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副社長秘書の試練 編
社食での会話
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「まぁ、明日、女子会で教えてもらうから」
ニコニコして言うと、恵は疲れたように肩を落とす。
「……朱里って結構、私の恋バナについて粘度が高いよね。もっとサラッとしてるもんだと思った」
「んー? だって、最愛の親友に好きな人ができたんだよ? 嬉しいじゃん。恵が男の人を意識してる姿、想像の百倍以上可愛いし、そういう姿を見られるのも嬉しい」
「そんなもんかねぇ……」
恵はお味噌汁を飲み、漬物をコリコリと食べる。
「……まぁ、そこまで私の動向を気にしてくれているのは、ありがたいけど」
「恵がデレた!」
「そういうトコだよ」
私が喜ぶと、恵はガクリと項垂れた。
「……春日さんと〝彼〟のその後も聞かないとだしね」
恵に言われ、私は「うんうん」と頷く。
「結構積極的にいってたから、もう何回かはデートしてるんだろうね。私、恋愛には疎いから〝普通〟が分からないけど、男って女からグイグイこられたら引くもんだと思ってた。自分がリードしたがる生き物っていうか……、そう考えていた所があったから」
恵の言葉を聞き、私は頷く。
「〝彼〟みたいなスパダリ系って、自分から好きになった人にはグイグイいくかもしれないけど、逆に好きになられたら、様子を見るとは思うんだよね。我々のオーナーみたいに、優良物件すぎて逆に誰を選んだらいいか分からない、むしろ不信感があるっていう人だと、春日さんみたいな人に迫られた場合『良さそうだけど、駄目だった場合、お互いの家柄的に大事故を起こしそうだから、じっくり見極めよう』ってなるんじゃないかな。うまく相性が合えば願ったり叶ったりだから、決して彼女のグイグイを嫌がる事はないと思う」
「そっかー。……っていうか〝オーナー〟って」
恵はボソッと突っ込み、魚の続きに取りかかる。
私はそんな彼女をパシャッと写真に撮り、ちょちょっと明度や彩度を弄って見やすくしたあと、周囲にモザイクをかけて涼さんに送っておく。
「何? 今の」
「オーナーに送っておいた」
「もおお……! そういう事をする奴はこうだ!」
恵はパスタを巻いて口に入れようとしている私を激写し、同様にして恐らく尊さんに送る。
その時、クスクスッと笑う声が聞こえて、私は目を瞬かせる。
社食にいるんだから色んな人が談笑しているのは当然だけど、その声には嫌な感情が籠もっているように感じられたので、目立って聞こえたんだと思う。
左右をキョロキョロして声の主を探すと、少し離れた所に、以前お手洗いで私に「ブス」と言った総務部の人たちを見つけた。
彼女たちは明らかにこちらを見てヒソヒソ言い、嫌な笑い方をしている。
「どした? 朱里」
食べる手を止めた私を見て、恵がいぶかしげに話しかけてくる。
「……ううん」
平静を装ってパスタの続きに取りかかったけれど、彼女は私の視線の先を見て溜め息をついた。
「ああ、あいつらね。あんまり気にしたら駄目だよ」
「うん、分かってる」
「綾子さんも〝総務部のブス〟って言ってたし」
「んふっ」
私は思わずパスタに噎せかけ、慌てて咳払いをする。
「朱里はそのまま、結婚して幸せになる事を考えな? 商品開発部の皆には公認になってるし、その話も広まってると思う。……まぁ、だからああいうのが沸いてくると思うけど、全員から好かれる、応援されるなんてないからね?」
「うん」
親友から冷静に言われると、胸の中に広がったモヤモヤとした黒い感情が収まっていく。
「朱里は複数対一の卑怯な状況で悪口を言われて、凄くムカついてると思う。最低限の事は言い返せたみたいだけど、トイレでのその状況はどう見ても公平じゃない。所詮、あいつらは自分たちが優位に立てるステージでしか大きい口を叩けないんだよ。もし皆の見ている前なら、いい人ぶって『私、悪口なんて言いませーん』って顔をするに決まってるし」
私はパスタを平らげ、サラダを食べながら頷く。
「綾子さんが言ってたけど、総務部では腫れ物扱いされてるみたいだし、周りの人も〝分かってる〟と思うよ。それにまともな人は『人の悪口を言う人と関わりたくない』って思うもの。……まぁ、ラッキーガールの朱里を羨ましく思う人は他にもいるだろうけど、まともな人は攻撃なんてしない。それ以上になんとも思っていない人が多いだろうし、気にすんな」
「ん、ありがとう」
不思議と、尊さんがここにいても同じ事を言っていると確信した。
それだけ、私の側にいる人たちは考え方が大人なんだろう。
だから、私も彼らの恋人、友達として情けない真似はしないでおこうと思えた。
ニコニコして言うと、恵は疲れたように肩を落とす。
「……朱里って結構、私の恋バナについて粘度が高いよね。もっとサラッとしてるもんだと思った」
「んー? だって、最愛の親友に好きな人ができたんだよ? 嬉しいじゃん。恵が男の人を意識してる姿、想像の百倍以上可愛いし、そういう姿を見られるのも嬉しい」
「そんなもんかねぇ……」
恵はお味噌汁を飲み、漬物をコリコリと食べる。
「……まぁ、そこまで私の動向を気にしてくれているのは、ありがたいけど」
「恵がデレた!」
「そういうトコだよ」
私が喜ぶと、恵はガクリと項垂れた。
「……春日さんと〝彼〟のその後も聞かないとだしね」
恵に言われ、私は「うんうん」と頷く。
「結構積極的にいってたから、もう何回かはデートしてるんだろうね。私、恋愛には疎いから〝普通〟が分からないけど、男って女からグイグイこられたら引くもんだと思ってた。自分がリードしたがる生き物っていうか……、そう考えていた所があったから」
恵の言葉を聞き、私は頷く。
「〝彼〟みたいなスパダリ系って、自分から好きになった人にはグイグイいくかもしれないけど、逆に好きになられたら、様子を見るとは思うんだよね。我々のオーナーみたいに、優良物件すぎて逆に誰を選んだらいいか分からない、むしろ不信感があるっていう人だと、春日さんみたいな人に迫られた場合『良さそうだけど、駄目だった場合、お互いの家柄的に大事故を起こしそうだから、じっくり見極めよう』ってなるんじゃないかな。うまく相性が合えば願ったり叶ったりだから、決して彼女のグイグイを嫌がる事はないと思う」
「そっかー。……っていうか〝オーナー〟って」
恵はボソッと突っ込み、魚の続きに取りかかる。
私はそんな彼女をパシャッと写真に撮り、ちょちょっと明度や彩度を弄って見やすくしたあと、周囲にモザイクをかけて涼さんに送っておく。
「何? 今の」
「オーナーに送っておいた」
「もおお……! そういう事をする奴はこうだ!」
恵はパスタを巻いて口に入れようとしている私を激写し、同様にして恐らく尊さんに送る。
その時、クスクスッと笑う声が聞こえて、私は目を瞬かせる。
社食にいるんだから色んな人が談笑しているのは当然だけど、その声には嫌な感情が籠もっているように感じられたので、目立って聞こえたんだと思う。
左右をキョロキョロして声の主を探すと、少し離れた所に、以前お手洗いで私に「ブス」と言った総務部の人たちを見つけた。
彼女たちは明らかにこちらを見てヒソヒソ言い、嫌な笑い方をしている。
「どした? 朱里」
食べる手を止めた私を見て、恵がいぶかしげに話しかけてくる。
「……ううん」
平静を装ってパスタの続きに取りかかったけれど、彼女は私の視線の先を見て溜め息をついた。
「ああ、あいつらね。あんまり気にしたら駄目だよ」
「うん、分かってる」
「綾子さんも〝総務部のブス〟って言ってたし」
「んふっ」
私は思わずパスタに噎せかけ、慌てて咳払いをする。
「朱里はそのまま、結婚して幸せになる事を考えな? 商品開発部の皆には公認になってるし、その話も広まってると思う。……まぁ、だからああいうのが沸いてくると思うけど、全員から好かれる、応援されるなんてないからね?」
「うん」
親友から冷静に言われると、胸の中に広がったモヤモヤとした黒い感情が収まっていく。
「朱里は複数対一の卑怯な状況で悪口を言われて、凄くムカついてると思う。最低限の事は言い返せたみたいだけど、トイレでのその状況はどう見ても公平じゃない。所詮、あいつらは自分たちが優位に立てるステージでしか大きい口を叩けないんだよ。もし皆の見ている前なら、いい人ぶって『私、悪口なんて言いませーん』って顔をするに決まってるし」
私はパスタを平らげ、サラダを食べながら頷く。
「綾子さんが言ってたけど、総務部では腫れ物扱いされてるみたいだし、周りの人も〝分かってる〟と思うよ。それにまともな人は『人の悪口を言う人と関わりたくない』って思うもの。……まぁ、ラッキーガールの朱里を羨ましく思う人は他にもいるだろうけど、まともな人は攻撃なんてしない。それ以上になんとも思っていない人が多いだろうし、気にすんな」
「ん、ありがとう」
不思議と、尊さんがここにいても同じ事を言っていると確信した。
それだけ、私の側にいる人たちは考え方が大人なんだろう。
だから、私も彼らの恋人、友達として情けない真似はしないでおこうと思えた。
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