【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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女子会 編

強い女であろうとした弊害

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 ひとしきり笑ったあと、起き上がった私はどこまで言おうか考えながら、ボソボソと話し始める。

「……うーん、尊さんは私の事を凄く考えてくれるんですよ。『お決まりの手順をやればいいや』じゃなくて、私の反応を見て『ここが気持ちいいんだ』って理解して愛撫してくれます」

 その言葉に、エミリさんが頷いた。

「そうよね、相手ありきよね。私は割と言いたい事を言うタイプだから、風磨さんを傷つけない範囲で『こうしてほしい』って自分の意見を言うかな。『そうじゃない』って否定しないのはマスト」

 春日さんは脚を組み、真剣な顔で尋ねてくる。

「今カノの二人に失礼だけど、風磨さんと尊さん、どれぐらい経験人数ある? やっぱり数をこなして上手くなったの? 私、次に付き合う人は慣れてる人がいいのかな? って思ったりしてて……」

「「いやいやいや!」」

 私とエミリさんは同時に突っ込んだ。

「ぶっちゃけ、童貞でも、付き合った人数が少なくても、人によります。経験豊富な人は逆に不安になるからやめとけ! 口にしなくても『過去の女と比べられてるかも』って不安になっちゃうから! 男は自分の手で育てるに限る!」

 エミリさんはまじめな顔で忠告する。

「今言ったみたいに、相手の気持ちよさを考えられるかどうかと、相手を不快にさせず自分の意見を言えるかなんです。どんだけ腰振った回数が多くても、全部独りよがりなセックスなら意味がないです。あと、お願いだから、練習だと思ってSNSにいる〝セックストレーナー〟みたいな人に連絡しないでね。女性用風俗とかも沼ったら地獄だから駄目」

「…………うん」

 春日さんは目を丸くして頷く。

 エミリさんは深い溜め息をついてから続ける。

「そういうのの全部が悪い訳じゃないです。向いてる人は経験すればいい。でもそういう人たちはセックスを楽しむため、もしくは仕事でやってるのであって、春日さんの真剣な想いや、処女喪失の責任はとってくれないんです。初めての相手って心に残りやすいけど、想っても絶対振り向いてくれない相手なんて、不毛じゃないですか。なら、ちゃんと真剣にお付き合いできる人が現れるまで、焦らないほうが吉」

「……分かった」

 春日さんはコクンと頷き、シャンパンを手酌する。

「……あと、思うんですけど、さっき聞いたホテルでの失敗の事も含め、春日さん側の気持ちの問題もあるかもしれませんね」

 私が指摘すると、彼女は「自覚はある……」と溜め息をついた。

「完璧主義じゃないです? 『初めてのエッチで失敗したら、格好悪い。笑われるかも』って怯えてないですか?」

 そう言うと、春日さんはしんみりとした顔で頷いた。

「確かにそうかも。仕事では舐められたら終わりだから、仕事内容も見た目も、パーフェクトを心がけてる。…………そんな私が、全裸になって恥ずかしい所を晒して、男の人に犯されてあんあん言うとか……、抵抗があるのよ。そんな弱いところ見せたくない」

 きっと、これが春日さんの本音なんだろう。

「……強い女であろうとした弊害ですね」

 よしよしと彼女の頭を撫でると、春日さんは私に抱きついてくる。

 エミリさんはサラミを囓って少し何か考えていたけれど、ビールの缶を開けてゴッゴッゴッ……と飲んでから言った。

「私も朱里さんも、まだ結婚してないし、偉そうに言える立場じゃないです。でも結婚するって、相手に格好悪い所を見せなきゃいけないんですよ。寝起きのノーメイクで頭ボサボサの姿を見せないとならないし、同じトイレも使う。自分のも彼のも、下着を洗濯しないとならない。子供がほしいならセックスするのは必須。裸を見せたら心許ないし、秘部を見せたら恥ずかしいのは当たり前。……でも、春日さんの裏も表も全部見せても、絶対に動じずに何があっても味方でいてくれる人が、旦那さんになるんですよ」

 春日さんは溜め息をつき、私から離れて膝を抱える。

「私、こないだ尊さんの前でおならしちゃったんですけど、『フローラルだな』って言われて笑いました」

「「ぶはっ!」」

 しんみりしていたところ、おならの話をしたら、二人とも手を打ち鳴らして笑う。

「恥ずかしくて嫌がったら、『もっと嗅がせてくれ』って言ってくるんですよ? 変態ですよあの男は」

 私が恥ずかしがらないようにふざけてくれたのは分かってるけど、あの時は笑いすぎてお腹が痛くなって大変だった。

「でもいつかは、おならしても恥ずかしがらない、ナチュラルな関係になれたらいいな、って思います。当分は乙女の恥じらいを持っていたいですけど」

「確かに!」

 エミリさんが深く頷く。

「そんな感じなので、あんまりプライドを高く持ちすぎると、自分の幸せの妨げになってしまうと思います。……その辺、がんば!」

 ぐっと両手を小さく握ると、春日さんはうんうんと何度も頷いた。
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