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日常へ 編
うまくいかないな
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「尊さんの前で、見せつけるように跨がってやるの」
「……おい、人形でも許さん」
尊さん頬をムニーッと引っ張られた私は、クスクス笑う。
「……難しいですね。……言っときますけど、私、性欲が強い訳じゃないですからね? ……甘えたいだけ。尊さんに甘えられて、あなたには私だけって思えるなら、エッチできなくたっていいの」
「……俺も同じだよ。年中朱里がほしいけど、性欲を満たしたいからじゃない。……お前が愛しい。言葉が足りない分、触って、撫でて、全部俺のものだって確認したいんだ」
「……もしかして、両想い?」
わざとおどけて言うと、尊さんはギューッと私を抱き締めて溜め息をついた。
「このおちょくり猫は、どうしてやろうかな……」
「んふふふ……。かわゆいでしょう。愛でてもいいんですよ?」
「いっつも愛でてるだろ」
尊さんは優しい声で言い、私を振り向かせるとキスをしてくる。
「ん……」
柔らかい唇が重なり、はむ、はむ、と啄み合う。
はしたない事に尊さんとキスしていると思うだけで、興奮して頭がボーッとしてしまい、私はとろんとした気持ちのまま彼の唇を求めた。
――安心する。
大好きな人とくっついて、唇を合わせているだけで、こんなにも気持ちが満たされる。
私たちはそのあとも、しばらく優しいキスをし続けた。
尊さんは十分に私の唇を堪能して顔を離し、フハッと笑う。
「なんて顔してるんだよ」
「うう……」
多分、あまりに気持ち良くて、目を潤ませてポーッとしていたんだと思う。
恥ずかしくなって尊さんの胸板に顔を押しつけると、「そろそろ出るか」と背中をトントンされた。
体を拭いたあと、髪をヘアターバンに押し込んでフェイスケアをしていると、身支度を終えた尊さんが「失礼いたします」と声を作って私の体にボディ用化粧水を塗ってきた。
「んふ……っ、くすぐったい」
「お嬢様、淫らな気持ちになってはいけませんよ。私はただお世話をしているだけなのですから」
「やだー、ミコ執事萌える……」
「失礼いたします」
ミコ執事はもう一度断りを入れてから、ボディクリームを塗ってきた。
その間、フェイスケアを終えた私は、ヘアミルクを揉み込んでいた髪にドライヤーをかけ、乾かしていく。
洗面所はボウルが二つ、コンセントもそれに応じて配置されているので、尊さんはもう一台のドライヤーですでに髪を乾かし、準備万端だ。
顔につける物が多かったり、フェイスマッサージしたりしているから、私のお風呂上がりのあれこれは長い。
「ん……」
ミコ執事の不埒な手は、ボディクリームを塗りながら私のお尻を撫で、胸を揉んでくる。
「エッチしないなら、エッチな事しないで」
赤面しつつ少しむくれて言うと、尊さんはピタリと手を止めて「悪い」と呟いた。
そのあと彼は丁寧に腕や足の裏までボディクリームを塗ってくれ、手を洗う。
「冷たいもん用意しとくな」
彼はそう言って洗面所を出て行き、私は鏡の中の自分を見つめる。
「……変な空気になっちゃった」
自分でもどうしたらいいか分からないし、尊さんだって複雑な気持ちになっているのに、我が儘を言ったらいけない。
分かっているのに、どうしても気持ちが溢れてしまう。
「……うまくいかないな」
私たちは両想いでこれから結婚するのに、どうしてかスッキリしない気持ちのままだ。
(でも結婚したあとも、何かがあって気まずくなる事はあるだろうし、こんな事で落ち込んでたら駄目だ)
私は自分に言い聞かせ、ドライヤーをしまうと抜け毛の掃除をし、一つ溜め息をついてから洗面所を出た。
お風呂から出て冷たい麦茶を飲んだあと、体の火照りが冷めるまでテレビを見たりスマホを弄ったりして過ごし、寝る事にした。
(……変な空気になったし、自分の部屋で寝たほうがいいのかな)
そう思って電気の消えたリビングから自室に向かおうとすると、尊さんにグイッと腕を引かれた。
「どこ行くんだ」
「……おい、人形でも許さん」
尊さん頬をムニーッと引っ張られた私は、クスクス笑う。
「……難しいですね。……言っときますけど、私、性欲が強い訳じゃないですからね? ……甘えたいだけ。尊さんに甘えられて、あなたには私だけって思えるなら、エッチできなくたっていいの」
「……俺も同じだよ。年中朱里がほしいけど、性欲を満たしたいからじゃない。……お前が愛しい。言葉が足りない分、触って、撫でて、全部俺のものだって確認したいんだ」
「……もしかして、両想い?」
わざとおどけて言うと、尊さんはギューッと私を抱き締めて溜め息をついた。
「このおちょくり猫は、どうしてやろうかな……」
「んふふふ……。かわゆいでしょう。愛でてもいいんですよ?」
「いっつも愛でてるだろ」
尊さんは優しい声で言い、私を振り向かせるとキスをしてくる。
「ん……」
柔らかい唇が重なり、はむ、はむ、と啄み合う。
はしたない事に尊さんとキスしていると思うだけで、興奮して頭がボーッとしてしまい、私はとろんとした気持ちのまま彼の唇を求めた。
――安心する。
大好きな人とくっついて、唇を合わせているだけで、こんなにも気持ちが満たされる。
私たちはそのあとも、しばらく優しいキスをし続けた。
尊さんは十分に私の唇を堪能して顔を離し、フハッと笑う。
「なんて顔してるんだよ」
「うう……」
多分、あまりに気持ち良くて、目を潤ませてポーッとしていたんだと思う。
恥ずかしくなって尊さんの胸板に顔を押しつけると、「そろそろ出るか」と背中をトントンされた。
体を拭いたあと、髪をヘアターバンに押し込んでフェイスケアをしていると、身支度を終えた尊さんが「失礼いたします」と声を作って私の体にボディ用化粧水を塗ってきた。
「んふ……っ、くすぐったい」
「お嬢様、淫らな気持ちになってはいけませんよ。私はただお世話をしているだけなのですから」
「やだー、ミコ執事萌える……」
「失礼いたします」
ミコ執事はもう一度断りを入れてから、ボディクリームを塗ってきた。
その間、フェイスケアを終えた私は、ヘアミルクを揉み込んでいた髪にドライヤーをかけ、乾かしていく。
洗面所はボウルが二つ、コンセントもそれに応じて配置されているので、尊さんはもう一台のドライヤーですでに髪を乾かし、準備万端だ。
顔につける物が多かったり、フェイスマッサージしたりしているから、私のお風呂上がりのあれこれは長い。
「ん……」
ミコ執事の不埒な手は、ボディクリームを塗りながら私のお尻を撫で、胸を揉んでくる。
「エッチしないなら、エッチな事しないで」
赤面しつつ少しむくれて言うと、尊さんはピタリと手を止めて「悪い」と呟いた。
そのあと彼は丁寧に腕や足の裏までボディクリームを塗ってくれ、手を洗う。
「冷たいもん用意しとくな」
彼はそう言って洗面所を出て行き、私は鏡の中の自分を見つめる。
「……変な空気になっちゃった」
自分でもどうしたらいいか分からないし、尊さんだって複雑な気持ちになっているのに、我が儘を言ったらいけない。
分かっているのに、どうしても気持ちが溢れてしまう。
「……うまくいかないな」
私たちは両想いでこれから結婚するのに、どうしてかスッキリしない気持ちのままだ。
(でも結婚したあとも、何かがあって気まずくなる事はあるだろうし、こんな事で落ち込んでたら駄目だ)
私は自分に言い聞かせ、ドライヤーをしまうと抜け毛の掃除をし、一つ溜め息をついてから洗面所を出た。
お風呂から出て冷たい麦茶を飲んだあと、体の火照りが冷めるまでテレビを見たりスマホを弄ったりして過ごし、寝る事にした。
(……変な空気になったし、自分の部屋で寝たほうがいいのかな)
そう思って電気の消えたリビングから自室に向かおうとすると、尊さんにグイッと腕を引かれた。
「どこ行くんだ」
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