【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
532 / 778
副社長秘書の試練 編

社食での会話

しおりを挟む
「まぁ、明日、女子会で教えてもらうから」

 ニコニコして言うと、恵は疲れたように肩を落とす。

「……朱里って結構、私の恋バナについて粘度が高いよね。もっとサラッとしてるもんだと思った」

「んー? だって、最愛の親友に好きな人ができたんだよ? 嬉しいじゃん。恵が男の人を意識してる姿、想像の百倍以上可愛いし、そういう姿を見られるのも嬉しい」

「そんなもんかねぇ……」

 恵はお味噌汁を飲み、漬物をコリコリと食べる。

「……まぁ、そこまで私の動向を気にしてくれているのは、ありがたいけど」

「恵がデレた!」

「そういうトコだよ」

 私が喜ぶと、恵はガクリと項垂れた。

「……春日さんと〝彼〟のその後も聞かないとだしね」

 恵に言われ、私は「うんうん」と頷く。

「結構積極的にいってたから、もう何回かはデートしてるんだろうね。私、恋愛には疎いから〝普通〟が分からないけど、男って女からグイグイこられたら引くもんだと思ってた。自分がリードしたがる生き物っていうか……、そう考えていた所があったから」

 恵の言葉を聞き、私は頷く。

「〝彼〟みたいなスパダリ系って、自分から好きになった人にはグイグイいくかもしれないけど、逆に好きになられたら、様子を見るとは思うんだよね。我々のオーナーみたいに、優良物件すぎて逆に誰を選んだらいいか分からない、むしろ不信感があるっていう人だと、春日さんみたいな人に迫られた場合『良さそうだけど、駄目だった場合、お互いの家柄的に大事故を起こしそうだから、じっくり見極めよう』ってなるんじゃないかな。うまく相性が合えば願ったり叶ったりだから、決して彼女のグイグイを嫌がる事はないと思う」

「そっかー。……っていうか〝オーナー〟って」

 恵はボソッと突っ込み、魚の続きに取りかかる。

 私はそんな彼女をパシャッと写真に撮り、ちょちょっと明度や彩度を弄って見やすくしたあと、周囲にモザイクをかけて涼さんに送っておく。

「何? 今の」

「オーナーに送っておいた」

「もおお……! そういう事をする奴はこうだ!」

 恵はパスタを巻いて口に入れようとしている私を激写し、同様にして恐らく尊さんに送る。

 その時、クスクスッと笑う声が聞こえて、私は目を瞬かせる。

 社食にいるんだから色んな人が談笑しているのは当然だけど、その声には嫌な感情が籠もっているように感じられたので、目立って聞こえたんだと思う。

 左右をキョロキョロして声の主を探すと、少し離れた所に、以前お手洗いで私に「ブス」と言った総務部の人たちを見つけた。

 彼女たちは明らかにこちらを見てヒソヒソ言い、嫌な笑い方をしている。

「どした? 朱里」

 食べる手を止めた私を見て、恵がいぶかしげに話しかけてくる。

「……ううん」

 平静を装ってパスタの続きに取りかかったけれど、彼女は私の視線の先を見て溜め息をついた。

「ああ、あいつらね。あんまり気にしたら駄目だよ」

「うん、分かってる」

「綾子さんも〝総務部のブス〟って言ってたし」

「んふっ」

 私は思わずパスタに噎せかけ、慌てて咳払いをする。

「朱里はそのまま、結婚して幸せになる事を考えな? 商品開発部の皆には公認になってるし、その話も広まってると思う。……まぁ、だからああいうのが沸いてくると思うけど、全員から好かれる、応援されるなんてないからね?」

「うん」

 親友から冷静に言われると、胸の中に広がったモヤモヤとした黒い感情が収まっていく。

「朱里は複数対一の卑怯な状況で悪口を言われて、凄くムカついてると思う。最低限の事は言い返せたみたいだけど、トイレでのその状況はどう見ても公平じゃない。所詮、あいつらは自分たちが優位に立てるステージでしか大きい口を叩けないんだよ。もし皆の見ている前なら、いい人ぶって『私、悪口なんて言いませーん』って顔をするに決まってるし」

 私はパスタを平らげ、サラダを食べながら頷く。

「綾子さんが言ってたけど、総務部では腫れ物扱いされてるみたいだし、周りの人も〝分かってる〟と思うよ。それにまともな人は『人の悪口を言う人と関わりたくない』って思うもの。……まぁ、ラッキーガールの朱里を羨ましく思う人は他にもいるだろうけど、まともな人は攻撃なんてしない。それ以上になんとも思っていない人が多いだろうし、気にすんな」

「ん、ありがとう」

 不思議と、尊さんがここにいても同じ事を言っていると確信した。

 それだけ、私の側にいる人たちは考え方が大人なんだろう。

 だから、私も彼らの恋人、友達として情けない真似はしないでおこうと思えた。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...