331 / 778
帰宅して 編
誇っていい事だよ
しおりを挟む
「年配の人ほど、沢山食べる若者を好ましく思ってると感じるけど」
「そうでしょうか」
「朱里さ、仔犬や仔猫がガツガツ食べてる姿を見て、『たんとお食べ』って気持ちにならないか?」
「なります」
私は顔を上げ、目をキランとさせて言う。
「俺も小さい子がわんぱくに食べてるのを見て微笑ましくなるし、そういうもんなんだよ。自分は油物とか生クリームが食べられなくなってるから、若い子が食べてるのを見ると『食えるうちにたっぷり食えよ!』って思うんだよな。……だから大丈夫だよ。アレルギーも好き嫌いなく沢山食べられる事は、卑しいんじゃなくて特技だ」
「特技?」
そう言われるとは思わず、私は目を丸くする。
「世の中、結婚していざ飯を作ろうと思っても、アレルギーや好き嫌いが沢山あって、思うように作れない、作っても文句を言われて食べてくれないとか、結構あるんだよ。朱里はよっぽど味付けが極端だったり、材料に火が通ってないとかじゃないと、『食べられない』って言わないだろ? それは誇っていい事だよ」
「……そうなんですね」
「年配の人は、色んな場所で色んな人を見ている。寿司屋に連れて行っても、いきなり『生魚が食べられない』って言い出す人もいるし、料理人の前で『まずい』って言う人もいる。料理を食べていて、嫌いな物だけ除ける人もいる。レストランを手配するにも、アレルギーに気を遣わないとならない。その分、朱里はオールラウンダーだろ? すげぇ有利じゃないか。そりゃ気に入られるよ」
不思議な事に、尊さんに励まされていると、どんどん気にならなくなってきた。
「……うん、分かりました。そう思っておきます」
「よし」
尊さんはクシャッと私の頭を撫で、額にキスをしてくる。
それから私を見つめてニヤッと笑ってきた。
「朱里、一緒に風呂入るか」
「えっ」
温泉の時はさておき、家で改めて言われると恥ずかしい。
「猫洗いさせてくれ」
「もう……」
私は真っ赤になりつつ、ちょっとむくれてみせた。
尊さんが先にバスルームに入って体と髪を洗っている間、私は洗面所で髪を梳かしてからクリップで留め、ドキドキして服を脱ぐ。
「……お、お邪魔します……」
お風呂に入ると、防水スピーカーから雰囲気のいいジャズが流れていて、小さめのアロマキャンドルが数個火を揺らしていた。
酸欠にならないように、ちゃんと窓を開けてるのは尊さんらしい。
マンションのバスルームだからユニットバス……と思っていたけれど、ゴージャスマンションなので、作りがぶっとんでいる。
基本的に浴槽は三、四人は入れそうな円形のジェットバスだし、その周囲にはアロマキャンドルなど飾り物を置ける棚があり、コーナーには観葉植物もある。
シャワーヘッドはよく分からんブランド物の奴だし、バスチェアとか洗面器も大理石柄の高級感溢れる物で統一されている。
バスルームの外にはシャワーボックスのみもあるし、サウナもある。
脱衣所は空調が効いてるから、夏でも冬でも心地いいだろうし、ブランド物のボディソープが沢山あって、気分によって匂いを変えているとかで贅沢だ。
「まあ座りたまえ」
尊さんがバスチェアを示して言うので、私は「ぶふっ」と噴き出してしまう。
「何キャラですか。……えと、先に大事な所は自分でサッと洗いたいので、先にお風呂に入って後ろ向いててくれますか?」
「分かった」
彼が浴槽に入っている間、私はシャワーでササッと秘所を洗う。
そしてお湯に浸かろうと思って尊さんの後ろ姿を見て、悪戯心が芽生える。
「尊さん」
「ん?」
彼は後ろを向いたまま返事をする。
「右手を上げてくれますか?」
「ん? ……ああ」
尊さんは言う通り、右手を軽く上げる。
「左手上げて」
「『右手下げない』とか言うのか?」
「頭を下に」
「●ケキヨか!」
突っ込まれ、私はケラケラ笑いながらバスタブに入った。
「そうでしょうか」
「朱里さ、仔犬や仔猫がガツガツ食べてる姿を見て、『たんとお食べ』って気持ちにならないか?」
「なります」
私は顔を上げ、目をキランとさせて言う。
「俺も小さい子がわんぱくに食べてるのを見て微笑ましくなるし、そういうもんなんだよ。自分は油物とか生クリームが食べられなくなってるから、若い子が食べてるのを見ると『食えるうちにたっぷり食えよ!』って思うんだよな。……だから大丈夫だよ。アレルギーも好き嫌いなく沢山食べられる事は、卑しいんじゃなくて特技だ」
「特技?」
そう言われるとは思わず、私は目を丸くする。
「世の中、結婚していざ飯を作ろうと思っても、アレルギーや好き嫌いが沢山あって、思うように作れない、作っても文句を言われて食べてくれないとか、結構あるんだよ。朱里はよっぽど味付けが極端だったり、材料に火が通ってないとかじゃないと、『食べられない』って言わないだろ? それは誇っていい事だよ」
「……そうなんですね」
「年配の人は、色んな場所で色んな人を見ている。寿司屋に連れて行っても、いきなり『生魚が食べられない』って言い出す人もいるし、料理人の前で『まずい』って言う人もいる。料理を食べていて、嫌いな物だけ除ける人もいる。レストランを手配するにも、アレルギーに気を遣わないとならない。その分、朱里はオールラウンダーだろ? すげぇ有利じゃないか。そりゃ気に入られるよ」
不思議な事に、尊さんに励まされていると、どんどん気にならなくなってきた。
「……うん、分かりました。そう思っておきます」
「よし」
尊さんはクシャッと私の頭を撫で、額にキスをしてくる。
それから私を見つめてニヤッと笑ってきた。
「朱里、一緒に風呂入るか」
「えっ」
温泉の時はさておき、家で改めて言われると恥ずかしい。
「猫洗いさせてくれ」
「もう……」
私は真っ赤になりつつ、ちょっとむくれてみせた。
尊さんが先にバスルームに入って体と髪を洗っている間、私は洗面所で髪を梳かしてからクリップで留め、ドキドキして服を脱ぐ。
「……お、お邪魔します……」
お風呂に入ると、防水スピーカーから雰囲気のいいジャズが流れていて、小さめのアロマキャンドルが数個火を揺らしていた。
酸欠にならないように、ちゃんと窓を開けてるのは尊さんらしい。
マンションのバスルームだからユニットバス……と思っていたけれど、ゴージャスマンションなので、作りがぶっとんでいる。
基本的に浴槽は三、四人は入れそうな円形のジェットバスだし、その周囲にはアロマキャンドルなど飾り物を置ける棚があり、コーナーには観葉植物もある。
シャワーヘッドはよく分からんブランド物の奴だし、バスチェアとか洗面器も大理石柄の高級感溢れる物で統一されている。
バスルームの外にはシャワーボックスのみもあるし、サウナもある。
脱衣所は空調が効いてるから、夏でも冬でも心地いいだろうし、ブランド物のボディソープが沢山あって、気分によって匂いを変えているとかで贅沢だ。
「まあ座りたまえ」
尊さんがバスチェアを示して言うので、私は「ぶふっ」と噴き出してしまう。
「何キャラですか。……えと、先に大事な所は自分でサッと洗いたいので、先にお風呂に入って後ろ向いててくれますか?」
「分かった」
彼が浴槽に入っている間、私はシャワーでササッと秘所を洗う。
そしてお湯に浸かろうと思って尊さんの後ろ姿を見て、悪戯心が芽生える。
「尊さん」
「ん?」
彼は後ろを向いたまま返事をする。
「右手を上げてくれますか?」
「ん? ……ああ」
尊さんは言う通り、右手を軽く上げる。
「左手上げて」
「『右手下げない』とか言うのか?」
「頭を下に」
「●ケキヨか!」
突っ込まれ、私はケラケラ笑いながらバスタブに入った。
162
あなたにおすすめの小説
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末
黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。
※設定はふわふわ。
※予告なく修正、加筆する場合があります。
※いずれ他サイトにも転載予定。
※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。
完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。
音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。
見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。
だが、それではいけないと奮闘するのだが……
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる