【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
443 / 778
彼と彼女のその後 編

同棲のプレゼン

しおりを挟む
「……最初のハードルを低くしてくれるなら」

「約束するよ。初心者に優しい三日月涼を自称してるから」

「なんですか、それ」

 プフッと噴き出したあと、私は彼をチロリと見る。

「でも初対面の人にはわざと変人ぶってるんでしょ?」

「まぁね」

 涼さんはニヤッと笑ってから、私の両手を握って「小さいな」と呟いてから続きを言う。

「うちに住むメリットは、まず尊の所と近いから朱里ちゃんとも頻繁に会えると思うよ。都内の色んな所にもアクセスしやすいし、色んな施設が揃っているからマンションから出なくても大丈夫だ。家事については家政婦さんに掃除と食事を頼んでいるから、『やらなきゃ』って思う必要もない」

 彼は指折りメリットを言い、苦笑いしつつ最後に付け加える。

「東京タワーが見える物件って言ったらステータスが高いけど、……恵ちゃんはそういうものにはこだわらないよね」

 そう言われ、私はコクンと頷く。

 SNSでキラキラしている〝港区女子〟が、東京タワーが見えるレストランで乾杯とか、アフターヌーンティーの写真を投稿しているのはよく見る。

 望んで見ている訳じゃないけど、エミリさんや春日さんと繋がったあと、アルゴリズムで流れてくるようになった。

 彼女たちはSNSで承認欲求女を満たすタイプでなく、自立した尊敬できる人なのは分かっているけれど、付き合いや自分へのご褒美でそういう場所に行く事もあるからか、似たような投稿が表示されるみたいだ。

 私はお金がかかるものを「いいな」とあまり思わないけれど、涼さんの住まいは凄い所だし、彼自身も超優良物件だ。

「それにしても豪華な顔だな……」と思って涼さんの顔を見ていると、彼はニコッと笑って続きを言う。

「デメリットは……、六本木だから繁華街の近くは少し騒がしいかな。あと、台風や地震の時に多少揺れると思う。急いでいる時にエレベーター待ちすると、少し苛つくかもしれない」

「……それぐらいは、都会に住んでいるんですし大丈夫です」

「あと、俺は割と早寝早起きのタイプだけど、ゆっくり寝ていたい時は配慮するよ」

 確かに、涼さんは規則正しい生活を送っていそうだ。

 経営者とか成功者は、だらしない生活は送らず、家もきちんと片付いているというし。

「疲れた時はちょっとダウンするかもですが、私も基本的には朝早めに起きて走ったりしてるので、大丈夫だと思います」

「あ、走るタイプ? いいね。恵ちゃんと一緒に朝ランしたい」

 私の言葉を聞き、涼さんは嬉しそうに表情を輝かせる。

 それを聞き、さすがだなと感じた。

 社会人になったあとも、働きながらコンスタントに運動をしている人はあまり多くない。

 会社でも一部のムキムキ社員を除いて、大体の人が「運動不足」と言っている。

 私は子供の頃から朝晩に家族とジョギングをするのが習慣になっていて、大人になって一人暮らししたあとも、早起きして三十分から一時間は走るようにしている。

 だからその習慣に涼さんが付き合ってくれるとは思わず、今まで感じていた魅力に加え、〝運動できる人〟という要素が上乗せになった。

(やばい……。もっと好きになっちゃう……)

 我ながら、「スポーツが得意だから格好良く見える」なんて小学生みたいだけど、共通点があると嬉しくなるのは人間のさがではないだろうか。

 知れば知るほど涼さんが好みドタイプだと分かり、ムズムズした気持ちになる。

 今まで好きな異性のタイプなんて真剣に考えた事がなかったのに、涼さんと話して彼の事を知るたびに「こういう所、好きだ」と再確認している自分がいた。

「一緒に住めそう?」

 涼さんに尋ねられ、私は照れながら答える。

「……まず、週末お泊まりからお願いします」

 ペコリと頭を下げると、彼は「うん」と頷いてまた私をハグしてきた。

「お兄さんたちはどういう方?」

 涼さんはコーヒーを飲んでから尋ね、私は兄二人を思い出して溜め息をつく。

「長男の孝志たかしにいは三十歳で、スポーツメーカー勤務で社会人サッカーチームに入っています。次男の恭祐きょうすけにいは二十八歳で、ジムトレーナーです」

 本当はタカ兄、キョウ兄と呼んでいるが、涼さんは本名を知らないので丁寧に紹介しておく。

「ふぅん、スポーティーなご家族なんだね」

「なので私も今でもソロキャンとかしています。……というか、そういう家庭で育ったので、女の子らしくするのが苦手で、こうなったんだと思います。別に家族を恨んでいる訳じゃないし、女の子らしくなりたい訳でもありません。……でも、人は環境に左右されるっていうの、ある程度本当なんだなって感じます」

 すると涼さんは意味深な笑みを浮かべて、私の頭を撫でてきた。

「俺はそのままの恵ちゃんが好きだよ。無理して何かに寄せなくてもいいし、君は充分に女性らしいと思う」

 また三日月クオリティで褒められ、私はボッと赤面する。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...