【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
463 / 852
彼と彼女のその後 編

太鼓判

「恵ちゃんも好きなの読んでいいよ。入荷してほしい本があったら、司書まで教えて」

「あはは! 司書って」

 思わず声を上げて笑うと、パチッと涼さんと目が合ってしまう。

(あ)

 そう思った瞬間、私は彼に抱き締められていた。

「ん……」

 やっぱりいい匂いがして、私は思わず彼の匂いをそっと吸い込んでしまう。

 涼さんは私の背中をトントンと叩いたあと、体を離した。

「俺も風呂に入ってくるね」

 そう言って彼は部屋を出て廊下を歩いていく。

 彼の後ろ姿を見て、私はギュッとルームウェアの生地を握り、赤面して覚悟を固めていったのだった。





 涼さんがバスルームに向かったあと、添い寝する覚悟でベッドルームに向かったけれど、先にベッドに入っているなんて図々しいので、バルコニーの近くにある一人掛けのリクライニングソファに座った。

 窓の外はすっかり夜で、東京タワーの見える高級マンションにいるなんて嘘みたいだ。

(本当にこの家に住んでいいんだろうか)

 怒濤の展開で連絡を忘れていたけれど、朱里にメッセージを送ってみる事にした。

(夜だし、篠宮さんとイチャイチャしてるかな)

 とは言っても、まだ遅い時間じゃないから大丈夫とは思うけど。

【私、恵ちゃん。いま涼さんの家にいるの】

 メリーさんジョークを飛ばすと、すぐに既読がつき、キャラクターがゲラゲラ笑っているスタンプが送られてくる。

【どんな感じ?】

【外商がきて沢山買い物されて、いいお肉食べさせてもらった】

 すると朱里は【!!】とキャラクターが目をまん丸にして驚いているスタンプを送る。

【凄いね! 囲い込みに入ってるね! 尊さんは『本気出したか』って言ってるよ】

 やっぱり本気なのか……。

【篠宮さんに、涼さんって他の女性にもこういう事をした事があるか、聞いてくれる?】

 すると少し間が空いてから返事がくる。

【家に上げてそこまでやった人はいないって。付き合った女性にブランドバッグとかコスメとか買ってあげた事はあるけど、お店に行っての出来事だって。尊さんが知ってる限り、女性を家に上げた事はないみたいだよ】

「……ふーん……」

 私は呟き、ギュッと膝を抱える。

【同棲したいって言ってる。ご家族にも会わせたいって。……信じていいのかな?】

 いつになく弱気なメッセージを送ると、朱里はキャラクターがゴリマッチョになったスタンプを送ってきた。

 この子はちょいちょい、スタンプのチョイスが変だ。

【親友の尊さんの太鼓判だよ。絶対大丈夫。慣れてないから怖いと思うけど、飛び込んでみようよ。私も尊さんは二人目の彼氏で、最初は本当に愛してくれるか分からなくて不安だったけど、とてもいい人だし好きになってもらえてラッキーだった】

 朱里は一生懸命自分の気持ちを伝えてくれる。

【恵はとってもいい子だよ。性格が良くて友達想いで、裏表がなくて信じられる。涼さん、ランドでも恵を気に入ってたでしょ? 尊さんも『珍しい』って言ってたし、大丈夫だよ。涼さんは嫌なセレブじゃないし、絶対に裏切らない。もしもの事があっても、酷く傷つける事はしないって思ってる】

 朱里の見解は、私とほぼ同じだ。

 分かっていたけれど、背中を押してもらいたかったのかもしれない。

【……うん。ありがとう。信じてみようと思う】

 そう送ると、朱里は立て続けにキャラクターがハートマークを飛ばしているスタンプや、【ファイト!】と力こぶを作るスタンプを送ってきた。

 私も【がんばります】というスタンプを送り、一旦会話を終わりにする。

(……あ。Eカップになったって報告するの忘れてた。……あとでいっか)

 私はスマホを置き、涼さんが戻ってくるまでソファの上で膝を抱え、ぼんやりと夜景を見ていた。





「お待たせ」

 ボーッとしていると涼さんの声が聞こえ、私はピクッと肩を跳ねさせて振り向く。

 ドライヤーの音も聞こえていたはずなのに、どうやら思考に没頭していたようだ。

「……お、お帰りなさい」

 おずおずと言うと、涼さんはクシャッと笑って「こういうの、いいね」と言った。

 そのあと、彼は小首を傾げて微笑み尋ねてきた。

「一緒に寝ても大丈夫そう?」

「……はい」

 その問いに、私は顔を真っ赤にして頷いた。
感想 2,814

あなたにおすすめの小説

休めよ〜1ヶ月ぶりに帰ってきた彼が、玄関で離してくれない〜

ぐぬ
恋愛
1、2週間のはずが、1ヶ月になった。 チェーンロックの隙間から、いつもの声がした。 「おかえり」と言い切る前に、抱きしめられた。 知っている匂いと、知らない匂いが混じっていた。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

うちに待望の子供が産まれた…けど

satomi
恋愛
セント・ルミヌア王国のウェーリキン侯爵家に双子で生まれたアリサとカリナ。アリサは黒髪。黒髪が『不幸の象徴』とされているセント・ルミヌア王国では疎まれることとなる。対してカリナは金髪。家でも愛されて育つ。二人が4才になったときカリナはアリサを自分の侍女とすることに決めた(一方的に)それから、両親も家での事をすべてアリサ任せにした。 デビュタントで、カリナが皇太子に見られなかったことに腹を立てて、アリサを勘当。隣国へと国外追放した。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! ✽全28話完結 ✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 ✽他誌にも掲載中です。 ✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。 →表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

消灯〜出向先で出会った彼には、来月婚約の発表がある〜

ぐぬ
恋愛
出向先で隣に座る彼は、静かな人だった。 毎朝、何も言わずにカフェオレを置いていく。 来月、婚約の発表があると聞いた。 「これで、おわり」 最終日だけ、ブラックコーヒーが置いてあった。