【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第四部・婚約 編

腹ごしらえ

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「か、格好いいです。目がとても綺麗な色をしています。あと、か、体が……イケメン」
「ねー、カスミ。それじゃあ外見目当てみたいだよ」

 向かいに座った片割れが、組んだ長い脚をブラブラと揺する。
 彼の青い目は楽しんでいるように細められ、からかわれているのが分かった。

「外見〝も〟素敵だって伝えたかったんです。何より一番に、本当に優しいんです。……大人だし、普通なら引いてしまうかもしれない私の重たい過去だって、受け入れてくれました」

 重たい過去と聞き、双子が「おや」というように眉を上げる。

「私、本当は佑さんみたいに完璧な人の恋人になるって、初めは怖かったです。でも彼も社会的地位や名声を取れば、普通の男の人です。ちょっとした事ですぐ嫉妬しますし、些細な事で喜んでくれる。何より、こんな私を全身全霊で好きだって態度でも言葉でも、すべてで表してくれるのが、とても嬉しいんです」
「ピュアだね」

 隣に座った片割れが、微笑んで香澄の髪を撫でてくる。

「私、佑さんが二人目に付き合った人です」
「「マジ?」」

 双子の声が見事にハモった。

「マジです。それに佑さんも、私には分からない女性遍歴があるんでしょうけれど、こんなにきちんと恋をしたのは初めてだって言ってくれています。私はそれを信じます。境遇も何もかも違って、二人とも手探りで恋をしていますが、見守って頂けると嬉しいです」

 香澄は立ち上がり、二人に向かってペコリと頭を下げた。
 ――と、その時。

「あっ!」

 声がして振り向くと、ドアの向こうに佑が立っていた。

「お前ら、さっそく何してくれてるんだ。とっとと三階戻って寝ろ」
「ぶー! いーじゃん! せっかくカスミとお近づきになってたのに」
「そうそう。カスミが如何にタスクを好きかって、聞かせてもらってたんだよ」
「そういうのは、俺が知っていればいいんだ」

 佑は室内に入ってきて、手で「しっしっ」と双子を払って追い出すジェスチャーをする。

「まー、今日は大人しく寝てやるよ」
「そう。これから時間はたっぷりあるしね」

 何とも不吉な事を言い、双子は香澄に「おやすみ!」と投げキスをして去って行った。
 自宅に帰ってまで緊張した気がし、香澄は知らずと息をつき肩を下ろす。

「なんか話し声がすると思ったら……。変な事されてないか?」
「ううん、大丈夫」
「寝る準備はできた?」
「うん」
「じゃあ、おいで」

 佑にトンと背中を叩かれ、香澄は彼と一緒に部屋を出る。
 廊下を歩いて佑の寝室まで向かう途中、遠くから双子の声が聞こえた。

(佑さんの従兄さんなら、印象良くしないと。仲良くなれたらいいな)

 大きなベッドにモソモソ潜り込むと、佑が抱き締めてきた。

「ん?」

 よしよしと彼の髪を撫でると、肩口でくぐもった声がする。

「そんな下着みたいな格好、奴らに見せたくなかった」
「あー……」

 言われて、香澄は苦笑いする。
 いつも寝る時はキャミソールにタップパンツなので、言われてみれば準下着のようなものだ。

(でも、キャミソールもソフトカップついてるしな……。ぽっちは見えなかったはず)

 テロリとした生地でレースのついた、セクシーでエレガントな物も着るが、今は軽い素材の可愛らしい印象の物だった。
 麻衣が泊まりに来た時などもずっとこの格好で、「意外と乙女っぽいよね」と言われたものだ。
 それに対し香澄の主張は、「寝る時ぐらい可愛い格好をしたい」である。

「まぁ、過ぎた事だし」

 ポンポンと佑の背中を叩くと、さらにギュッと抱き締められる。

「俺が嫌なんだ」
「んー……、ふふ……」

 佑の独占欲が嬉しく、香澄はクスクス笑う。
 そんな彼女の顔を覗き込んだ佑は、小さく溜め息をついてからチュッとキスをしてきた。

「寝ようか」
「うん」

 モソモソと体勢を整えると、先ほどの緊張もどこへやら、安心して目を閉じた。

**

 翌朝、ゆっくりした時間に双子が起きてきて、四人でパンやスープ、サラダなどを食べた。

 ランチを食べたあとは一路箱根に向かうので、着ていく服に悩む。
 長時間ドライブに適した、楽な格好でいたいが、あの面々で食事をするなら気の抜けた服は着られない。
 結局佑に相談した結果、シンプルなトープカラーのVネックニットに、白いテーパードパンツをはく事にした。
 首元には初めて佑と会った時に、誕生日プレゼントとしてもらったブルートパーズのペンダントをつけた。
 髪型にも悩んでいたが、佑がサイドの髪をねじって一つに纏めたあと、ブランド物のスカーフを華やかに結んでくれた。

 双子は自分たちもアパレル会社を経営しているため、口出ししたがっていたが、佑に採用されず終始ぶーたれていた。





 昼前になって家を出て、向かったのは東京タワー近くにある豆腐懐石料理店だ。

 純和風の外観は趣があり、提灯に毛筆の店名ロゴが描かれていて雰囲気がある。
 門をくぐると塀の内側に日本庭園が広がり、整えられた庭木や池が美しい。
 庭園には椿の木があり、苔に覆われた地面の上にわざと落ちた花をそのままにしていて、わびさびの美が感じられた。

(北海道では椿って見ないけど、本当に花のまま落ちるんだな……)

「雰囲気いいねー」と会話をしている双子たちも、気に入ったようで写真を撮っている。
 少し視線を上に向ければ東京タワーがそびえ立っていて、純和風と近代とが混在していて面白い。

「中も素敵……」

 店内に入ると伝統的な様式美と、近代の利便性を融合した作りになっていた。
 和風の照明に照らされた店内は少し薄暗く、その分日差しの当たっている庭園が窓からくっきりと見られた。

(なんか、京都にもこういう風にして窓の外の景色を楽しむお寺、あったっけ)

 通された個室は建物の角にあり、二面の壁が大きな窓になっていて美しい庭が望める。
 天上には組子細工の照明があり、赤い座布団が敷かれた座椅子が並べられ、掘りごたつになっている。
 テーブルの上には赤い乱引半月盆が人数分置かれ、箸や紙ナプキンなども用意されてあった。

「一番乗りみたいだね」
「うちは比較的近いからな」

 佑が適当と判断した席に座り、香澄はその隣に腰掛けた。
 佑もさすがにスーツでは来ておらず、黒いテーパードパンツにシャツとVネックのグレーニットを重ね着していた。
 着物を着たスタッフがお茶を運んできて、ドリンクメニューを出した。

「ソフトドリンクは……と」

 高級店、という感じの厚紙のメニューを見ていると、向かいにいる双子が声を上げる。

「えー? カスミ、ワインとか飲まないの?」
「シャンパンあるよ?」
「いやぁ、まだ昼間ですし。これからドライブにもなりますし、飲むとしたら安心できる夜に」

 パタパタと顔の前で手を振ると、双子は心底不思議そうな顔をした。

「お前らは酒に強くて水みたいに飲んでるだろうけど、日本人の〝普通〟は違うんだ。そこは強制するなよ」

 強制するなと言われては強く言えないようで、双子は「ふーん」とつまらなさそうに言って、ドリンクメニューを見ていた。
 やがて時間が近くなり、御劔家の面々やアドラーと節子もレストランに到着した。

(んんーっ! 節子さん、旅行にも着物!?)

 節子は今日もきっちりと着物を着ていて、香澄は内心驚いてしまう。
 彼女を凝視している視線でバレたのか、双子がケラケラ笑った。

「あはは! オーマが本当に年中着物でびっくりしたでしょ」
「は……はい。失礼ですが、疲れないんですか?」

 恐る恐る節子に尋ねると、柔和に微笑まれた。

「帯枕があるし、長時間移動の時は腰にクッションを当てているし、あとは慣れだわ」
「な、なるほど……」

 着物とは縁遠い香澄は、慣れと言われてしまえばそれまでだ。

(凄いなぁ……)

 そのあと先付から順番に料理が出され、豆腐料理の店らしく豆腐、湯葉料理、IHコンロでの引き上げ湯葉や和牛のしゃぶしゃぶなどが順番に出された。
 最後は一口サイズの米沢牛を石焼きで炙り、もう満腹になりかけたお腹に炊き込み御飯と味噌汁を入れる。
 節子は「美味しいわぁ」と終始笑顔で、最愛の妻が日本で日本食に満足しているのを見て、アドラーも機嫌が良さそうだ。
 柚子シャーベットを食べ終わったあとはお茶を飲んでしばし休み、それから各自の車に乗って箱根を目指す流れになった。

**
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