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不穏 編
「絶対に助ける」
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私は心の中で強く願ったあと、尊さんが電話に出たあとの第一声をごまかすために、大きな声を上げた。
「離して! この変態! あんた達なんて尊さんがやっつけてくれるんだから!」
「暴れるな!」
男たちが私を押さえつけようとしたけれど、可能な限り暴れてやった。
そのうち私は両側にいる男に押さえられ、フーッフーッと息を乱して座らされる。
車の中にいる人、全員が目出し帽を被って誰が誰だか分からない。
「……要求はなに? お金?」
尋ねたけれど、彼らは目的地に着くまで口を開くつもりはないようだった。
**
出かけたばかりの朱里から電話があり、俺は「はい」と電話に応じる。
《離して! この変態! あんた達なんて尊さんがやっつけてくれるんだから!》
――と、朱里の悲鳴が聞こえて、全身から血の気が引いた。
誘拐された?
慌ててもう一台のスマホを開いて、アプリ『YOU』で朱里の位置情報を確認すると、車に乗せられたのか、距離がグングンと離れていっている。
心臓が嫌な音を立てて鳴るなか、俺は冷静に今の状況を分析する。
朱里は中村さんから連絡があった事に、何の疑いも抱いていなかった。
中村さんのアカウントに問題がないのだとすれば、誰かが彼女のスマホを使った事になる。
俺はすぐに涼に電話を掛けた。
平日の夜なら、接待などがない限り自宅で寛いでいるはずだ。
《もしもし》
すぐに涼が電話に出て、俺は少し安堵してからなるべく冷静に話した。
「涼。緊急事態だ。朱里が何者かに攫われた。中村さんのスマホが奪われ、使われた可能性が高いから、彼女の家まで行って安否確認をしてほしい」
《――――、分かった。警察に連絡したか?》
「これからだ」
《俺のほうから融通の利く人に話しておく。尊の連絡先を教えるから、そのチームと連携をとってくれ》
「分かった。恩に着る。朱里の位置情報は把握しているから、すぐに車に乗って追いかける」
《了解。気をつけろよ》
電話を切ったあと、俺は万が一の事を考え、専用のベルトを着けて警棒を仕込み、スタンガンもポケットにしまう。
これらは銃刀法違反にはならず、身を守る時用に使うなら問題のない物だ。
以前に護身教室に通った時、警棒を使っての戦い方などを教えてもらったので、ある程度なら自分一人でも戦う事はできるはずだ。
装備を人に見られないようにスプリングコートを羽織ったあと、俺は車のキーを持って家を出て、地下駐車場へ向かった。
朱里が危険に晒されていると思うと、恐ろしくて手が震えてしまう。
――もう絶対に、大切な人を失いたくない。
「絶対に助ける」
俺は『YOU』の画面を出したままスマホをセットし、ハンドルを握ってアクセルを踏んだ。
**
尊から連絡を受けた俺は、すぐに車に飛び乗って恵ちゃんの家へ向かった。
車で向かって五十分近くの間、生きた心地がしなくて自分が呼吸しているかすらも分からなかった。
駐禁をとられても構わないと思い、ビルの前で車を停め、階段を駆け上がる。
オートロックすらないセキュリティにもの申したくなるが、彼女の無事を確認したあとにきちんと話し合わなければ。
二階とは聞いていたが、何号室かまでは知らない。
我ながら怪しいと思いながら、二階にある家のドアノブを片っ端から静かに回し、開けようと試みた。
やがて――。
……ガチャリ、とドアが開いた家があり、心臓がドキンッと跳ね上がる。
恐る恐る中を覗き込むと、家の中は真っ暗だ。
スマホのライトをつけて中を照らすと――、玄関に恵ちゃんが倒れていた。
「恵ちゃん! 恵ちゃん!」
声を掛け彼女の体を揺さぶると、「…………ん……」と彼女がうめく声が聞こえ、力が抜ける。
「……涼……さん……?」
ひとまず無事らしい彼女の声を聞き、俺は息を震わせながら吐き、彼女を抱き締めた。
「離して! この変態! あんた達なんて尊さんがやっつけてくれるんだから!」
「暴れるな!」
男たちが私を押さえつけようとしたけれど、可能な限り暴れてやった。
そのうち私は両側にいる男に押さえられ、フーッフーッと息を乱して座らされる。
車の中にいる人、全員が目出し帽を被って誰が誰だか分からない。
「……要求はなに? お金?」
尋ねたけれど、彼らは目的地に着くまで口を開くつもりはないようだった。
**
出かけたばかりの朱里から電話があり、俺は「はい」と電話に応じる。
《離して! この変態! あんた達なんて尊さんがやっつけてくれるんだから!》
――と、朱里の悲鳴が聞こえて、全身から血の気が引いた。
誘拐された?
慌ててもう一台のスマホを開いて、アプリ『YOU』で朱里の位置情報を確認すると、車に乗せられたのか、距離がグングンと離れていっている。
心臓が嫌な音を立てて鳴るなか、俺は冷静に今の状況を分析する。
朱里は中村さんから連絡があった事に、何の疑いも抱いていなかった。
中村さんのアカウントに問題がないのだとすれば、誰かが彼女のスマホを使った事になる。
俺はすぐに涼に電話を掛けた。
平日の夜なら、接待などがない限り自宅で寛いでいるはずだ。
《もしもし》
すぐに涼が電話に出て、俺は少し安堵してからなるべく冷静に話した。
「涼。緊急事態だ。朱里が何者かに攫われた。中村さんのスマホが奪われ、使われた可能性が高いから、彼女の家まで行って安否確認をしてほしい」
《――――、分かった。警察に連絡したか?》
「これからだ」
《俺のほうから融通の利く人に話しておく。尊の連絡先を教えるから、そのチームと連携をとってくれ》
「分かった。恩に着る。朱里の位置情報は把握しているから、すぐに車に乗って追いかける」
《了解。気をつけろよ》
電話を切ったあと、俺は万が一の事を考え、専用のベルトを着けて警棒を仕込み、スタンガンもポケットにしまう。
これらは銃刀法違反にはならず、身を守る時用に使うなら問題のない物だ。
以前に護身教室に通った時、警棒を使っての戦い方などを教えてもらったので、ある程度なら自分一人でも戦う事はできるはずだ。
装備を人に見られないようにスプリングコートを羽織ったあと、俺は車のキーを持って家を出て、地下駐車場へ向かった。
朱里が危険に晒されていると思うと、恐ろしくて手が震えてしまう。
――もう絶対に、大切な人を失いたくない。
「絶対に助ける」
俺は『YOU』の画面を出したままスマホをセットし、ハンドルを握ってアクセルを踏んだ。
**
尊から連絡を受けた俺は、すぐに車に飛び乗って恵ちゃんの家へ向かった。
車で向かって五十分近くの間、生きた心地がしなくて自分が呼吸しているかすらも分からなかった。
駐禁をとられても構わないと思い、ビルの前で車を停め、階段を駆け上がる。
オートロックすらないセキュリティにもの申したくなるが、彼女の無事を確認したあとにきちんと話し合わなければ。
二階とは聞いていたが、何号室かまでは知らない。
我ながら怪しいと思いながら、二階にある家のドアノブを片っ端から静かに回し、開けようと試みた。
やがて――。
……ガチャリ、とドアが開いた家があり、心臓がドキンッと跳ね上がる。
恐る恐る中を覗き込むと、家の中は真っ暗だ。
スマホのライトをつけて中を照らすと――、玄関に恵ちゃんが倒れていた。
「恵ちゃん! 恵ちゃん!」
声を掛け彼女の体を揺さぶると、「…………ん……」と彼女がうめく声が聞こえ、力が抜ける。
「……涼……さん……?」
ひとまず無事らしい彼女の声を聞き、俺は息を震わせながら吐き、彼女を抱き締めた。
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