153 / 1,591
第四部・婚約 編
第四部・終章
しおりを挟む
だが、彼女の言う事ももっともだと思った。
そのようにして、御劔家とのランチは無事に終わった。
両親にも事の次第を電話で伝えると、両家の顔合わせは結婚式の具体的なスケジュールができたら、それに合わせて東京に来ると言ってくれた。
飛行機のチケットを手配する関係もあるので……、と両親が言っているのを佑も聞き、彼がプライベートジェットを出すと言ったのは想定内だ。
そのために、電話をする前にスピーカーで通話をするよう言われていた。
やがてGWが訪れたが、商業ビルは休みこそかき入れ時なのでイベントもあり大忙しだ。
佑は予定をずらして休暇を取る事にし、それを六月のドイツ行きに使う予定らしい。
ならば香澄も……となり、五月は一生懸命働いた。
その傍ら、ドイツ行きの準備を少しずつ進めていく。
移動は彼の飛行機だし、泊まる場所も問題ない。
けれど初めてのドイツ訪問なので、香澄はガイドブックを読んで何が美味しいのかなどをリサーチしていた。
**
一方ドイツのブルーメンブラットヴィルで、双子は一組の男女を前に酒を飲んでいた。
『そうなの。カイは結婚するのね』
リラックスしたワンピース姿でワインを飲んだのは、金髪碧眼の美女だ。
スレンダーで身長も高く、モデルと言っても通用しそうだ。
その隣に座っているのは、寡黙な印象のある焦げ茶色の髪にブルーアイの男性。
短髪の彼はTシャツにジーパンというシンプルな服装で、双子の自宅にいる。
『んまー、素直で純粋そうで可愛い子だよ。エミも気に入るんじゃないかな?』
『そうそう。妹分っていうか。まぁ、でもあいつと随分会ってないから、今さらっていう感じもあるけど』
ブルーメンブラットヴィルにある双子の家は立派な屋敷で、シャンデリアに照らされたリビングダイニングの窓の向こうでは、綺麗に整えられたバラや他の花々が咲いている。
勿論、双子が手入れをする訳がないので、庭師を雇って整えてもらっている。
『そんな事はないわ。私はいつでもカイを気にしていたもの』
先ほどからエミと呼ばれる彼女が口にしている〝カイ〟は、佑のドイツでの呼び名だ。
佑は生まれながらの日本人ではあるが、ドイツの血が混じっている事もあり、呼びやすいようにアドラーが名付けた名前である。
基本的にいつも使っていない名前なので、彼自身としても呼ばれて始めてその名前があったと思い出す程度だ。
日本にいる佑の事を、四人は話し、酒のつまみにしている。
『オーパが今度ドイツに来るよう誘ったって言ったから、気になるなら会ってみたら?』
『そうね。カイとは何年も会ってないけれど、私が会いたいって言って応じてくれるかしら?』
彼女の問いに、双子は顔を見合わせる。
『別に断る理由もないんじゃない? 一応、幼馴染み……なのか知らんけど、知り合いだし』
『でも……、可愛い婚約者さんがいるのよね? 彼女を紹介しにこっちに来たなら、私の事なんて眼中にないんじゃないかしら?』
『エミは美しいし、カイも今のあんたを見たら、会う気になるんじゃないか? メッセージかビデオチャットでもしてみたらどうだ?』
それまで沈黙を守っていた短髪の男性が言い、エミと呼ばれた女性はまんざらでもない微笑みを浮かべ、金髪を掻き上げる。
『そうかしら? でも、連絡先が変わってるかも分からないし。二人は知ってる?』
彼女が双子に尋ねると、彼らは同じタイミングで肩をすくめた。
『知ってるっちゃ知ってるけど、勝手に教えたら何か言われるかも』
『そうね……』
『なら、あいつがこっちに来た時に、不意打ちでホテルを突撃したら? 連絡先はちょっとアレだけど、僕らが会う時に一緒にエミも……ってなったら、断らないだろ』
『そうね。それがいいわ。お願いしてもいい?』
『勿論』
双子は自宅にあるビールサーバーから新しいビールを注ぎ、ゴッゴッ……と飲んでいく。
女性はライトアップされた庭に咲く薔薇を見て、ルージュを塗った唇を笑わせた。
『とても楽しみだわ』
彼女の呟きを、隣の席に座っている短髪の男性は黙って聞いていた。
第四部・完
――――――――――――
この辺から、旧バージョンの第二部に繋がります。
元の文章を現在の設定に合わせて直していくので、元の文章をそのまま使う部分もあり、多少読みづらさがあるかもしれません。
どうぞ宜しくお願い致します。
そのようにして、御劔家とのランチは無事に終わった。
両親にも事の次第を電話で伝えると、両家の顔合わせは結婚式の具体的なスケジュールができたら、それに合わせて東京に来ると言ってくれた。
飛行機のチケットを手配する関係もあるので……、と両親が言っているのを佑も聞き、彼がプライベートジェットを出すと言ったのは想定内だ。
そのために、電話をする前にスピーカーで通話をするよう言われていた。
やがてGWが訪れたが、商業ビルは休みこそかき入れ時なのでイベントもあり大忙しだ。
佑は予定をずらして休暇を取る事にし、それを六月のドイツ行きに使う予定らしい。
ならば香澄も……となり、五月は一生懸命働いた。
その傍ら、ドイツ行きの準備を少しずつ進めていく。
移動は彼の飛行機だし、泊まる場所も問題ない。
けれど初めてのドイツ訪問なので、香澄はガイドブックを読んで何が美味しいのかなどをリサーチしていた。
**
一方ドイツのブルーメンブラットヴィルで、双子は一組の男女を前に酒を飲んでいた。
『そうなの。カイは結婚するのね』
リラックスしたワンピース姿でワインを飲んだのは、金髪碧眼の美女だ。
スレンダーで身長も高く、モデルと言っても通用しそうだ。
その隣に座っているのは、寡黙な印象のある焦げ茶色の髪にブルーアイの男性。
短髪の彼はTシャツにジーパンというシンプルな服装で、双子の自宅にいる。
『んまー、素直で純粋そうで可愛い子だよ。エミも気に入るんじゃないかな?』
『そうそう。妹分っていうか。まぁ、でもあいつと随分会ってないから、今さらっていう感じもあるけど』
ブルーメンブラットヴィルにある双子の家は立派な屋敷で、シャンデリアに照らされたリビングダイニングの窓の向こうでは、綺麗に整えられたバラや他の花々が咲いている。
勿論、双子が手入れをする訳がないので、庭師を雇って整えてもらっている。
『そんな事はないわ。私はいつでもカイを気にしていたもの』
先ほどからエミと呼ばれる彼女が口にしている〝カイ〟は、佑のドイツでの呼び名だ。
佑は生まれながらの日本人ではあるが、ドイツの血が混じっている事もあり、呼びやすいようにアドラーが名付けた名前である。
基本的にいつも使っていない名前なので、彼自身としても呼ばれて始めてその名前があったと思い出す程度だ。
日本にいる佑の事を、四人は話し、酒のつまみにしている。
『オーパが今度ドイツに来るよう誘ったって言ったから、気になるなら会ってみたら?』
『そうね。カイとは何年も会ってないけれど、私が会いたいって言って応じてくれるかしら?』
彼女の問いに、双子は顔を見合わせる。
『別に断る理由もないんじゃない? 一応、幼馴染み……なのか知らんけど、知り合いだし』
『でも……、可愛い婚約者さんがいるのよね? 彼女を紹介しにこっちに来たなら、私の事なんて眼中にないんじゃないかしら?』
『エミは美しいし、カイも今のあんたを見たら、会う気になるんじゃないか? メッセージかビデオチャットでもしてみたらどうだ?』
それまで沈黙を守っていた短髪の男性が言い、エミと呼ばれた女性はまんざらでもない微笑みを浮かべ、金髪を掻き上げる。
『そうかしら? でも、連絡先が変わってるかも分からないし。二人は知ってる?』
彼女が双子に尋ねると、彼らは同じタイミングで肩をすくめた。
『知ってるっちゃ知ってるけど、勝手に教えたら何か言われるかも』
『そうね……』
『なら、あいつがこっちに来た時に、不意打ちでホテルを突撃したら? 連絡先はちょっとアレだけど、僕らが会う時に一緒にエミも……ってなったら、断らないだろ』
『そうね。それがいいわ。お願いしてもいい?』
『勿論』
双子は自宅にあるビールサーバーから新しいビールを注ぎ、ゴッゴッ……と飲んでいく。
女性はライトアップされた庭に咲く薔薇を見て、ルージュを塗った唇を笑わせた。
『とても楽しみだわ』
彼女の呟きを、隣の席に座っている短髪の男性は黙って聞いていた。
第四部・完
――――――――――――
この辺から、旧バージョンの第二部に繋がります。
元の文章を現在の設定に合わせて直していくので、元の文章をそのまま使う部分もあり、多少読みづらさがあるかもしれません。
どうぞ宜しくお願い致します。
53
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる