【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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元彼との決着 編

俺の女をこれ以上煩わせるな

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「その上、嫌だって言ってるのに、昭人は私の手を写真に撮って〝匂わせ彼女〟としてSNSに載せてた。最初に『顔は写さないで』って言ったら〝彼女自慢〟できなくてふてくされてたよね? 手だけならいいと思った? 勝手に写真撮られるの、気持ち悪いんだよ。どうして分かってくれないかな……」

 私は苛立って言い、乱暴な溜め息をつく。

「昭人の【彼女とカフェに行った】ってSNSの投稿は、『美味しい店教えます』じゃなくて、『美人な雰囲気の彼女と、お洒落なカフェにいる自分かっけー』って見せたいだけ。あんたは自分をイケてると思ってるだろうけど、中身はスカスカ。そんなんだから、充実してるお兄さんに成績も何もかも負けるんだよ」

 私の言葉がとうとう昭人の逆鱗に触れた瞬間――。

「っこの……っ!」

 昭人は憤怒に顔を歪めると、私に向かって手を振り上げた。

「…………っ!」

 私はとっさに両手で顔を庇って目を閉じた。

 ――けど。

「……図星を突かれたら暴力か? クソだせぇんだよ」

 ドスの利いた尊さんの声が聞こえ、恐る恐る目を開けると、彼が昭人の手首をしっかり掴んでいたところだった。

(良かった……)

 彼が守ってくれたと知った私は、安心して息を吐く。

「朱里、話の邪魔して悪い」

 昭人の手を振り払った尊さんは、チラッと私を見て言う。

 それに私は涙を手で拭い、首を横に振って応えた。

 尊さんは私の手をとり、勇気づけるようにギュッと握ってから昭人を嘲笑した。

「こんなに嫌われてるのに、『まだやり直せる』なんて夢見てねぇよな? DV元彼クン」

「だ……っ、だって朱里は、俺に未練を持ってるから会いに来たんだろ!」

「ちげぇよ、バカ」

 尊さんは昭人の言葉を一蹴し、苛立たしげに睨む。

「お前が朱里のマンションに無断で忍び込んだから、身の危険を感じた彼女は、お前を刺激しないように、やむなく誘いに応じたんだろうが。どこまで頭がめでたいんだよ」

 マンションに行った事が尊さんに知られていたと知った昭人は、唇を曲げて私を睨む。

「さっきも『よりを戻すつもりはない』と言われたのに、なぜ理解しない? お前は二兎に逃げられて、未練がましく一兎を追いかけ回してるんだよ。いい加減自分がストーカーだって事を自覚しろ」

 プライドの高い彼が、そう言われて黙っている訳がない。

「俺はストーカーなんかじゃない!」

「ほう? ストーカーじゃないなら通報されても問題ないな?」

「つ……っ、通報だって!?」

 昭人は声をひっくり返らせて悲鳴を上げる。

「お前がした事は立派な住居侵入罪だけど、警察に通報しても大丈夫なんだよな? ただし、朱里は警察に『彼氏じゃないし、別れたのにつきまとわれている』って言うけどな。それでも迷惑行為をやめないなら、本格的にストーカー規制法に引っ掛かるけど、覚悟があっての事なんだよな? 復縁できるつもりの元彼クン?」

「……い、……いや……」

 昭人は顔色を悪くさせて横を向く。

「万が一、俺の婚約者に何かあれば、警察にも言うし弁護士にも言う。俺も篠宮フーズの部長として、お前の勤め先に〝報告〟させてもらう。お前の上司の勢野とは友達だしな?」

「そっ、それはやめてくれ!」

 昭人は真っ青になって尊さんに縋った。

「なら二度と朱里の前に姿を現すな!」

 尊さんが大きい声を出し、私はビクッとして身を竦ませる。

「俺の女をこれ以上煩わせるな。俺たちに金輪際関わるな。次に目の前をうろついたら、その場で通報するぞ!」

 彼がもう一度怒鳴った時、昭人は弾かれたように走っていった。

 ――終わったんだ……。

 私は止めていた息をゆっくり吐き、その場にしゃがみ込む。

 遅れて、手をはじめ全身が酷く震えているのを自覚して、自分の片手をギュッと握った。

「怖かったな。もう大丈夫だ」

 尊さんが優しい声を掛けてくれ、私の側にしゃがむと抱き締めてくる。

 通行人が私たちを見るけれど、気にしていられる心の余裕はなかった。

「う……っ、うぅ…………」

 思い出の中の草食系男子の〝昭人〟は幻だった。

 現実の彼はストーカー気質の外見至上主義で、逆鱗に触れれば暴力をふるうDV男だ。

「大きい声を上げて悪かった。驚いたろ」

 謝られ、私はブンブンと首を横に振る。

「……朱里、ちょっと歩けるか? 駐車場まですぐだから移動しよう。……お前の泣き顔を他の奴に見せたくない」

「ん……」

 鼻声で頷いた私は、尊さんに肩を抱かれてゆっくり歩き始めた。




 駐車場に着いたあと、尊さんは後部座席のドアを開けて私を座らせる。

 そして自分も隣に腰かけ、しっかり抱き締めてきた。

「うー……っ」

 移動する間に高ぶった感情は鎮まったものの、私はまだ様々なショックから立ち直れず、尊さんにしがみつく。

 そのまま、私は気持ちが落ち着くまで尊さんに抱きついていた。
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