしてきたと思います。もともと温厚な性格なのはあると思いますが、お母さんが亡くなられたあと、お父さんが働きに出ている以上、『自分がしっかりして妹を支え、家を守らないと』と思ったでしょう。多感な時期に大好きなお母さんを亡くされ、小さい妹さんの面倒を見て家事もして……という生活を送った亮平さんは、同じ年頃の友人と満足いくまで遊べなかった可能性もあります」
「……そうですね」
美奈歩は昔を思いだす目で頷く。
「兄はいつも私の勉強を見てくれていました。母が亡くなったあと、それまで全然料理をしてなかったのに、動画を見ながら料理を始めて、そのうち父のお弁当まで作るようになりました。何かを犠牲にして『自分だって遊びたい』と言った事は一度もありませんでした。……今思えば、妹の相手なんてしないで友達と遊びたかったでしょう。それでも兄は私の面倒を見てくれて、勉強が分からなかった時、理解するまで辛抱強く教えてくれました」
今まで美奈歩が亮平をどう思っていたか聞いていなかったから、余計に彼女が抱いている家族愛の重さを知った。
そして私もまた、今まで自分の事ばかりで、亮平と美奈歩がどういう兄妹だったかを想像していなかったのだと再度痛感した。
「朱里、美奈歩さんが話をしたいって」
けれど尊さんにそう言われ、とうとう決着をつける時がきたのだと覚悟した。
美奈歩は階段に座ったので、私は尊さんの隣に座る。
継妹はしばらく私を見つめたあと、一つ溜め息をついて尋ねてきた。
「私の事、嫌い?」
「え? なんで?」
ズバッと尋ねられ、私もズバッと素で聞き返す。
「嫌いじゃないよ。逆に美奈歩こそ、私の事嫌いじゃない? 今まで私がいるとわざとらしく溜め息ついたり、言葉に棘があったりで、快く思われてないんだなっていうのは感じていたけど」
「……お父さんやお兄ちゃんに、私の目の前でわざとらしく甘えていなかった?」
「なんですと?」
初耳だったので、思わずまた聞き返してしまった。
「……そんな事、した覚えないけど……」
これ以上ない、チベットスナギツネみたいな真顔で言うと、美奈歩は困惑する。
私はなるべく美奈歩を刺激しないように言葉を選びながら、自分が感じていた事を説明した。
「……悪く言ってるように感じたら申し訳ないけど、最初はどう接したらいいか分からなくて、お継父さんと亮平の事を完全に他人扱いしていた。亮平は仲良くなろうとしてくれてたみたいだけど、私にはその距離感が合わなくて、逆に警戒してしまった。……この辺は本人と先日会って話す機会があって、誤解がとけた……と思っているけど」
そう言うと、美奈歩もおずおずと頷く。
「……私も、先日お兄ちゃんからちょっと……言われた。『お互い言葉が足りてない』って」
きっと横浜の日のあとだ。亮平、一応言ってくれてたんだ。
「……言われて『確かにそうかも』って思って、色々考えた。……私は私なりの理由があって、……確かに、……ちょっと避けたり冷たい態度をとってしまっていた。……ムカついていたのは事実だけど、今、……『嫌い?』って聞いても訳分からない顔をしてたし、……やっぱりお兄ちゃんが言ってたみたいに、言葉足らずなのかもって思った」
彼女はボソボソと、時々言葉を止めては考え、少しずつ自分の気持ちを打ち明ける。
(美奈歩は頑張ってくれてる)
俯いて、とても恥ずかしそうで、言いづらそうな表情を見ていれば、物凄く頑張ってくれているのが分かる。
(私も歩み寄らなきゃ。きっと今しかない)
覚悟を決めた私は、小さく息を吸って自分の気持ちを伝える。
「……私も、今まで嫌な態度をとってごめん。『美奈歩は私を嫌っている』と思い込んで、直接気持ちを聞いた訳でもないのに決めつけてた。それで対話するのを面倒くさがって避けてた」
私の言葉を聞いて美奈歩はコクンと頷き、しばらく〝次〟の言葉を考える。
私も何か言おうと思うんだけど、なかなかいい言葉が見つからない。
美奈歩が私に突っかかってきたのは、大好きな亮平が私を気にしてる事も大きいと思う。
けど、亮平から直接気持ちを聞いたとはいえ、『亮平が私を意識してた』なんて自意識過剰みたいで言いづらい。
その時、どうにもならない空気を読んで尊さんが挙手した。
「私からも補足させてもらいます。亮平さんは美奈歩さんにとって、〝いいお兄さん〟だったでしょう? 優しくて頼りがいがあって、性格は温厚で滅多に怒らない」
「……そうです。私はそんな兄を自慢に思っていますし、大好きです」
尊さんに言われ、美奈歩は頷く。
彼女の言葉のあとに「だから兄に近づく継姉が嫌いでした」と続きそうな気がしたのは、被害妄想かもしれない。
「亮平さんは〝いい兄〟であった反面、我慢もしてきたと思います。もともと温厚な性格なのはあると思いますが、お母さんが亡くなられたあと、お父さんが働きに出ている以上、『自分がしっかりして妹を支え、家を守らないと』と思ったでしょう。多感な時期に大好きなお母さんを亡くされ、小さい妹さんの面倒を見て家事もして……という生活を送った亮平さんは、同じ年頃の友人と満足いくまで遊べなかった可能性もあります」
「……そうですね」
美奈歩は昔を思いだす目で頷く。
「兄はいつも私の勉強を見てくれていました。母が亡くなったあと、それまで全然料理をしてなかったのに、動画を見ながら料理を始めて、そのうち父のお弁当まで作るようになりました。何かを犠牲にして『自分だって遊びたい』と言った事は一度もありませんでした。……今思えば、妹の相手なんてしないで友達と遊びたかったでしょう。それでも兄は私の面倒を見てくれて、勉強が分からなかった時、理解するまで辛抱強く教えてくれました」
今まで美奈歩が亮平をどう思っていたか聞いていなかったから、余計に彼女が抱いている家族愛の重さを知った。
そして私もまた、今まで自分の事ばかりで、亮平と美奈歩がどういう兄妹だったかを想像していなかったのだと再度痛感した。
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