510 / 779
四人でのお泊まり会 編
母への連絡
しおりを挟む
「そんないいのに……。カップ麺でもあったら食べるのに。ねー」
「うん」
私は恵と顔を見合わせて頷く。
……と、尊さんがギュッと抱き締めてきた。
「ん?」
目を瞬かせると、彼はよしよしと私の頭を撫で、背中をポンポンする。
「お熱う事で……、わっ」
恵が茶々を入れようとした時、涼さんが彼女を抱き締め、同様によしよし撫でた。
「……何はともあれ、二人とも回復して良かったよ。表面上の元気かもしれないし、今回みたいな事をされたらトラウマになると思う。でも、これからは俺たちがしっかり守っていくから、安心してくれ」
尊さんは私を抱き締めたまま、私と恵に言う。
私たちはそれぞれ抱き締められたまま、ちょっと照れて赤面しつつもコクンと頷いた。
「よし、じゃあ、そろそろ寝ようか。引っ越しのほうは明日の午前中から動いてもらうつもりだけど、鍵を預かってもいいかな? 俺の秘書が現場監督をするから、防犯的な意味での心配はしなくていい」
涼さんの言葉を聞き、恵は微妙な表情になる。
「……でも、衣類とか、男性に触られるとちょっと……な物もありますし」
「家の内部の細々とした物は女性スタッフにやってもらって、大きな物や力仕事は男性に任せる事になってる。……どう?」
「ん……、うん……、それなら……」
恵は渋々という表情で頷くけれど、彼女の気持ちは分かる。
私はインフルで倒れていた時に恵から『どうせ引っ越しするんだし、荷物を纏めておこうか?』と提案を受けて、母にも含めてお願いし、元気になったら自分も参加して引っ越した感じだ。
その時は信頼している恵と母だから荷物を任せられたけれど、他人だったらちょっと抵抗があったかもしれない。
「恵、佳苗さんにも現場監督してもらったら?」
佳苗さんとは、恵のお母さんの名前だ。
彼女はスラッとした美人で、学生時代はバスケットボールをやっていたらしい。
大学生時代にスカウトされてモデルになり、今もミセスモデルとしてあちこちで活躍している格好いい人だ。
お母さんがそういう人だから、恵もファッションに興味を持つかと思えばそうではなく、佳苗さんはよく『恵がお洋服着てくれない』とごねている。
そんな佳苗さんと涼さん、果たしてどんな化学反応を起こすのか……。
私が考えている間、恵はようやく母親の存在を思いだしたのか、「あ、そうだね」と頷く。
けれどハッとしたあと、軽く目を見開いたまま、ギギ……と涼さんを振り向いた。
「お母さんがいらっしゃるなら、仕事の合間を見て抜け出して、ご挨拶しないとね。大事な娘さんと同棲させてもらうんだし」
「んああああああ……!」
ニッコニコの涼さんの言葉を聞き、恵は絞り出すような声を上げた。
「ま……、待ってください!? 本人不在の時に親に挨拶は卑怯じゃないですか?」
「侍の闘いじゃないんだから、卑怯もなんもないよ」
私は涼さんの腕の中でプンスコしている恵を見て、ニチャア……と笑う。
(そうかそうか、涼さんと二人の時はこういう感じなんだね……。恵……)
恵はそんな私に気づかず、スマホに手を延ばして、トトト……とメッセージを打っていく。
(佳苗さん! お宅のお嬢さんが大物彼氏をGETしましたよ~! ピラルクーレベルですよ~! いや、ジンベエザメ! 食べられちゃう!)
私は尊さんの腕の中でニコニコしながら、心の中で佳苗さんに向かって叫ぶ。
「恵、なんてメッセージしたの?」
尋ねると、彼女は非常に渋い顔で言う。
「『一身上の都合で引っ越す事にしました』。……わっ、早っ」
言うやいなや恵のスマホが震え、彼女は嫌そうな顔で画面を見る。
「いきなりだし、佳苗さん、心配してるでしょ」
「……まぁ、ね……」
恵が溜め息をついた時、今度は電話がかかってきた。
「諦めて全部白状しなよ」
「うん……、そうなんだけど……」
恵は非常に気乗りしない顔で、また重たい溜め息をつく。
「もしもし、お母さん?」
電話に出た彼女は、かったるそうに話し始め、涼さんの腕の中からすり抜けると、話ながらコソコソとリビングの隅へ向かう。
「~~~~だから、一身上の都合で……。引っ越し代とか次の物件とかは、……あー、大丈夫だから……」
説明下手な恵が困っていたところ、涼さんはスタスタ歩いて彼女に近づき、ヒョイッとその手からスマホをとり「もしもし」と電話に出てしまった。
「うん」
私は恵と顔を見合わせて頷く。
……と、尊さんがギュッと抱き締めてきた。
「ん?」
目を瞬かせると、彼はよしよしと私の頭を撫で、背中をポンポンする。
「お熱う事で……、わっ」
恵が茶々を入れようとした時、涼さんが彼女を抱き締め、同様によしよし撫でた。
「……何はともあれ、二人とも回復して良かったよ。表面上の元気かもしれないし、今回みたいな事をされたらトラウマになると思う。でも、これからは俺たちがしっかり守っていくから、安心してくれ」
尊さんは私を抱き締めたまま、私と恵に言う。
私たちはそれぞれ抱き締められたまま、ちょっと照れて赤面しつつもコクンと頷いた。
「よし、じゃあ、そろそろ寝ようか。引っ越しのほうは明日の午前中から動いてもらうつもりだけど、鍵を預かってもいいかな? 俺の秘書が現場監督をするから、防犯的な意味での心配はしなくていい」
涼さんの言葉を聞き、恵は微妙な表情になる。
「……でも、衣類とか、男性に触られるとちょっと……な物もありますし」
「家の内部の細々とした物は女性スタッフにやってもらって、大きな物や力仕事は男性に任せる事になってる。……どう?」
「ん……、うん……、それなら……」
恵は渋々という表情で頷くけれど、彼女の気持ちは分かる。
私はインフルで倒れていた時に恵から『どうせ引っ越しするんだし、荷物を纏めておこうか?』と提案を受けて、母にも含めてお願いし、元気になったら自分も参加して引っ越した感じだ。
その時は信頼している恵と母だから荷物を任せられたけれど、他人だったらちょっと抵抗があったかもしれない。
「恵、佳苗さんにも現場監督してもらったら?」
佳苗さんとは、恵のお母さんの名前だ。
彼女はスラッとした美人で、学生時代はバスケットボールをやっていたらしい。
大学生時代にスカウトされてモデルになり、今もミセスモデルとしてあちこちで活躍している格好いい人だ。
お母さんがそういう人だから、恵もファッションに興味を持つかと思えばそうではなく、佳苗さんはよく『恵がお洋服着てくれない』とごねている。
そんな佳苗さんと涼さん、果たしてどんな化学反応を起こすのか……。
私が考えている間、恵はようやく母親の存在を思いだしたのか、「あ、そうだね」と頷く。
けれどハッとしたあと、軽く目を見開いたまま、ギギ……と涼さんを振り向いた。
「お母さんがいらっしゃるなら、仕事の合間を見て抜け出して、ご挨拶しないとね。大事な娘さんと同棲させてもらうんだし」
「んああああああ……!」
ニッコニコの涼さんの言葉を聞き、恵は絞り出すような声を上げた。
「ま……、待ってください!? 本人不在の時に親に挨拶は卑怯じゃないですか?」
「侍の闘いじゃないんだから、卑怯もなんもないよ」
私は涼さんの腕の中でプンスコしている恵を見て、ニチャア……と笑う。
(そうかそうか、涼さんと二人の時はこういう感じなんだね……。恵……)
恵はそんな私に気づかず、スマホに手を延ばして、トトト……とメッセージを打っていく。
(佳苗さん! お宅のお嬢さんが大物彼氏をGETしましたよ~! ピラルクーレベルですよ~! いや、ジンベエザメ! 食べられちゃう!)
私は尊さんの腕の中でニコニコしながら、心の中で佳苗さんに向かって叫ぶ。
「恵、なんてメッセージしたの?」
尋ねると、彼女は非常に渋い顔で言う。
「『一身上の都合で引っ越す事にしました』。……わっ、早っ」
言うやいなや恵のスマホが震え、彼女は嫌そうな顔で画面を見る。
「いきなりだし、佳苗さん、心配してるでしょ」
「……まぁ、ね……」
恵が溜め息をついた時、今度は電話がかかってきた。
「諦めて全部白状しなよ」
「うん……、そうなんだけど……」
恵は非常に気乗りしない顔で、また重たい溜め息をつく。
「もしもし、お母さん?」
電話に出た彼女は、かったるそうに話し始め、涼さんの腕の中からすり抜けると、話ながらコソコソとリビングの隅へ向かう。
「~~~~だから、一身上の都合で……。引っ越し代とか次の物件とかは、……あー、大丈夫だから……」
説明下手な恵が困っていたところ、涼さんはスタスタ歩いて彼女に近づき、ヒョイッとその手からスマホをとり「もしもし」と電話に出てしまった。
696
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。
音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。
見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。
だが、それではいけないと奮闘するのだが……
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末
黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。
※設定はふわふわ。
※予告なく修正、加筆する場合があります。
※いずれ他サイトにも転載予定。
※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる