【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
414 / 780
親友の恋 編

そろそろ〝女〟に戻ってもいいのかな

しおりを挟む
「急すぎます!」

 お風呂に入る時だって、つま先から順番にお湯を掛けなければいけない。そうでなければヒートショックだ。

「確かに急かぁ……。まぁ、家族に会わせるのは急でも、興味があったら俺の家に遊びにきなよ。共用部にあるレストランで食事をしてもいいし」

 そうだ……。そうだった。

 下手をすれば篠宮さんよりお金持ちな彼が住むマンションなら、敷地内にお洒落なカフェやレストラン、プールにジムがあってもおかしくない。セレブめ!

「あと、三十歳の妹もいるし二十八歳の弟もいるね」

 家族構成を聞くと、やっぱり年齢が私より高めだ。

「……ロリコン?」

 色んなものを取っ払いすぎてそう言ってしまうと、涼さんは手を打ち鳴らして笑い始めた。

「恵ちゃん幼女だったの? それはそれで可愛いけど」

「ち……っ、ちがっ」

 間違えたと思った時には遅く、涼さんはツボに入ったらしくケラケラ笑っている。

 やがてその笑いが落ち着いた頃、彼はポンポンと私の背中を叩いた。

「確かに六歳差は少し歳の差かもしれないけど、大人になったら関係ないだろ。そもそも、尊と朱里ちゃんだって同じ年齢な訳だし。……あいつの場合、中学生の朱里ちゃんに出会ってからの縁だから、尊のほうが闇が深いよ」

「……確かに」

 頷くと、涼さんはクスクス笑った。

「中学生の恵ちゃんに二十歳の俺ってやばいね」

「やばいっす」

 当時は痴漢に遭いたてで、異性を恋愛対象に見るどころじゃなかった。

 フワフワで華奢な朱里を抱き締めて安心して、彼女を守る事で自分の強さを確認するので精一杯だった。

 ――でも。

(……そろそろ〝女〟に戻ってもいいのかな)

 涼さんを見ていると、とても大らかな人で、私がこだわっている事なんて明るく笑い飛ばし、全部受け入れてくれそうな包容力を感じる。

 けれどそんな凄い人、魅力的な人が選んだのが私でいいのかな? という怯えがある。

 彼が言うとおり、その気になればよりどりみどりな環境なら、今後付き合ったとして謎の美女AやらBやらがゴロゴロ出てくる可能性がある。

 加えて、美魔女っぽいお母さんや美形決定な姉妹たちも、私みたいな一般家庭生まれのどこをとっても普通な人を見て、どう判断するか分からない。

(現代のシンデレラなんて御免だ)

 そこまで考え、涼さんに相談もしていない上、彼のご家族にも会っていないのに一人で決めつけてしまっている自分に気づく。

(良くない!)

 両手でピシャン! と頬を叩くと、涼さんは驚いたように目を丸くした。

「どうしたの? 気合い?」

「……あ、……えぇ、まぁ……」

 ゴニョゴニョと言ったあと、私は時計を見てそろそろ寝ないとと思った。

「明日も早くからシーに向かうんですよね」

「そうだね。開店の六時半に予約してあるはずだからホテルのビュッフェを楽しんで、それからなるはやで移動しよう。俺も別途車で来てるから、恵ちゃんは俺の車に乗りなよ」

「えっ、あっ、うぅ……」

 戸惑っていると、涼さんは「はい、決まり」と私の頭をワシャワシャ撫でてきた。

「じゃあ、寝ようか。恵ちゃん、お風呂は?」

「えっ!?」

 お風呂と言われた瞬間、ドキンッと胸が鳴って口から飛び出そうになった。

「まだなら入りなよ。俺はさっきシャワーを浴びたから、先に寝る準備してる」

「ソッ、ソウッ、デスネッ」

 お風呂と言われただけでエッチの事を考えてしまった自分が単純すぎて、穴を掘って埋まりたい。

「今日は同じ部屋で寝るだけ。明日はもうちょっと勇気を出してソフレやってみる?」

「そふれ?」

 聞いた事のない単語に、私は眉を寄せる。

「添い寝フレンド。フレンドっていうの正しくないね。お付き合い前提だから」

「ソイネッ!」

 ソイヤッみたいな勢いで言ってしまったあと、私はカーッと赤面して立ちあがった。

 恥ずかしくて無理すぎる。

「~~~~っ、とりあえず明日のために早く寝ないとならないので、色々寝る準備しますが、いっさい音を聞かないでください!」

 我ながら無理難題を出してしまったと思ったけれど、涼さんは「いいよ~」と軽く返事をし、ポケットからワイヤレスイヤフォンを出すと耳に押し込んだ。

「先に歯磨きしてからでいい? そのあとゆっくりしていいよ」

「え……、あぁ、……はい……」

 私は何を言っても動じない彼を見て呆然としたまま、彼が洋楽を口ずさみながら洗面所に入ってく姿を見送ったのだった。
しおりを挟む
感想 2,464

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

処理中です...