【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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二日目の夜の葛藤 編

俺に任せて

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「よ、夜なので」

「そうだけど、明日は帰るだけだから少しゆっくりしようよ。俺、もう少し恵ちゃんと話してみたいな」

 胡座をかいてこちらを見る涼さんは、ワクワクした顔をしていて、期待に応えないとなんだか悪いような気がしてくる。

「……あんまり面白い話はできませんけど」

「綺麗なオチのある話をしろなんて言ってないよ」

 涼さんはクスクス笑い、少し考えてから尋ねてきた。

「ストレートに聞いて悪いけど、今まで彼氏は?」

「あー……、三人ぐらい。でも長続きしませんでした」

「理由は?」

「……うーん……。大切にできなかったし、異性として意識もできませんでした。……好きになってキスしたいとかイチャイチャしたいとかの前に、……『気持ち悪い』って思っちゃうんです。そのスイッチが入ったらもう駄目で、『無理』って言って別れました。一番続いて半年だったかな……」

 それぐらい、私は友人の中で〝長続きしない女〟として有名だった。

 あとになってから女子会で『○○くん、特に悪くなかったじゃん』と言われ、確かに悪い人ではなかったけど、どうしても好きになれなかった。

「そういう事を繰り返すうちに、相手に申し訳ないから応えるのをやめようって思ったんです。……好きな人に想いが届かないからって、間に合わせで付き合っていたら相手にも失礼だから」

「……〝好きな人〟は朱里ちゃん?」

 尋ねられ、私は膝を抱えてコクンと頷く。

「……でも、分かってます。私と朱里は同性同士で、彼女には篠宮さんがいる。どう足掻いても報われない想いだったんです」

「下世話な話だけど、朱里ちゃんに肉体的な性欲を抱いた? それともプラトニックのみ?」

「……プラトニックだと思います。確かに『抱き締めたい』とかは思いましたけど……。あの子、見ての通り胸が大きいからたまに揉ませてもらったり、スキンシップの範囲でイチャイチャはしました」

「ご家族とはスキンシップがあるほう?」

「いえ。もうお互い、いい大人ですし、子供の頃みたいに兄貴に叩かれたりもなくなりました。両親もベタベタする人じゃないです」

「うーん……」

 涼さんは少し考えてから、申し訳なさそうに言った。

「気を悪くしたら申し訳ないけど、多分ご家族がややドライなだけに、恵ちゃんは無意識に朱里ちゃんから温もりを分けてもらい、愛情を注いでもらおうとしていたのかな。いやらしい意味じゃなく、柔らかいものに触れると安心感を抱くって言うし、それもあったと思う」

 そう言われて、自分の想いを否定されたような気がして少しガッカリするも、納得する自分もいた。

「痴漢に遭った事、ご家族に言えてなかったんだよね? そんな目に遭ったらズタズタに傷付いて、誰かの愛情に包まれて安心したいと願うのが普通だ。恵ちゃんは朱里ちゃんにだけ打ち明けて、彼女に慰めてもらった。……だから余計に特別に思えたんじゃないかな」

 彼が言いたい事を察し、私は溜め息をつく。

「……〝刷り込み〟みたいな感情だったと?」

 すると涼さんは、また申し訳なさそうに笑う。

「傷つけたならごめん。ただ、君は俺を意識してくれているし、今までも男性と付き合っていた。同性が恋愛対象な訳じゃないし、朱里ちゃんが特別なのはその通りなんだろうけど、痴漢に遭った出来事がなければ、今みたいな特別感は抱いていなかったと思うよ」

 第三者に冷静に分析され、今までの自分のクソデカ感情がただの怯えからの好意――吊り橋効果みたいなものだったと言われ、確かに落胆はしている。

 でも心のどこかで「やっぱりそうだったのか」と思う自分もいた。

「……男子もかもしれませんが、女子って特に依存し合う傾向がありますよね。つるまないとトイレに行けないとか、ああいうのにも似てるのかも。……私は、……弱かったから朱里に縋った。……あの子はもともと一人で行動するのに抵抗がない強い子だったのに、傷付いた私を哀れに思って受け入れてくれた」

 衣擦れの音がして顔を上げると、涼さんがベッドから下りて私のベッドに腰かけた。

 そして優しく頭を撫でてくる。

「この話をし出したのは俺だけど、そこまで卑下しなくていいよ。……言いたかったのは、その寄りかかりたい想いを、これからは朱里ちゃんじゃなくて俺が請け負うよって話」

 そう言われ、私は静かに瞠目する。

 ――この人……。

 知らないけど、いつの間にか目が潤んでしまって、泣きそうになる。

「……クソ重たいですよ。『痴漢に遭って男性不信になってるから慰めて』っていう重たい感情を、私は今まで朱里にぶつけていたんです。あの子は優しいし、他に友達があまりいないから受け止める余裕があった。……でも……」

「俺に任せて。そろそろ君を大切にする男を信じて、楽になっていい頃だと思う」

 優しく笑われ、ボロッと涙が零れた。
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