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彼と彼女のその後 編
同棲のプレゼン
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「……最初のハードルを低くしてくれるなら」
「約束するよ。初心者に優しい三日月涼を自称してるから」
「なんですか、それ」
プフッと噴き出したあと、私は彼をチロリと見る。
「でも初対面の人にはわざと変人ぶってるんでしょ?」
「まぁね」
涼さんはニヤッと笑ってから、私の両手を握って「小さいな」と呟いてから続きを言う。
「うちに住むメリットは、まず尊の所と近いから朱里ちゃんとも頻繁に会えると思うよ。都内の色んな所にもアクセスしやすいし、色んな施設が揃っているからマンションから出なくても大丈夫だ。家事については家政婦さんに掃除と食事を頼んでいるから、『やらなきゃ』って思う必要もない」
彼は指折りメリットを言い、苦笑いしつつ最後に付け加える。
「東京タワーが見える物件って言ったらステータスが高いけど、……恵ちゃんはそういうものにはこだわらないよね」
そう言われ、私はコクンと頷く。
SNSでキラキラしている〝港区女子〟が、東京タワーが見えるレストランで乾杯とか、アフターヌーンティーの写真を投稿しているのはよく見る。
望んで見ている訳じゃないけど、エミリさんや春日さんと繋がったあと、アルゴリズムで流れてくるようになった。
彼女たちはSNSで承認欲求女を満たすタイプでなく、自立した尊敬できる人なのは分かっているけれど、付き合いや自分へのご褒美でそういう場所に行く事もあるからか、似たような投稿が表示されるみたいだ。
私はお金がかかるものを「いいな」とあまり思わないけれど、涼さんの住まいは凄い所だし、彼自身も超優良物件だ。
「それにしても豪華な顔だな……」と思って涼さんの顔を見ていると、彼はニコッと笑って続きを言う。
「デメリットは……、六本木だから繁華街の近くは少し騒がしいかな。あと、台風や地震の時に多少揺れると思う。急いでいる時にエレベーター待ちすると、少し苛つくかもしれない」
「……それぐらいは、都会に住んでいるんですし大丈夫です」
「あと、俺は割と早寝早起きのタイプだけど、ゆっくり寝ていたい時は配慮するよ」
確かに、涼さんは規則正しい生活を送っていそうだ。
経営者とか成功者は、だらしない生活は送らず、家もきちんと片付いているというし。
「疲れた時はちょっとダウンするかもですが、私も基本的には朝早めに起きて走ったりしてるので、大丈夫だと思います」
「あ、走るタイプ? いいね。恵ちゃんと一緒に朝ランしたい」
私の言葉を聞き、涼さんは嬉しそうに表情を輝かせる。
それを聞き、さすがだなと感じた。
社会人になったあとも、働きながらコンスタントに運動をしている人はあまり多くない。
会社でも一部のムキムキ社員を除いて、大体の人が「運動不足」と言っている。
私は子供の頃から朝晩に家族とジョギングをするのが習慣になっていて、大人になって一人暮らししたあとも、早起きして三十分から一時間は走るようにしている。
だからその習慣に涼さんが付き合ってくれるとは思わず、今まで感じていた魅力に加え、〝運動できる人〟という要素が上乗せになった。
(やばい……。もっと好きになっちゃう……)
我ながら、「スポーツが得意だから格好良く見える」なんて小学生みたいだけど、共通点があると嬉しくなるのは人間の性ではないだろうか。
知れば知るほど涼さんが好みドタイプだと分かり、ムズムズした気持ちになる。
今まで好きな異性のタイプなんて真剣に考えた事がなかったのに、涼さんと話して彼の事を知るたびに「こういう所、好きだ」と再確認している自分がいた。
「一緒に住めそう?」
涼さんに尋ねられ、私は照れながら答える。
「……まず、週末お泊まりからお願いします」
ペコリと頭を下げると、彼は「うん」と頷いてまた私をハグしてきた。
「お兄さんたちはどういう方?」
涼さんはコーヒーを飲んでから尋ね、私は兄二人を思い出して溜め息をつく。
「長男の孝志兄は三十歳で、スポーツメーカー勤務で社会人サッカーチームに入っています。次男の恭祐兄は二十八歳で、ジムトレーナーです」
本当はタカ兄、キョウ兄と呼んでいるが、涼さんは本名を知らないので丁寧に紹介しておく。
「ふぅん、スポーティーなご家族なんだね」
「なので私も今でもソロキャンとかしています。……というか、そういう家庭で育ったので、女の子らしくするのが苦手で、こうなったんだと思います。別に家族を恨んでいる訳じゃないし、女の子らしくなりたい訳でもありません。……でも、人は環境に左右されるっていうの、ある程度本当なんだなって感じます」
すると涼さんは意味深な笑みを浮かべて、私の頭を撫でてきた。
「俺はそのままの恵ちゃんが好きだよ。無理して何かに寄せなくてもいいし、君は充分に女性らしいと思う」
また三日月クオリティで褒められ、私はボッと赤面する。
「約束するよ。初心者に優しい三日月涼を自称してるから」
「なんですか、それ」
プフッと噴き出したあと、私は彼をチロリと見る。
「でも初対面の人にはわざと変人ぶってるんでしょ?」
「まぁね」
涼さんはニヤッと笑ってから、私の両手を握って「小さいな」と呟いてから続きを言う。
「うちに住むメリットは、まず尊の所と近いから朱里ちゃんとも頻繁に会えると思うよ。都内の色んな所にもアクセスしやすいし、色んな施設が揃っているからマンションから出なくても大丈夫だ。家事については家政婦さんに掃除と食事を頼んでいるから、『やらなきゃ』って思う必要もない」
彼は指折りメリットを言い、苦笑いしつつ最後に付け加える。
「東京タワーが見える物件って言ったらステータスが高いけど、……恵ちゃんはそういうものにはこだわらないよね」
そう言われ、私はコクンと頷く。
SNSでキラキラしている〝港区女子〟が、東京タワーが見えるレストランで乾杯とか、アフターヌーンティーの写真を投稿しているのはよく見る。
望んで見ている訳じゃないけど、エミリさんや春日さんと繋がったあと、アルゴリズムで流れてくるようになった。
彼女たちはSNSで承認欲求女を満たすタイプでなく、自立した尊敬できる人なのは分かっているけれど、付き合いや自分へのご褒美でそういう場所に行く事もあるからか、似たような投稿が表示されるみたいだ。
私はお金がかかるものを「いいな」とあまり思わないけれど、涼さんの住まいは凄い所だし、彼自身も超優良物件だ。
「それにしても豪華な顔だな……」と思って涼さんの顔を見ていると、彼はニコッと笑って続きを言う。
「デメリットは……、六本木だから繁華街の近くは少し騒がしいかな。あと、台風や地震の時に多少揺れると思う。急いでいる時にエレベーター待ちすると、少し苛つくかもしれない」
「……それぐらいは、都会に住んでいるんですし大丈夫です」
「あと、俺は割と早寝早起きのタイプだけど、ゆっくり寝ていたい時は配慮するよ」
確かに、涼さんは規則正しい生活を送っていそうだ。
経営者とか成功者は、だらしない生活は送らず、家もきちんと片付いているというし。
「疲れた時はちょっとダウンするかもですが、私も基本的には朝早めに起きて走ったりしてるので、大丈夫だと思います」
「あ、走るタイプ? いいね。恵ちゃんと一緒に朝ランしたい」
私の言葉を聞き、涼さんは嬉しそうに表情を輝かせる。
それを聞き、さすがだなと感じた。
社会人になったあとも、働きながらコンスタントに運動をしている人はあまり多くない。
会社でも一部のムキムキ社員を除いて、大体の人が「運動不足」と言っている。
私は子供の頃から朝晩に家族とジョギングをするのが習慣になっていて、大人になって一人暮らししたあとも、早起きして三十分から一時間は走るようにしている。
だからその習慣に涼さんが付き合ってくれるとは思わず、今まで感じていた魅力に加え、〝運動できる人〟という要素が上乗せになった。
(やばい……。もっと好きになっちゃう……)
我ながら、「スポーツが得意だから格好良く見える」なんて小学生みたいだけど、共通点があると嬉しくなるのは人間の性ではないだろうか。
知れば知るほど涼さんが好みドタイプだと分かり、ムズムズした気持ちになる。
今まで好きな異性のタイプなんて真剣に考えた事がなかったのに、涼さんと話して彼の事を知るたびに「こういう所、好きだ」と再確認している自分がいた。
「一緒に住めそう?」
涼さんに尋ねられ、私は照れながら答える。
「……まず、週末お泊まりからお願いします」
ペコリと頭を下げると、彼は「うん」と頷いてまた私をハグしてきた。
「お兄さんたちはどういう方?」
涼さんはコーヒーを飲んでから尋ね、私は兄二人を思い出して溜め息をつく。
「長男の孝志兄は三十歳で、スポーツメーカー勤務で社会人サッカーチームに入っています。次男の恭祐兄は二十八歳で、ジムトレーナーです」
本当はタカ兄、キョウ兄と呼んでいるが、涼さんは本名を知らないので丁寧に紹介しておく。
「ふぅん、スポーティーなご家族なんだね」
「なので私も今でもソロキャンとかしています。……というか、そういう家庭で育ったので、女の子らしくするのが苦手で、こうなったんだと思います。別に家族を恨んでいる訳じゃないし、女の子らしくなりたい訳でもありません。……でも、人は環境に左右されるっていうの、ある程度本当なんだなって感じます」
すると涼さんは意味深な笑みを浮かべて、私の頭を撫でてきた。
「俺はそのままの恵ちゃんが好きだよ。無理して何かに寄せなくてもいいし、君は充分に女性らしいと思う」
また三日月クオリティで褒められ、私はボッと赤面する。
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