【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
395 / 810
ゴールデンウィーク 編

未知との遭遇

しおりを挟む
 今夜はランド入り口の真向かいにある、ラビティーランドホテルに泊まる予定になっている。

 白亜のお城! という外装のホテルに泊まれるなんて今からテンションぶち上がりだけれど、先にランドを楽しんでからゆっくりさせてもらう事にする。

 駐車場は当日の深夜零時から利用可能らしく、私たちは朝一で車で移動し、途中で恵を拾って現地に来ている。

 いま別行動なのは、恵が『ホテルの外観を写真に撮りたい』と言ったからだ。

 先にエントランス前にいる私たちは、とりあえず全員集合してから並ぼうと思い、先に並んでいる人たちの邪魔にならない所で、コソコソとおにぎりを食べている。

 なお、涼さんは尊さんの車に乗らず、自分の車で来るらしい。

 ホテルの荷物預かりは朝六時から可能なので、大きい荷物を預けた上でここにいる。

「早くきなしゃんせ、……と」

 私は恵にメッセージを送り、「てやっ」と送信する。

 それから、二個目のおにぎりを剥いて食べ始めた。

「ツナマヨ二個か」

「ツナマヨは鉄板ですね。いつも二個目を明太子、いくら、シャケ辺りでローテーションしているんですが、今日はツナマヨ欲が強かったです。そうだ、昔、手巻きおにぎりで海老マヨネーズってありませんでした?」

「あー、確かにあったかも」

「今はツナマヨか納豆か、ネギトロか……、みたいな感じですね」

「コンビニって気に入った商品ができても、相当な鉄板ネタじゃないと、いつの間にかなくなってるよな」

「それ~!」

 私は激しく同意を示したあと、最後の一口を口の中に放り込む。

「お待たせ~」

 その時、ホクホクした恵がやってきた。

 彼女はベージュのカーヴィパンツに紺色のTシャツ、ジージャンに黒スニーカーだ。

 パンツのゆるっとしたシルエットや、大ぶりなリングのピアスが恵の雰囲気にとても似合っている。

「お待たせ」

 同時に片手を上げて到着したのは涼さんだ。

 彼はクラッシュデニムにブランド物らしいロゴの入った黒T、その上にスウェット地のジャケットを着て赤いスニーカーを履いている。

 同時の登場となった恵と涼さんは、「ん?」という顔でお互いを見ていた。

「えっと、恵。こちらが三日月涼さん。涼さん、こちらが私の親友の中村恵さん」

 私は両手を胸の前でクロスさせ、二人を紹介する。

 恵は目をパチクリとさせて高身長の涼さんを見ていたけれど、「ども」と頭を下げる。

 涼さんもまた恵を見ていたけれど、いきなり質問しだした。

「ちなみにポテチ、焼き鳥はどっち派? チョコレートはビター? ミルク?」

「のり塩、塩、ミルクです」

「仲良くなれそうだ」

 頷いた涼さんは、握手の手を差しだし、恵はよく分かっていない顔をして彼の手を握り返した。

「好きな酒は?」

「えぇ……? ビールと焼酎、日本酒、ワインとカクテルです」

「好きな季節は?」

「近年は暑すぎるけど夏」

「よし、仲良くなれそうだ」

 涼さんはもう一度同じ言葉を繰り返し、ギュッギュッと恵と握手をする。

 恵は思った通り困惑した顔をしていて、尊さんは顔の前で手を立ててチョンチョンとし、「すまん」と謝っている。

「とりあえず、並ぼうか」

 尊さんが言い、私たちはゾロゾロと列の最後尾に向かった。

 その途中、恵がヒソヒソと囁いてきた。

「涼さん、変わった人だね」

「……まぁね。でも悪い人じゃないと思うから、二泊三日、宜しく」

「まぁ、いいけど。……その代わり、今度パンケーキかヌン活か、デートしてよ?」

「了解」

 私はグッとサムズアップし、恵と手を繋いでブラブラさせる。

 そんな私たちを見て、涼さんが言う。

「『乙女の港』か?」

「三角関係じゃないだろ」

 川端康成の作品を出されて突っ込んだ尊さんに、涼さんはまじめな顔で言う。

「みと子?」

「ぶふっ」

 まさかの私と尊さんしか知らない〝みと子〟の登場に、私は思わず噴き出した。
しおりを挟む
感想 2,607

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

だから何ですの? 〜王家の系譜に「愛」など不要です〜

柴田はつみ
恋愛
貴方の系譜、ここで断絶させてもよろしくて? 〜初夜に愛を否定された公爵令嬢、国庫と軍事と血統を掌握して無能な夫を過去にする〜 薔薇の花びらが散らされた初夜の寝室で、アルフォンスはあまりに卑俗で、あまりに使い古された台詞を吐く。 「私は君を愛することはない。私の心には、リリアーヌという真実の光があるのだ」 並の女なら、ここで真珠のような涙をこぼし、夫の情けを乞うだろう。 しかし、ミレーヌの脳裏をよぎったのは、絶望ではなく、深い「退屈」だった。 「……だから何ですの? 殿下」

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

「君はいらない」と捨てられた夜、天敵の冷徹社長に「なら、俺が貰う」と拾われました。――手を出さない約束でしたが、彼の理性が限界のようです

白山 乃愛
恋愛
【婚約破棄から始まる、不器用なライオン(冷徹社長)の猛烈な求愛!】 「俺の妻になるなら覚悟しろ。……もう、指一本逃がすつもりはない」 ★あらすじ★ 「美月は完璧すぎて、可愛げがないんだよ」 28歳の誕生日。 一流ホテルのウエディングプランナーである相沢美月(あいざわ みつき)は、婚約者の裏切りにより、結婚目前ですべてを失った。 雨の降る路地裏。 ヒールも折れ、心も折れてうずくまっていた美月の前に現れたのは、かつての高校時代の天敵であり、現在は勤務先の冷徹な社長 一条蓮(いちじょう れん)だった。 「捨て猫以下だな」 そう憎まれ口を叩きながらも、彼は泥だらけの美月を躊躇なく抱き上げ、最高級ペントハウスへと連れ帰る。 そして、彼が突きつけたのは、あまりにも強引な提案だった。 「住む場所がないなら、俺の家に来い。その代わり――俺の『婚約者』役を演じろ」 利害の一致した契約関係。 条件は「お互いに干渉しないこと」、そして「決して手を出さないこと」。 ……のはずだったのに。 「髪、濡れたままだと風邪を引く」 「あんな男のために泣くな。顔が台無しだ」 同居生活で見えてきたのは、冷徹な仮面の下に隠された、不器用すぎるほどの優しさと独占欲。 美月が作った手料理を誰よりも美味しそうに食べ、元婚約者が復縁を迫ってくれば「俺の女に触れるな」と徹底的に排除する。 天敵だったはずの彼に守られ、凍っていた美月の心は次第に溶かされていく。 しかし、ある雷雨の夜。 美月が不用意に彼に触れた瞬間、一条の理性のタガが外れてしまい――。 「……手を出さない約束? 撤回だ」 「そんな無防備な顔で見つめて、何もしないでいられるほど、俺は聖人君子じゃない」 10年越しの片思いをこじらせたハイスペック社長 × 仕事熱心で恋愛に臆病なプランナー。 契約から始まった二人の関係が、本物の愛(溺愛)に変わるまで。 元婚約者への痛快な「ざまぁ」も収録した、極上の大人のシンデレラストーリー! 【登場人物】 ◆相沢 美月(28) ホテルの敏腕ウエディングプランナー。真面目でお人好しな性格が災いし、「つまらない女」と婚約破棄される。実は家事万能で、酔うと少しだけ甘えん坊になる(本人は無自覚)。 ◆一条 蓮(28) ホテルグループの社長。美貌と才覚を併せ持つが、他人に興味を示さないため「氷の貴公子」と呼ばれる。実は高校時代から美月を一途に想い続けており、彼女のこととなると冷静さを失う。

処理中です...