【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
406 / 778
親友の恋 編

ドキドキするのは嫌い?

しおりを挟む
「ほら、可愛い」

「っっ~~~~っ!!」

 耳元で笑い混じりに言われた瞬間、ゾクッとして肩が勝手に跳ね上がる。

 とっさに両手で耳を覆ったけれど、三日月さんが手首を握って阻んでくる。

「恵ちゃん、素直になって。俺は今、めちゃくちゃ君に譲歩してる。こういう事に慣れてない君が、少しずつ俺に心を開けるように優しく接している。君を好ましく思ってるから、優しくするのは当たり前だ。でも人生、手を差し伸べられた時に掴んでおかないと、あとから後悔する場合が沢山ある」

 言われて、恥ずかしくて身をよじらせていた私はハッとする。

 私が動きを止めたからか、三日月さんはさらに言った。

「男に慣れていない君に、すぐ答えを求めるのは酷だと分かっている。でも俺は尊みたいに十年以上も好きな子を見守る気の長さはない。短気でもないけどね。……付き合うって、お互い協力していかないと成功できない事だ。怖くて不安なのは分かるけど、色々前向きに検討してみない?」

「……つ、付き合う……?」

 寝耳に水な事を言われ、私は思わず顔を上げて目を瞬かせた。

「男と女が出会って、手を握ってハグをしたあとは、大体恋愛的に求め合うものだと思うけど。……それともこの二泊三日だけで終わらせておく? 恵ちゃんが望まないならもうこういう事はしないし、言わない。このグループデートが終わったあとも連絡しない。……それでもいい?」

 試すように言われ、私は目を潤ませて彼を睨む。

「……ずるい」

 三日月さんは自分の望む答えを引き出そうとしている。

 私が断らないって分かっていて、そういう言い方をしている。

 けど、そうでもしなければ私は自分から「イエス」を言えない、恋愛初心者だという事も分かっていた。

「恋愛って、押して引くんだよ。押してばかりでも嫌われるかもしれないし、リードされるのが好きな女性は、押してばかりの男にすべてを委ねてしまう。だから時には引いてみる。引いて焦ってくれたらこっちのもん。慌てて追いかけてきたところを、ギュッとする」

 言いながら、三日月さんは私をギュッと抱き締めた。

 そして、また目を丸くして固まった私を見て優しく笑う。

「……翻弄されてるみたいでドキドキするし、弄ばれてるみたいで悔しい」

「慣れてないとそう感じるだろうね。ドキドキするのは嫌い? 俺は『恵ちゃんは次にどんな顔を見せてくれるんだろう?』って楽しみでならない。何が入ってるか分からない、プレゼントの箱を前にしてる気持ちだ」

 そう言った三日月さんの目は、キラキラ楽しそうに輝いている。

「……恋愛的に翻弄される事に慣れてないです。期待して……、裏切られたら怖い。好意を向けたのに返されなかった時の事とか、会いたいのに『会えない』って言われたら、落ち込みそうで怖い。……朱里を遊びに誘って断られた時だって、そこそこ落ち込んでるのに。……私、三日月さんが思ってるより、結構重たいと思いますよ。……人に裏切られたくないから、仙人みたいにソロキャンして火を見て孤独を楽しんでいるんです」

 私の言葉を聞き、彼はクスクスと笑う。

「キャンプ好きなら、記念すべき第一回のデートはキャンプかな。恵ちゃんの手際も分かるし、いざという時のサバイバル能力も分かる」

「……デートって……」

「まだ何も言ってないのに」と思って彼を見ると、パチンとウインクされた。

「一緒にドキドキしようよ。俺だって今、君に断られないかどうかドキドキしてる。落ち着いて何にも動じなくなりたいなら、歳をとったらいくらでもできる。でも、感受性が豊かなうちに、沢山心を動かしておこう。それに、ここまで恵ちゃんに迫ってるくせに、中途半端に弄んで捨てるなんて絶対にしないから安心して」

 そう言われ、ドキンッと胸が高鳴る。

「こう言うと嫌みっぽいけど、俺はその気になれば大体の女性とは付き合える。そんな俺が興味を持ったんだ。もっと自分に自信を持ってよ。恵ちゃんは魅力的だし、価値のある女性だ。仕事で忙しかったり、体調が悪かったら応えられない事もあるけど、メッセージをくれたら必ず返すし、デートに誘ってくれたら喜んで応じる」

 そこまで言うと、三日月さんはジャケットのポケットに手を入れて小さな箱を出した。

「えっ?」

 驚いて目を瞬かせると、彼は箱の蓋を開け、中からシャンパンゴールドのリングを出す。

 ランドの物だからキャラ物だけど、パッと見るとシンプルなリングで、よく見るとラビティーの小さなシルエットがドット模様のように刻まれ、小さなクリアストーンも嵌まっている。

 びっくりして固まっていると、三日月さんは魅力的に微笑んで私の手をとった。

「いきなり指輪は重たいだろうけど、エンゲージでもマリッジでもない、ただのアクセサリーだと思って。でも裏切らないって〝約束〟の印だと思ったら、気持ちが安らぐだろ?」

 そう言って、彼はスッと私の左手の薬指にリングを嵌めた。

「男から指輪を贈られるのは初めて?」

 尋ねられ、私はコクコクと頷く。

「よし、じゃあ初めてもらった」

 ニカッと笑った三日月さんの顔を見て、私は真っ赤になるとヘナヘナと欄干に寄りかかってしまった。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...