218 / 778
元彼との決着 編
俺の女をこれ以上煩わせるな
しおりを挟む
「その上、嫌だって言ってるのに、昭人は私の手を写真に撮って〝匂わせ彼女〟としてSNSに載せてた。最初に『顔は写さないで』って言ったら〝彼女自慢〟できなくてふてくされてたよね? 手だけならいいと思った? 勝手に写真撮られるの、気持ち悪いんだよ。どうして分かってくれないかな……」
私は苛立って言い、乱暴な溜め息をつく。
「昭人の【彼女とカフェに行った】ってSNSの投稿は、『美味しい店教えます』じゃなくて、『美人な雰囲気の彼女と、お洒落なカフェにいる自分かっけー』って見せたいだけ。あんたは自分をイケてると思ってるだろうけど、中身はスカスカ。そんなんだから、充実してるお兄さんに成績も何もかも負けるんだよ」
私の言葉がとうとう昭人の逆鱗に触れた瞬間――。
「っこの……っ!」
昭人は憤怒に顔を歪めると、私に向かって手を振り上げた。
「…………っ!」
私はとっさに両手で顔を庇って目を閉じた。
――けど。
「……図星を突かれたら暴力か? クソだせぇんだよ」
ドスの利いた尊さんの声が聞こえ、恐る恐る目を開けると、彼が昭人の手首をしっかり掴んでいたところだった。
(良かった……)
彼が守ってくれたと知った私は、安心して息を吐く。
「朱里、話の邪魔して悪い」
昭人の手を振り払った尊さんは、チラッと私を見て言う。
それに私は涙を手で拭い、首を横に振って応えた。
尊さんは私の手をとり、勇気づけるようにギュッと握ってから昭人を嘲笑した。
「こんなに嫌われてるのに、『まだやり直せる』なんて夢見てねぇよな? DV元彼クン」
「だ……っ、だって朱里は、俺に未練を持ってるから会いに来たんだろ!」
「ちげぇよ、バカ」
尊さんは昭人の言葉を一蹴し、苛立たしげに睨む。
「お前が朱里のマンションに無断で忍び込んだから、身の危険を感じた彼女は、お前を刺激しないように、やむなく誘いに応じたんだろうが。どこまで頭がめでたいんだよ」
マンションに行った事が尊さんに知られていたと知った昭人は、唇を曲げて私を睨む。
「さっきも『よりを戻すつもりはない』と言われたのに、なぜ理解しない? お前は二兎に逃げられて、未練がましく一兎を追いかけ回してるんだよ。いい加減自分がストーカーだって事を自覚しろ」
プライドの高い彼が、そう言われて黙っている訳がない。
「俺はストーカーなんかじゃない!」
「ほう? ストーカーじゃないなら通報されても問題ないな?」
「つ……っ、通報だって!?」
昭人は声をひっくり返らせて悲鳴を上げる。
「お前がした事は立派な住居侵入罪だけど、警察に通報しても大丈夫なんだよな? ただし、朱里は警察に『彼氏じゃないし、別れたのにつきまとわれている』って言うけどな。それでも迷惑行為をやめないなら、本格的にストーカー規制法に引っ掛かるけど、覚悟があっての事なんだよな? 復縁できるつもりの元彼クン?」
「……い、……いや……」
昭人は顔色を悪くさせて横を向く。
「万が一、俺の婚約者に何かあれば、警察にも言うし弁護士にも言う。俺も篠宮フーズの部長として、お前の勤め先に〝報告〟させてもらう。お前の上司の勢野とは友達だしな?」
「そっ、それはやめてくれ!」
昭人は真っ青になって尊さんに縋った。
「なら二度と朱里の前に姿を現すな!」
尊さんが大きい声を出し、私はビクッとして身を竦ませる。
「俺の女をこれ以上煩わせるな。俺たちに金輪際関わるな。次に目の前をうろついたら、その場で通報するぞ!」
彼がもう一度怒鳴った時、昭人は弾かれたように走っていった。
――終わったんだ……。
私は止めていた息をゆっくり吐き、その場にしゃがみ込む。
遅れて、手をはじめ全身が酷く震えているのを自覚して、自分の片手をギュッと握った。
「怖かったな。もう大丈夫だ」
尊さんが優しい声を掛けてくれ、私の側にしゃがむと抱き締めてくる。
通行人が私たちを見るけれど、気にしていられる心の余裕はなかった。
「う……っ、うぅ…………」
思い出の中の草食系男子の〝昭人〟は幻だった。
現実の彼はストーカー気質の外見至上主義で、逆鱗に触れれば暴力をふるうDV男だ。
「大きい声を上げて悪かった。驚いたろ」
謝られ、私はブンブンと首を横に振る。
「……朱里、ちょっと歩けるか? 駐車場まですぐだから移動しよう。……お前の泣き顔を他の奴に見せたくない」
「ん……」
鼻声で頷いた私は、尊さんに肩を抱かれてゆっくり歩き始めた。
駐車場に着いたあと、尊さんは後部座席のドアを開けて私を座らせる。
そして自分も隣に腰かけ、しっかり抱き締めてきた。
「うー……っ」
移動する間に高ぶった感情は鎮まったものの、私はまだ様々なショックから立ち直れず、尊さんにしがみつく。
そのまま、私は気持ちが落ち着くまで尊さんに抱きついていた。
私は苛立って言い、乱暴な溜め息をつく。
「昭人の【彼女とカフェに行った】ってSNSの投稿は、『美味しい店教えます』じゃなくて、『美人な雰囲気の彼女と、お洒落なカフェにいる自分かっけー』って見せたいだけ。あんたは自分をイケてると思ってるだろうけど、中身はスカスカ。そんなんだから、充実してるお兄さんに成績も何もかも負けるんだよ」
私の言葉がとうとう昭人の逆鱗に触れた瞬間――。
「っこの……っ!」
昭人は憤怒に顔を歪めると、私に向かって手を振り上げた。
「…………っ!」
私はとっさに両手で顔を庇って目を閉じた。
――けど。
「……図星を突かれたら暴力か? クソだせぇんだよ」
ドスの利いた尊さんの声が聞こえ、恐る恐る目を開けると、彼が昭人の手首をしっかり掴んでいたところだった。
(良かった……)
彼が守ってくれたと知った私は、安心して息を吐く。
「朱里、話の邪魔して悪い」
昭人の手を振り払った尊さんは、チラッと私を見て言う。
それに私は涙を手で拭い、首を横に振って応えた。
尊さんは私の手をとり、勇気づけるようにギュッと握ってから昭人を嘲笑した。
「こんなに嫌われてるのに、『まだやり直せる』なんて夢見てねぇよな? DV元彼クン」
「だ……っ、だって朱里は、俺に未練を持ってるから会いに来たんだろ!」
「ちげぇよ、バカ」
尊さんは昭人の言葉を一蹴し、苛立たしげに睨む。
「お前が朱里のマンションに無断で忍び込んだから、身の危険を感じた彼女は、お前を刺激しないように、やむなく誘いに応じたんだろうが。どこまで頭がめでたいんだよ」
マンションに行った事が尊さんに知られていたと知った昭人は、唇を曲げて私を睨む。
「さっきも『よりを戻すつもりはない』と言われたのに、なぜ理解しない? お前は二兎に逃げられて、未練がましく一兎を追いかけ回してるんだよ。いい加減自分がストーカーだって事を自覚しろ」
プライドの高い彼が、そう言われて黙っている訳がない。
「俺はストーカーなんかじゃない!」
「ほう? ストーカーじゃないなら通報されても問題ないな?」
「つ……っ、通報だって!?」
昭人は声をひっくり返らせて悲鳴を上げる。
「お前がした事は立派な住居侵入罪だけど、警察に通報しても大丈夫なんだよな? ただし、朱里は警察に『彼氏じゃないし、別れたのにつきまとわれている』って言うけどな。それでも迷惑行為をやめないなら、本格的にストーカー規制法に引っ掛かるけど、覚悟があっての事なんだよな? 復縁できるつもりの元彼クン?」
「……い、……いや……」
昭人は顔色を悪くさせて横を向く。
「万が一、俺の婚約者に何かあれば、警察にも言うし弁護士にも言う。俺も篠宮フーズの部長として、お前の勤め先に〝報告〟させてもらう。お前の上司の勢野とは友達だしな?」
「そっ、それはやめてくれ!」
昭人は真っ青になって尊さんに縋った。
「なら二度と朱里の前に姿を現すな!」
尊さんが大きい声を出し、私はビクッとして身を竦ませる。
「俺の女をこれ以上煩わせるな。俺たちに金輪際関わるな。次に目の前をうろついたら、その場で通報するぞ!」
彼がもう一度怒鳴った時、昭人は弾かれたように走っていった。
――終わったんだ……。
私は止めていた息をゆっくり吐き、その場にしゃがみ込む。
遅れて、手をはじめ全身が酷く震えているのを自覚して、自分の片手をギュッと握った。
「怖かったな。もう大丈夫だ」
尊さんが優しい声を掛けてくれ、私の側にしゃがむと抱き締めてくる。
通行人が私たちを見るけれど、気にしていられる心の余裕はなかった。
「う……っ、うぅ…………」
思い出の中の草食系男子の〝昭人〟は幻だった。
現実の彼はストーカー気質の外見至上主義で、逆鱗に触れれば暴力をふるうDV男だ。
「大きい声を上げて悪かった。驚いたろ」
謝られ、私はブンブンと首を横に振る。
「……朱里、ちょっと歩けるか? 駐車場まですぐだから移動しよう。……お前の泣き顔を他の奴に見せたくない」
「ん……」
鼻声で頷いた私は、尊さんに肩を抱かれてゆっくり歩き始めた。
駐車場に着いたあと、尊さんは後部座席のドアを開けて私を座らせる。
そして自分も隣に腰かけ、しっかり抱き締めてきた。
「うー……っ」
移動する間に高ぶった感情は鎮まったものの、私はまだ様々なショックから立ち直れず、尊さんにしがみつく。
そのまま、私は気持ちが落ち着くまで尊さんに抱きついていた。
191
あなたにおすすめの小説
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末
黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。
※設定はふわふわ。
※予告なく修正、加筆する場合があります。
※いずれ他サイトにも転載予定。
※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。
完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。
音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。
見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。
だが、それではいけないと奮闘するのだが……
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる