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義母となる人への誓い
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「いらっしゃいませ、三日月さま」
予約はしてあるんだろうけれど、私たちはそのまま個室に案内された。
レストランは一軒家で、窓からは整えられた中庭が見える。
ウエディングなどもやっているらしく、ライトアップされたそこはとても美しい。
私たちはギャルソンに椅子を引かれて席につき、飲み物を頼む。
佳苗さんは高級シャンパンやワインに慣れているらしく、メニューを見て「やーん、どれにしよう」とテンションを上げ、私と恵はチラッと視線を交わしたあと、大人しくジュースを頼む事にした。
何のコースにするかは涼さんに一任し、食べられない物、アレルギーなどを確認したあと、私たちは乾杯する事にした。
乾杯といっても何に乾杯すれば……と思っていたら、涼さんはニコッと笑ってこう言った。
「恵ちゃんと朱里ちゃんの命が無事だった事、恵ちゃんと俺の同棲に」
彼らしい言い方を聞いて私たちは笑顔になり、グラスをそっと合わせて乾杯する。
そのあとはフィンガーフードから始まり、グラスに入ったグリーンピースのムースと海老、コンソメのジュレのアミューズブーシュが出された。
佳苗さんは終始明るく振る舞っているけれど、何回も恵を見ている。
性格的に泣いて無事を喜ぶ事はしないのかもしれないけれど、娘を気にし続けているのは確かだ。
彼女は恵より自分の感情をストレートに表すけれど、照れ屋というか、肝心なところは隠してしまうところは恵に似ているなと感じた。
「……美味しい……」
お上品な料理をちまちまと食べていると、あの事件が遠い日の出来事に思える。
着飾って、大好きな婚約者と親友たちとミシュランの星つきレストランにいる。
なのに昨日の夜、私は誘拐されて昭人に叩かれ、恵も巻き込み皆に迷惑をかけた。
(……凄く、色んなものが乖離しているように思える)
佳苗さんは料理の感想や、尊さんや涼さんがイケメンだという事、レストランが素晴らしいという事や、自分の仕事の話などを饒舌に語り、絶え間なく話題を振っていた。
多分、そうする事でせっかくの料理を食べているのに、暗い雰囲気になる事を避けているのだろう。
お陰でそのあとに続くアスパラをメインにした前菜、魚料理、肉料理、デセールを食べ、濃くて美味しいコーヒーと小菓子を口にする頃にはお腹一杯になったのも相まって、ポヤポヤと幸せな気持ちになっていた。
その時になって、涼さんが佳苗さんに話しかけた。
「改めまして、恵さんと同棲させてください。結婚を前提にした真剣なお付き合いをし、今回のような事が起こらないよう、守り抜きます」
彼の言葉を聞き、佳苗さんは微笑む。
「私は反対しません。今日お会いしたばかりだけど、あなたは何も悪くないのに、恵が事件に遭った事をあんなにも悔いてくれた。母親として、その姿を見られただけで十分です。夫や息子たちが何か言うでしょうけど、反対するようなら私が説得します。……何より、恵がここまで男性に心を開いたところを見たのは初めてです。結婚という現実を見据えて漠然とした事は言いたくありませんが、お互い運命だったのかもしれませんね」
母の言葉を聞き、恵は赤面して俯いている。
「……ですが、一つだけ約束してください。涼さんがとても凄い方だという事は、お宅を拝見しただけで分かりました。名刺に書かれてあった役職や、ご実家も本当なのでしょう。……恵は現代のシンデレラになってしまったわけですが、……どうかこの子を悲しませるような事はしないでください」
「誓っていたしません。家族や周囲の者たちからも絶対に守ります」
恵は自分の母親が涼さんを責めているように思ったのか、不安そうな表情で二人を見守っていた。
「僕の家族は常識的な人だと思っています、今までお嬢様と呼ばれる人との縁談がなかったわけではありませんが、僕の気持ち的な問題で断り続けてきました。本当に好きな人が現れたら結婚したいと思い、三十五歳になるまでは待ってもらうつもりでいました。ここで僕が恵さんを家族に紹介したとして、ドラマや映画で出てくるような意地悪な事を言う人たちではないと断言できます」
佳苗さんは、断言した涼さんをジッと見つめる。
「恵さんと結婚したとして、経営者など、いわゆる富裕層と呼ばれる人たちとの付き合いがあるのは否めません。ですが、僕の母や姉、妹は恵さんに作法や心構えなどを教え、味方になってくれる人たちだと確信しています」
涼さんは真剣な表情で佳苗さんを見つめ、言い切る。
「もしも僕が約束を違え、恵さんを不幸にする事が不安だと仰るなら、契約書を書きます。恵さんも僕と付き合うのが不安だったようなので、決して彼女を害さないという内容を書いた契約書を用意させていただきました」
恵が涼さんと付き合うにあたって、不安に思った気持ちは分かる。
私だって篠宮家や速水家と関わると知った時、雲上人に馬鹿にされないか、それこそシンデレラみたいに嫌がらせをされないか、不安だったもの。
涼さんはやや緊張した面持ちで、さらに言った。
予約はしてあるんだろうけれど、私たちはそのまま個室に案内された。
レストランは一軒家で、窓からは整えられた中庭が見える。
ウエディングなどもやっているらしく、ライトアップされたそこはとても美しい。
私たちはギャルソンに椅子を引かれて席につき、飲み物を頼む。
佳苗さんは高級シャンパンやワインに慣れているらしく、メニューを見て「やーん、どれにしよう」とテンションを上げ、私と恵はチラッと視線を交わしたあと、大人しくジュースを頼む事にした。
何のコースにするかは涼さんに一任し、食べられない物、アレルギーなどを確認したあと、私たちは乾杯する事にした。
乾杯といっても何に乾杯すれば……と思っていたら、涼さんはニコッと笑ってこう言った。
「恵ちゃんと朱里ちゃんの命が無事だった事、恵ちゃんと俺の同棲に」
彼らしい言い方を聞いて私たちは笑顔になり、グラスをそっと合わせて乾杯する。
そのあとはフィンガーフードから始まり、グラスに入ったグリーンピースのムースと海老、コンソメのジュレのアミューズブーシュが出された。
佳苗さんは終始明るく振る舞っているけれど、何回も恵を見ている。
性格的に泣いて無事を喜ぶ事はしないのかもしれないけれど、娘を気にし続けているのは確かだ。
彼女は恵より自分の感情をストレートに表すけれど、照れ屋というか、肝心なところは隠してしまうところは恵に似ているなと感じた。
「……美味しい……」
お上品な料理をちまちまと食べていると、あの事件が遠い日の出来事に思える。
着飾って、大好きな婚約者と親友たちとミシュランの星つきレストランにいる。
なのに昨日の夜、私は誘拐されて昭人に叩かれ、恵も巻き込み皆に迷惑をかけた。
(……凄く、色んなものが乖離しているように思える)
佳苗さんは料理の感想や、尊さんや涼さんがイケメンだという事、レストランが素晴らしいという事や、自分の仕事の話などを饒舌に語り、絶え間なく話題を振っていた。
多分、そうする事でせっかくの料理を食べているのに、暗い雰囲気になる事を避けているのだろう。
お陰でそのあとに続くアスパラをメインにした前菜、魚料理、肉料理、デセールを食べ、濃くて美味しいコーヒーと小菓子を口にする頃にはお腹一杯になったのも相まって、ポヤポヤと幸せな気持ちになっていた。
その時になって、涼さんが佳苗さんに話しかけた。
「改めまして、恵さんと同棲させてください。結婚を前提にした真剣なお付き合いをし、今回のような事が起こらないよう、守り抜きます」
彼の言葉を聞き、佳苗さんは微笑む。
「私は反対しません。今日お会いしたばかりだけど、あなたは何も悪くないのに、恵が事件に遭った事をあんなにも悔いてくれた。母親として、その姿を見られただけで十分です。夫や息子たちが何か言うでしょうけど、反対するようなら私が説得します。……何より、恵がここまで男性に心を開いたところを見たのは初めてです。結婚という現実を見据えて漠然とした事は言いたくありませんが、お互い運命だったのかもしれませんね」
母の言葉を聞き、恵は赤面して俯いている。
「……ですが、一つだけ約束してください。涼さんがとても凄い方だという事は、お宅を拝見しただけで分かりました。名刺に書かれてあった役職や、ご実家も本当なのでしょう。……恵は現代のシンデレラになってしまったわけですが、……どうかこの子を悲しませるような事はしないでください」
「誓っていたしません。家族や周囲の者たちからも絶対に守ります」
恵は自分の母親が涼さんを責めているように思ったのか、不安そうな表情で二人を見守っていた。
「僕の家族は常識的な人だと思っています、今までお嬢様と呼ばれる人との縁談がなかったわけではありませんが、僕の気持ち的な問題で断り続けてきました。本当に好きな人が現れたら結婚したいと思い、三十五歳になるまでは待ってもらうつもりでいました。ここで僕が恵さんを家族に紹介したとして、ドラマや映画で出てくるような意地悪な事を言う人たちではないと断言できます」
佳苗さんは、断言した涼さんをジッと見つめる。
「恵さんと結婚したとして、経営者など、いわゆる富裕層と呼ばれる人たちとの付き合いがあるのは否めません。ですが、僕の母や姉、妹は恵さんに作法や心構えなどを教え、味方になってくれる人たちだと確信しています」
涼さんは真剣な表情で佳苗さんを見つめ、言い切る。
「もしも僕が約束を違え、恵さんを不幸にする事が不安だと仰るなら、契約書を書きます。恵さんも僕と付き合うのが不安だったようなので、決して彼女を害さないという内容を書いた契約書を用意させていただきました」
恵が涼さんと付き合うにあたって、不安に思った気持ちは分かる。
私だって篠宮家や速水家と関わると知った時、雲上人に馬鹿にされないか、それこそシンデレラみたいに嫌がらせをされないか、不安だったもの。
涼さんはやや緊張した面持ちで、さらに言った。
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