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第七部・双子襲来 編
双子とスーパーで買い物
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その日の朝食は予定通りそうめんにした。
双子が「これなら幾らでも入る」と言って何把茹でたか分からない。
「たった二分茹でて冷やすだけで、こんなに美味しい物が食べられるなんて、そうめんは神だ!」
とアロイスが言い、クラウスは早速ネットで高級そうめんを検索していた。
その後、プラプラと歩いて白金にあるスーパーへ向かい、餅を求める。
双子はショッピングカートを押してキャッキャと騒ぎ、目に付いた物すべて「安いね、買おうか」と言って手を伸ばすので、慌てて止めるの繰り返しだ。
「この牛肉で何か作って」と言われるなら買うのだが、目的もなく買いたがるので始末が悪い。
御劔邸の冷蔵庫が大きいとはいえ、業務用の冷蔵庫ではないし、斎藤の都合もある。
スーパー内には上品なマダムたちがいたが、全員見るも麗しい双子に視線をとられていた。
芸能人が現れるも珍しくない土地だが、まったく同じ顔をした美形の金髪碧眼双子というのはインパクトがあるのだろう。
その隣で香澄は、「今日はTシャツが白と黒だから、見分けがつきやすいな」とぼんやり思っている。
「お餅はお昼に食べますか? どう食べたいですか?」
「餅パーティーしよう!」
「あ、でも僕ゾウニも食べたいな。オーマが作ってくれるの美味しいんだ」
「分かりました。じゃあ三つ葉と柚子と……。つとは流石にこの時期ないですね。なるとを代用しましょう。椎茸は家にあったはず」
「ゾウニも日本各地で色んな食べ方あるんでしょ? 僕知ってる」
「そうですね。西日本では丸餅を使うとか、餡子の入ったお餅を入れる所もありますね。あとは味付けはすまし汁と白味噌に分かれてるっぽいです。お汁粉みたいな所もあるみたいで、面白いですよ」
「詳しいね! さすが俺のカスミ!」
アロイスに褒められ、香澄は「いえいえ」と手を振りつつ笑う。
「お餅が好きで、中学生頃にちょっと調べただけです」
「カスミはどういうのを作るの?」
「私は角餅を焼いて、すまし汁に椎茸と三つ葉、つとと柚子の皮を入れます。少なくとも札幌の実家でこう育ったので、これが普通だと思っていると言いますか……」
「ていうかさぁ。日本ってやっぱり多様性食文化ワールドだよね。祖国の悪口言う訳じゃないけど、ドイツいると大体ビール、ソーセージ、芋、芋、芋……だよな」
「Genau(それな)」
双子が頷き合い、「芋」がよほど面白かったのかケラケラと笑う。
「カスミもこのネタ覚えておきなよ。特にイタリア人とかにウケるよ」
「そうなんですか?」
確かにドイツはザワークラウトとマッシュポテトが必ず食事につくと聞くが、ヨーロッパの人の間でそれほど話題になっているのだろうか、と香澄は首を傾げる。
「一種の自虐ネタみたいになってるよね。大戦中、『この芋野郎』とか言われてたらしいよ」
「はぁー……。やっぱりジャガイモがよく採れるからですか? 札幌とミュンヘンが姉妹都市で、緯度も似ているんですよね?」
「そうそう。ドイツと芋は切り離せない感じだね」
「ふぅん……。大事な食料だったんですね。じゃあ、今晩肉じゃがとかにしますか? フライドポテトとか……」
「Nein!(ダメ!)せっかく日本に来たんだから、芋は忘れて日本の国際色ごちゃ混ぜな美味しいご飯が食べたいの」
「そうそう。オムライスとかたらこスパとか。日本ならではだよね」
「じゃあ、今晩オムライスにします?」
提案してみると、双子は顔を見合わせニパッと笑った。
「そうだね。外で食べるのもいつでもできるし。カスミの手料理食べさせてもらおう。で、後でタスクに自慢してやるんだ」
「もー……。それはいいですから」
何とか必要な物だけを購入した帰り道では、アロイスがエコバッグを持ってくれる。
「俺にエコバッグ持たせる女の子、世界中でカスミだけだよ」
「ご、ごめんなさい! 自分で持ちますから!」
香澄は慌てて彼の腕に手をやる。
先ほどは「俺が持つよ」と彼が申し出て、「悪いからいいです」と断ったものの、「こういうのは男に持たせておけばいいんだよ」と言われて持ってもらったのだが……。
「や、そうじゃなくて。それだけ自分がいい女だって自覚してね? っていうコト」
「はぁ……」
彼の言いたい事がよく分からないが、ひとまず頷いておく。
「カスミはこれだからなぁ~」
クラウスが意味ありげに笑い、アロイスもケタケタと笑う。
「タスクも苦労するな、こりゃ」
ジリジリと日差しが照りつける道を歩き、香澄は日傘の陰で首を傾げた。
**
双子が「これなら幾らでも入る」と言って何把茹でたか分からない。
「たった二分茹でて冷やすだけで、こんなに美味しい物が食べられるなんて、そうめんは神だ!」
とアロイスが言い、クラウスは早速ネットで高級そうめんを検索していた。
その後、プラプラと歩いて白金にあるスーパーへ向かい、餅を求める。
双子はショッピングカートを押してキャッキャと騒ぎ、目に付いた物すべて「安いね、買おうか」と言って手を伸ばすので、慌てて止めるの繰り返しだ。
「この牛肉で何か作って」と言われるなら買うのだが、目的もなく買いたがるので始末が悪い。
御劔邸の冷蔵庫が大きいとはいえ、業務用の冷蔵庫ではないし、斎藤の都合もある。
スーパー内には上品なマダムたちがいたが、全員見るも麗しい双子に視線をとられていた。
芸能人が現れるも珍しくない土地だが、まったく同じ顔をした美形の金髪碧眼双子というのはインパクトがあるのだろう。
その隣で香澄は、「今日はTシャツが白と黒だから、見分けがつきやすいな」とぼんやり思っている。
「お餅はお昼に食べますか? どう食べたいですか?」
「餅パーティーしよう!」
「あ、でも僕ゾウニも食べたいな。オーマが作ってくれるの美味しいんだ」
「分かりました。じゃあ三つ葉と柚子と……。つとは流石にこの時期ないですね。なるとを代用しましょう。椎茸は家にあったはず」
「ゾウニも日本各地で色んな食べ方あるんでしょ? 僕知ってる」
「そうですね。西日本では丸餅を使うとか、餡子の入ったお餅を入れる所もありますね。あとは味付けはすまし汁と白味噌に分かれてるっぽいです。お汁粉みたいな所もあるみたいで、面白いですよ」
「詳しいね! さすが俺のカスミ!」
アロイスに褒められ、香澄は「いえいえ」と手を振りつつ笑う。
「お餅が好きで、中学生頃にちょっと調べただけです」
「カスミはどういうのを作るの?」
「私は角餅を焼いて、すまし汁に椎茸と三つ葉、つとと柚子の皮を入れます。少なくとも札幌の実家でこう育ったので、これが普通だと思っていると言いますか……」
「ていうかさぁ。日本ってやっぱり多様性食文化ワールドだよね。祖国の悪口言う訳じゃないけど、ドイツいると大体ビール、ソーセージ、芋、芋、芋……だよな」
「Genau(それな)」
双子が頷き合い、「芋」がよほど面白かったのかケラケラと笑う。
「カスミもこのネタ覚えておきなよ。特にイタリア人とかにウケるよ」
「そうなんですか?」
確かにドイツはザワークラウトとマッシュポテトが必ず食事につくと聞くが、ヨーロッパの人の間でそれほど話題になっているのだろうか、と香澄は首を傾げる。
「一種の自虐ネタみたいになってるよね。大戦中、『この芋野郎』とか言われてたらしいよ」
「はぁー……。やっぱりジャガイモがよく採れるからですか? 札幌とミュンヘンが姉妹都市で、緯度も似ているんですよね?」
「そうそう。ドイツと芋は切り離せない感じだね」
「ふぅん……。大事な食料だったんですね。じゃあ、今晩肉じゃがとかにしますか? フライドポテトとか……」
「Nein!(ダメ!)せっかく日本に来たんだから、芋は忘れて日本の国際色ごちゃ混ぜな美味しいご飯が食べたいの」
「そうそう。オムライスとかたらこスパとか。日本ならではだよね」
「じゃあ、今晩オムライスにします?」
提案してみると、双子は顔を見合わせニパッと笑った。
「そうだね。外で食べるのもいつでもできるし。カスミの手料理食べさせてもらおう。で、後でタスクに自慢してやるんだ」
「もー……。それはいいですから」
何とか必要な物だけを購入した帰り道では、アロイスがエコバッグを持ってくれる。
「俺にエコバッグ持たせる女の子、世界中でカスミだけだよ」
「ご、ごめんなさい! 自分で持ちますから!」
香澄は慌てて彼の腕に手をやる。
先ほどは「俺が持つよ」と彼が申し出て、「悪いからいいです」と断ったものの、「こういうのは男に持たせておけばいいんだよ」と言われて持ってもらったのだが……。
「や、そうじゃなくて。それだけ自分がいい女だって自覚してね? っていうコト」
「はぁ……」
彼の言いたい事がよく分からないが、ひとまず頷いておく。
「カスミはこれだからなぁ~」
クラウスが意味ありげに笑い、アロイスもケタケタと笑う。
「タスクも苦労するな、こりゃ」
ジリジリと日差しが照りつける道を歩き、香澄は日傘の陰で首を傾げた。
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