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祖父母と孫 編
セッション
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「『猫踏んじゃった』弾けるか?」
「あ、それぐらいなら」
「なら、連弾してみないか?」
「えっ?」
連弾なんて高度な事をした経験がないので、私は目を丸くして焦る。
「でも私、本当に下手くそで……。『猫踏んじゃった』も久しぶりだから、上手く弾けるかどうか……」
あの神演奏を聴かされたあとに、私の『猫踏んじゃった』を披露するのはハードルが高すぎる。
「カバーするから大丈夫だよ。俺を信じて」
「じゃあ、私、ヴァイオリンで参加しちゃう!」
そう言って勢いよく立ちあがったのは、小牧さんだ。
「えっ? 小牧さん、ヴァイオリン弾けるんですか?」
驚いて尋ねると、彼女は得意げに眉を上げる。
「一応音楽一家の端くれだからね。ピアノは勿論やったけど、それほど夢中になれなかったの。一回『ピアノ以外の楽器なら好きになれるかも』って手を着けたのがヴァイオリン」
そう言って、小牧さんは「お祖母ちゃん、ヴァイオリン借りるね」と言ってからリビングを出ていった。
「じゃあ、俺はチェロ担当しようかな」
さらにそう言ってリビングを出て行ったのは、大地さんだ。
(…………偉いこっちゃ)
まるで猫まんまに、トリュフとキャビアとフォアグラを用意しますと言われている気分だ。
(……まぁ、そうなったら数に負けて私の雑さが薄まるかもしれない……)
せこい事を考えていると、弥生さんが挙手した。
「じゃあ私、上か下かどっちかやる。尊くんはどっちやる?」
「じゃあ、俺は下で」
「OK!」
……ううん。上か下かって言葉で、変な妄想なんてしてない。
私が上に乗るなんて妄想してない。
しっかりしなさい、上村朱里。
私はプルッと首を横に振り、百合さんに向かって深々と頭を下げる。
「……皆さんが素晴らしい演奏をしてくださるのに、雑音が混じってしまう事をお許しください」
すると百合さんは柔らかな笑みを浮かべた。
「音楽は音を楽しむものだわ。尊とセッションした事がないなら、これが初めてね」
「は、はい」
思わず尊さんの顔を見ると、彼は「ん?」と私を見て微笑む。
(……セッション。……せっしょん!)
これから音楽をやろうとしているのに、私の脳裏に〝夜のセッション〟という言葉が浮かび上がる。おっさんか!
一瞬、春日さんとエミリさんの顔が浮かんだけれど、首を横に振って追い払う。
(~~~~っ、だって! さっき尊さんが性器を見せつけてきたから!)
どうもこうも、脳内に彼の腕がチラついて堪らない。
というか真剣な顔でピアノを演奏する姿もそうだし、今日は今まで知らなかった尊さんを沢山見ている。
彼がピアノを弾ける事は分かっていたけれど、プロ顔負けのあんな演奏を聴かされたら、惚れ直してしまう。
今までだって心底惚れていたのに、これ以上好きになったらどうにかなってしまいそうだ。
はぁ……、本当に今日はセカンド尊さんメモリアルデーだ。
本当は転げ回って悶えたいのに、速水邸にいるから全力で理性を総動員させている。
やがて小牧さんと大地さんが楽器を持って戻ってきて、私は尊さんと弥生さんと一緒にピアノに向かった。
「朱里、真ん中座って」
「あ、はい」
言われて横長の椅子に腰かけると、弥生さんがラの鍵盤を押した。
それに合わせて、小牧さんと大地さんが音を合わせていく。
これは……、オーケストラが始まる前にやる奴……!
そんな事をされるといよいよ緊張してしまい、「『猫踏んじゃった』ぐらいなら」と思っていたのに、とても難しい曲に思えてきた。
「……あ、あの……」
おどおどしていると、尊さんがポンと背中を叩き、丸く撫でてくれる。
「最初から『皆と合わせて完璧な演奏をしよう』なんて思わなくていい。朱里のペースで、朱里のリズムで自由に弾いていいんだ。皆、朱里の歩調に合わせて自由に参加していくから」
緊張していたのに、そう声を掛けられてフワッと気持ちが楽になった。
「あ、それぐらいなら」
「なら、連弾してみないか?」
「えっ?」
連弾なんて高度な事をした経験がないので、私は目を丸くして焦る。
「でも私、本当に下手くそで……。『猫踏んじゃった』も久しぶりだから、上手く弾けるかどうか……」
あの神演奏を聴かされたあとに、私の『猫踏んじゃった』を披露するのはハードルが高すぎる。
「カバーするから大丈夫だよ。俺を信じて」
「じゃあ、私、ヴァイオリンで参加しちゃう!」
そう言って勢いよく立ちあがったのは、小牧さんだ。
「えっ? 小牧さん、ヴァイオリン弾けるんですか?」
驚いて尋ねると、彼女は得意げに眉を上げる。
「一応音楽一家の端くれだからね。ピアノは勿論やったけど、それほど夢中になれなかったの。一回『ピアノ以外の楽器なら好きになれるかも』って手を着けたのがヴァイオリン」
そう言って、小牧さんは「お祖母ちゃん、ヴァイオリン借りるね」と言ってからリビングを出ていった。
「じゃあ、俺はチェロ担当しようかな」
さらにそう言ってリビングを出て行ったのは、大地さんだ。
(…………偉いこっちゃ)
まるで猫まんまに、トリュフとキャビアとフォアグラを用意しますと言われている気分だ。
(……まぁ、そうなったら数に負けて私の雑さが薄まるかもしれない……)
せこい事を考えていると、弥生さんが挙手した。
「じゃあ私、上か下かどっちかやる。尊くんはどっちやる?」
「じゃあ、俺は下で」
「OK!」
……ううん。上か下かって言葉で、変な妄想なんてしてない。
私が上に乗るなんて妄想してない。
しっかりしなさい、上村朱里。
私はプルッと首を横に振り、百合さんに向かって深々と頭を下げる。
「……皆さんが素晴らしい演奏をしてくださるのに、雑音が混じってしまう事をお許しください」
すると百合さんは柔らかな笑みを浮かべた。
「音楽は音を楽しむものだわ。尊とセッションした事がないなら、これが初めてね」
「は、はい」
思わず尊さんの顔を見ると、彼は「ん?」と私を見て微笑む。
(……セッション。……せっしょん!)
これから音楽をやろうとしているのに、私の脳裏に〝夜のセッション〟という言葉が浮かび上がる。おっさんか!
一瞬、春日さんとエミリさんの顔が浮かんだけれど、首を横に振って追い払う。
(~~~~っ、だって! さっき尊さんが性器を見せつけてきたから!)
どうもこうも、脳内に彼の腕がチラついて堪らない。
というか真剣な顔でピアノを演奏する姿もそうだし、今日は今まで知らなかった尊さんを沢山見ている。
彼がピアノを弾ける事は分かっていたけれど、プロ顔負けのあんな演奏を聴かされたら、惚れ直してしまう。
今までだって心底惚れていたのに、これ以上好きになったらどうにかなってしまいそうだ。
はぁ……、本当に今日はセカンド尊さんメモリアルデーだ。
本当は転げ回って悶えたいのに、速水邸にいるから全力で理性を総動員させている。
やがて小牧さんと大地さんが楽器を持って戻ってきて、私は尊さんと弥生さんと一緒にピアノに向かった。
「朱里、真ん中座って」
「あ、はい」
言われて横長の椅子に腰かけると、弥生さんがラの鍵盤を押した。
それに合わせて、小牧さんと大地さんが音を合わせていく。
これは……、オーケストラが始まる前にやる奴……!
そんな事をされるといよいよ緊張してしまい、「『猫踏んじゃった』ぐらいなら」と思っていたのに、とても難しい曲に思えてきた。
「……あ、あの……」
おどおどしていると、尊さんがポンと背中を叩き、丸く撫でてくれる。
「最初から『皆と合わせて完璧な演奏をしよう』なんて思わなくていい。朱里のペースで、朱里のリズムで自由に弾いていいんだ。皆、朱里の歩調に合わせて自由に参加していくから」
緊張していたのに、そう声を掛けられてフワッと気持ちが楽になった。
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