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壮行会 編
告白
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(おっ……)
最初は少し意識したものの、神くんが普段通り振る舞っていると分かったあとは、こちらも気にしないようにしていた。
けれど「実は見られていた?」と思うと、一瞬ドキッとしてしまう。
ほんの僅かな間、私は固まって神くんを見ていた。
彼も私を見つめていたけれど、ニコッと笑ったあと、隣の人に話しかけられてまた会話に戻っていった。
(びっくりした……)
そっと息を吐いた時、「上村さん」と女性社員に話しかけられる。
「はい?」
神くんと目が合った事をごまかしつつ返事をすると、彼女は前のめりになってヒソヒソ声で尋ねてきた。
「……それで、本当のところ、上村さんと速水部長ってどうなの?」
んー!
油断していたところで斜め上から槍が降ってきて、避け損ねてしまう。
「ええと……」
綾子さんたちには打ち明けたけど、理解のある一部の人に教えるのと、へたをすると部署外にも広まりかねない感じで言うのとでは違う。
困ってモゴモゴしていると、それを見ていたらしい尊さんが立ち上がり「聞いてくれ」と皆に話しかける。
「上村さんが俺の秘書になると知って、どういう事なのかと思う人は多いだろう。最終的には公表するつもりだから今言うが、俺と上村さんは付き合っている」
尊さんのいきなりの告白を聞いて、男性たちは指笛を吹いて歓声を上げ、拍手をする。
女性社員もミーハーな悲鳴を上げて拍手していた。
チラッと周囲を見ると、綾子さんたちほどあからさまじゃないけど、実は結構真剣に尊さんを想っていた……という雰囲気の女性たちは、少し複雑な表情をしている。
でも一緒に仕事をして分かったけど、彼女たちはとても常識的な人だ。
だから見えないところで悲しんだとしても、私に嫉妬心をぶつける事はないだろう。
(分かっていても、誰かの想いの上に自分が立ってると思うと、素直に喜べないな)
私は皆の視線を感じつつ、とりあえずぎこちなく微笑む。
「現在は婚約状態にあり、そう遠くない未来には結婚するつもりでいる」
「部長ー! 結婚式には呼んでください!」
いい感じに酔った男性社員が叫び、周囲がドッと沸く。
尊さんはその声に笑顔を返し、続きを言う。
「部署内で社内恋愛をして、その二人が副社長、秘書になる事を快く思わない者もいるだろう。俺は今まで篠宮家の者である事を伏せ、母の姓を名乗って仕事をしてきた。俺が副社長になる案が出た時、重役会議では相応に揉めた。その結果、株主総会を経てこうして正式に決まった訳だから、責任をもって取り組みたいと思っている」
例のお家騒動の話にも絡んだせいか、みんな真剣に尊さんの話を聞いていた。
「上村さんとは社内恋愛というより、それ以前から浅からぬ縁があった。すべてを言うつもりはないが、こうなるべくして出会ったと思っている。いずれ結婚すれば、彼女の姓は篠宮になる。それを隠して上村の姓で勤め続ける事も可能だが、『そこまでして夫婦である事を隠すのか?』と思った」
酔っぱらった誰かが「確かに!」と合いの手を入れる。
「上村さんの事は、篠宮家、母方の実家共に紹介済みだ。なかなかない事例だと思うし、扱いが難しい事だとも分かっている。だが副社長と秘書という関係になっても、神聖な職場を汚すような真似はしないし、まじめに働くと皆に誓う」
尊さんらしい宣誓を聞き、皆うんうんと頷く。
「今後、俺たちの関係を快く思わない者が社内に出てくるだろう。だがそいつらなりの主張があると思うから、全員を説き伏せて理解を得ようとは思っていない。けど、今まで部下として関わりのある、商品開発部の皆には俺たちの気持ちを知ってほしいと思い、今日話す事を決断した」
尊さんの話に一段落ついたあと、私はシュッと挙手して立ちあがった。
「上村さんからもどうぞ」
彼に指名され、私は緊張しながら話し始めた。
「皆の大好きな速水部長の相手に、『どうして上村なんかが』って思う人はいるでしょう。部長はとても魅力的な方だから、密かに想いを寄せる人がいてもおかしくありません。……でも、私はその想いを背負って、皆さんに恥じない存在になります。これからは秘書の仕事にまじめに取り組み、全員に認めてもらうのは無理ですが、及第点をもらえるよう頑張ります。……なので、どうか……、宜しくお願いいたします。私たちを見守ってください」
ガバッと頭を下げると、一瞬場が静まりかえった。
やがてパンパンパン……と手を打つ音が聞こえ、ハッと顔を上げると、神くんが笑顔で拍手をしていた。
(あ……)
色んな意味で目を潤ませると、恵や綾子さんたちが拍手をし、それが皆に伝わっていく。
「応援してるよ!」
近くの席の女性社員にドンッと背中を叩かれた時には、色んな感情が決壊してボロッと涙が零れてしまった。
最初は少し意識したものの、神くんが普段通り振る舞っていると分かったあとは、こちらも気にしないようにしていた。
けれど「実は見られていた?」と思うと、一瞬ドキッとしてしまう。
ほんの僅かな間、私は固まって神くんを見ていた。
彼も私を見つめていたけれど、ニコッと笑ったあと、隣の人に話しかけられてまた会話に戻っていった。
(びっくりした……)
そっと息を吐いた時、「上村さん」と女性社員に話しかけられる。
「はい?」
神くんと目が合った事をごまかしつつ返事をすると、彼女は前のめりになってヒソヒソ声で尋ねてきた。
「……それで、本当のところ、上村さんと速水部長ってどうなの?」
んー!
油断していたところで斜め上から槍が降ってきて、避け損ねてしまう。
「ええと……」
綾子さんたちには打ち明けたけど、理解のある一部の人に教えるのと、へたをすると部署外にも広まりかねない感じで言うのとでは違う。
困ってモゴモゴしていると、それを見ていたらしい尊さんが立ち上がり「聞いてくれ」と皆に話しかける。
「上村さんが俺の秘書になると知って、どういう事なのかと思う人は多いだろう。最終的には公表するつもりだから今言うが、俺と上村さんは付き合っている」
尊さんのいきなりの告白を聞いて、男性たちは指笛を吹いて歓声を上げ、拍手をする。
女性社員もミーハーな悲鳴を上げて拍手していた。
チラッと周囲を見ると、綾子さんたちほどあからさまじゃないけど、実は結構真剣に尊さんを想っていた……という雰囲気の女性たちは、少し複雑な表情をしている。
でも一緒に仕事をして分かったけど、彼女たちはとても常識的な人だ。
だから見えないところで悲しんだとしても、私に嫉妬心をぶつける事はないだろう。
(分かっていても、誰かの想いの上に自分が立ってると思うと、素直に喜べないな)
私は皆の視線を感じつつ、とりあえずぎこちなく微笑む。
「現在は婚約状態にあり、そう遠くない未来には結婚するつもりでいる」
「部長ー! 結婚式には呼んでください!」
いい感じに酔った男性社員が叫び、周囲がドッと沸く。
尊さんはその声に笑顔を返し、続きを言う。
「部署内で社内恋愛をして、その二人が副社長、秘書になる事を快く思わない者もいるだろう。俺は今まで篠宮家の者である事を伏せ、母の姓を名乗って仕事をしてきた。俺が副社長になる案が出た時、重役会議では相応に揉めた。その結果、株主総会を経てこうして正式に決まった訳だから、責任をもって取り組みたいと思っている」
例のお家騒動の話にも絡んだせいか、みんな真剣に尊さんの話を聞いていた。
「上村さんとは社内恋愛というより、それ以前から浅からぬ縁があった。すべてを言うつもりはないが、こうなるべくして出会ったと思っている。いずれ結婚すれば、彼女の姓は篠宮になる。それを隠して上村の姓で勤め続ける事も可能だが、『そこまでして夫婦である事を隠すのか?』と思った」
酔っぱらった誰かが「確かに!」と合いの手を入れる。
「上村さんの事は、篠宮家、母方の実家共に紹介済みだ。なかなかない事例だと思うし、扱いが難しい事だとも分かっている。だが副社長と秘書という関係になっても、神聖な職場を汚すような真似はしないし、まじめに働くと皆に誓う」
尊さんらしい宣誓を聞き、皆うんうんと頷く。
「今後、俺たちの関係を快く思わない者が社内に出てくるだろう。だがそいつらなりの主張があると思うから、全員を説き伏せて理解を得ようとは思っていない。けど、今まで部下として関わりのある、商品開発部の皆には俺たちの気持ちを知ってほしいと思い、今日話す事を決断した」
尊さんの話に一段落ついたあと、私はシュッと挙手して立ちあがった。
「上村さんからもどうぞ」
彼に指名され、私は緊張しながら話し始めた。
「皆の大好きな速水部長の相手に、『どうして上村なんかが』って思う人はいるでしょう。部長はとても魅力的な方だから、密かに想いを寄せる人がいてもおかしくありません。……でも、私はその想いを背負って、皆さんに恥じない存在になります。これからは秘書の仕事にまじめに取り組み、全員に認めてもらうのは無理ですが、及第点をもらえるよう頑張ります。……なので、どうか……、宜しくお願いいたします。私たちを見守ってください」
ガバッと頭を下げると、一瞬場が静まりかえった。
やがてパンパンパン……と手を打つ音が聞こえ、ハッと顔を上げると、神くんが笑顔で拍手をしていた。
(あ……)
色んな意味で目を潤ませると、恵や綾子さんたちが拍手をし、それが皆に伝わっていく。
「応援してるよ!」
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