【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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ゴールデンウィーク 編

陸に上がった変態

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 そのあと、開園時間の九時まで、のんびり話して交流する事になった。

 私は恵の事をざっくり紹介し、中学生から一緒で同じ篠宮フーズに勤めている、ちょっと前まで同僚だった親友だと涼さんに伝える。

 すると涼さんは、尊さんが色々手を回していた事も知っていたみたいで、「ははーん」みたいなしたり顔で恵を見ていた。

 というか、長年私を見守っていた件は、尊さんとしてはあまり人に言いたくない話だろうに、知っているという事は涼さんに相当心を砕いている証拠だと思った。

 それは恵もなんとなく雰囲気で察したらしく、上っ面の友達ではないから、そう変な人でもないと安心したらしい。

 ……いや、変な人なんだけど、信頼できる人というか。

 その点については、私としても安心した。

 恵はチャラい男性が大嫌いで、ナンパされても絶対零度の態度を貫いている。

 尊さんがチャラい人とつるむイメージはないけれど、もしも涼さんが調子のいいタイプだったら、恵は挨拶の段階から「うわ……」とドン引きしていたかもしれない。

 けれど、逆の意味で彼女はドン引きした。

「俺は三日月不動産の専務。まぁ、平たく言ってボンボンだね。趣味は海外旅行にゲテモノ食い。高級なものはあらかた体験したし食い尽くした感があるから、今は自分を刺激してくれるものを求めている」

 それを聞き、恵は「三日月不動さ~ん♪」と全国CMでお馴染みのフレーズを歌う。

「そうそう、それ」

「ていうか、不動産だけじゃないですよね? 銀行とかクレカとか、保険とか、アウトレットモールとか……。ぶっちゃけ、財閥じゃん!」

 恵はものっすごく嫌そうな顔をして言う。

「まぁまぁ、中村さん。こいつはただの陸に上がった変態だから、いじめるんじゃありません」

 尊さんがなんとも言いがたいジョークを言い、恵にピシャッと突っ込まれる。

「浦島太郎の亀じゃないんですから」

 言ったあと、恵は大きな溜め息をついて私の手をギュー……と握ってくる。

 その目は「面倒に巻き込んでくれたな」と言っていて、私はそっと視線を逸らして冷や汗を流す。

 対する篠宮フーズも、全国民がコンビニやスーパーでお茶やビールを買っている大企業なので、いい対戦だ。

 傘下にはウィスキー専門の会社や、ワイン専門店、それに付随してのフレンチレストラン、お腹にいい菌の会社や食品会社もあり、勿論海外事業もあるし、とんでもない大企業だ。

 だから私も恵も一生懸命勉強して、物凄い倍率の中入った会社……と思っていたし、篠宮フーズで働いているプライドもある。

 そんな私たちが今、ラビティーランドの行列に並び、もしかしたら四人ともラビティーのカチューシャでも被るのかな……と思うと、人はみな平等……と思ってしまうけれど。

 恵は本当に嫌そうな顔をしていて、私は一生懸命「まぁまぁ」と宥める。

 けれど涼さんは逆にその反応が新鮮みたいだった。

「珍しいね。女の子は皆、俺の素性を知ったら目をハートにするけど」

「……いや、結構です」

 恵がめちゃくちゃ渋い顔で言うものだから、涼さんはますますご機嫌になる。

「君の事、ちょっと気に入ったから、ランドの中で好きな物買ってあげようか」

「結構です。知らない人に借りを作るなと両親にも祖父母にも言われてるので。それに私に変な事をしたら、兄が助走をつけてグーパンしてきますよ」

「あっはっはっはっは!」

 恵が徹底的に涼さんを嫌っているからか、彼はとうとう大きな声を上げて笑い始めた。

 ……こんな反応をされて気に入るなんて、ますます変わった人だな。

「うんうん、気に入った。尊が『心配しなくていい』って言っていた意味が分かった。正直、俺は女の子にすぐ好かれるほうだから、『そういう子だったら面倒だな~』って思ってたけど、君は本当に心配しなくていいタイプだね」

「ご期待に添えず、すみませんでした。とりあえず、顔を見て『わー、きれー』とでも言っておいたほうが良かったでしょうか」

「っ、その声のトーン、お掃除ワイパーのCMじゃないんだから」

 恵のやる気の無い声を聞いて、涼さんはますますご機嫌になり、横を向いてヒイヒイ笑っている。

 その時、尊さんがコソッと囁いてきた。

「中村さんの反応はともかく、涼が彼女を気に入ったみたいで良かったよ。これで結構、人をシャットアウトすると塩対応なところがあるから」

 それに私もコソコソと囁き返す。

「恵もこう見えて、心底嫌がってるワケじゃないですよ。本当に嫌だったら完全無視しますから」

 言ったあと、私は尊さんに向かって小さくサムズアップする。

「こらー、朱里」

 恵は私の腕を組み、ギューと抱き締めてくる。

「とりあえず、変態はおいといて、回りたいところをチェックしておこうよ」

「そうだね」

 私たちはスマホを開き、行きたい所を挙げては効率のいい回り方を考えていった。
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