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記憶喪失を乗り越え、幸せへ
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その後、蜜月を過ごしながら、クライヴは事件の後始末に追われた。
ニコラスは自身の宣言と教会側の通告により、司祭を辞めた。しかし信仰は深くあるので、どこか遠く小さな場所で神父をすることとなった。
オーガストは新しく司祭となった者と、協力し合って信頼を失った教会をもり立ててゆくのに奔走している。
義父となる人物が新しくなるのも、また心労があるのだろう。
クライヴとモニカに宛てられた手紙には、『しばらく仕事が忙しいから、社交界での恋は当分遠慮しておく。ヴィンセント王妃陛下においては、新国王陛下とどうぞ仲睦まじく』と書いてあった。
根が真面目な彼のことだから、すべてが心からの言葉なのだろう。
だからこそクライヴはその言葉を信じ、彼を本当に幸せにしてくれる女性が現れるのを祈っていた。
同じようにモニカも、幼なじみが幸せになることを願った。
ウィドリントン王国とヴィンセント王国は、それぞれモニカが被害を受けたということ、ウィドリントンの隊列が襲われたということで、教会と長い話し合いを設けることとなる。
モニカ個人は「すべて解決したので、大事にしなくていい」と思っている。
だが、彼女は一国の王女で、今や王妃だ。
経度にしてもケガをさせ、下手をすれば大きな事故になって暗殺にもなっていたかもしれないことに、両国の立場としては安易に首を縦に振れない。
両国にとって、モニカは重要な存在なのだ。
かといって、信心深い人々と教会を切り離しては生きていけない。
ニコラス司祭の提案で建立しようという案があった教会は、勿論着工を止めた。
結果的にウィドリントンとヴィンセントの両国が、教会への寄付金を一定期間減額するということや、様々なペナルティを課して話し合いは落ち着きそうな気配となった。
挙式から数か月経ち、クライヴとモニカは相変わらずいちゃいちゃしている。
クライヴの父は床から起きられなくなり、ゆるゆると元気をなくしている様子だった。しかい彼の調子がいい時に二人で顔を見せると、嬉しそうな顔をするのだった。
新国王体制になり、クライヴも日々忙しくしている。
が、それを脇から支え、閨で疲れを癒やすモニカがいるからこそ、彼も国のために粉骨砕身して働くのだった。
そして夏至の祭りの時に、モニカが懐妊したとの発表が出た。
人々は世継ぎの誕生を歓び、周辺国からも祝いの文書、献上品などが送られてくる。
「色々あったけれど……。記憶を失った一部もすべて、私の人生なのだわ」
少しふっくらとした腹をクライヴに撫でられつつ、ゆったりとしたドレス姿でモニカが言う。
「そうだな。俺はいま忙しくしているが、ほぼ何もしていなかった子供時代を思っても、きっと無駄な時間なんて何もなかったんだ。その時間があったからこそ、今の俺がいて君と過ごせられている」
優しくキスをすると、金髪を緩く三つ編みにしたモニカは母性の混じった笑みを返す。
「あなたとなら、これから先もずっとずっと……。幸せに生きていけるわ。もちろん、この子も。次の子も」
「おや、俺の妻は次の子のことも考えてくれているんだな。夫として頑張らねば」
「ふふ、やだもう」
背後から優しく抱きしめられ、モニカはテラスから月を見上げる。
風に乗って庭園の花々の香りがしたが、もう彼女を脅かすものは何もない――。
完
ニコラスは自身の宣言と教会側の通告により、司祭を辞めた。しかし信仰は深くあるので、どこか遠く小さな場所で神父をすることとなった。
オーガストは新しく司祭となった者と、協力し合って信頼を失った教会をもり立ててゆくのに奔走している。
義父となる人物が新しくなるのも、また心労があるのだろう。
クライヴとモニカに宛てられた手紙には、『しばらく仕事が忙しいから、社交界での恋は当分遠慮しておく。ヴィンセント王妃陛下においては、新国王陛下とどうぞ仲睦まじく』と書いてあった。
根が真面目な彼のことだから、すべてが心からの言葉なのだろう。
だからこそクライヴはその言葉を信じ、彼を本当に幸せにしてくれる女性が現れるのを祈っていた。
同じようにモニカも、幼なじみが幸せになることを願った。
ウィドリントン王国とヴィンセント王国は、それぞれモニカが被害を受けたということ、ウィドリントンの隊列が襲われたということで、教会と長い話し合いを設けることとなる。
モニカ個人は「すべて解決したので、大事にしなくていい」と思っている。
だが、彼女は一国の王女で、今や王妃だ。
経度にしてもケガをさせ、下手をすれば大きな事故になって暗殺にもなっていたかもしれないことに、両国の立場としては安易に首を縦に振れない。
両国にとって、モニカは重要な存在なのだ。
かといって、信心深い人々と教会を切り離しては生きていけない。
ニコラス司祭の提案で建立しようという案があった教会は、勿論着工を止めた。
結果的にウィドリントンとヴィンセントの両国が、教会への寄付金を一定期間減額するということや、様々なペナルティを課して話し合いは落ち着きそうな気配となった。
挙式から数か月経ち、クライヴとモニカは相変わらずいちゃいちゃしている。
クライヴの父は床から起きられなくなり、ゆるゆると元気をなくしている様子だった。しかい彼の調子がいい時に二人で顔を見せると、嬉しそうな顔をするのだった。
新国王体制になり、クライヴも日々忙しくしている。
が、それを脇から支え、閨で疲れを癒やすモニカがいるからこそ、彼も国のために粉骨砕身して働くのだった。
そして夏至の祭りの時に、モニカが懐妊したとの発表が出た。
人々は世継ぎの誕生を歓び、周辺国からも祝いの文書、献上品などが送られてくる。
「色々あったけれど……。記憶を失った一部もすべて、私の人生なのだわ」
少しふっくらとした腹をクライヴに撫でられつつ、ゆったりとしたドレス姿でモニカが言う。
「そうだな。俺はいま忙しくしているが、ほぼ何もしていなかった子供時代を思っても、きっと無駄な時間なんて何もなかったんだ。その時間があったからこそ、今の俺がいて君と過ごせられている」
優しくキスをすると、金髪を緩く三つ編みにしたモニカは母性の混じった笑みを返す。
「あなたとなら、これから先もずっとずっと……。幸せに生きていけるわ。もちろん、この子も。次の子も」
「おや、俺の妻は次の子のことも考えてくれているんだな。夫として頑張らねば」
「ふふ、やだもう」
背後から優しく抱きしめられ、モニカはテラスから月を見上げる。
風に乗って庭園の花々の香りがしたが、もう彼女を脅かすものは何もない――。
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