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第九部・贖罪 編
タヌキの置物
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『あれは体の悪いところに煙をかけると、調子が良くなると言われているやつですね。本当は身を清めるためっぽいです』
『神社にある手を清めるのと同じようなものか』
『そうです。あと、私の事はもっと気軽に香澄と呼んでくださっていいですよ』
『ああ、分かった』
人でごったがえしているが、双子とマティアスは面白がって煙を浴びる。
香澄と佑も、人が大勢いるので押しのけて……とはいかないが、離れたところで浴びたつもりになっていた。
『手と口を清めておきましょうか』
手水舎に向かうと、香澄はバッグからタオルハンカチを取りだし、作法にのっとって手と口を清める。
マティアスが不思議そうに見ていたので、もう一度清めつつ丁寧に教えてあげた。
ハッとして北海道神宮でのお賽銭格差を思い出し、香澄は前もって意地を張りつつ言う。
『マティアスさん、お賽銭は五円でも十分気持ちがこもっていればいいんですからね。ほら、日本語でも〝ご縁があるように〟って言いますし』
懸命に小銭派を増やそうとしていると、アロイスがニヤッと笑ってマティアスの肩を組んだ。
『マティアス、金あるなら沢山落としてけよ。その金がこの寺を守り、存続させていくためのものになる。語呂合わせのいい小銭よりも、大金の方が寺だって嬉しいはずだって』
『……確かに、そうだな』
(あああ……!)
双子はたまにこうやって、よく分からない意地悪をする。
「香澄、気にするな。幾らだっていいんだよ」
「……そういう佑さんだって、惜しげもなく一万円入れるくせに……」
「…………幾らだっていいからな」
香澄を励ましたつもりが恨みがましく言われ、佑はもう一度同じ言葉を繰り返すと、ポンポンと頭を撫でてきた。
そして本堂でお参りをする。
ハッとマティアスを見ると、今にも柏手を打ちそうだったので、思わず腕に飛びついて止めた。
『お寺はパチパチしないんですよ』
『なるほど』
『お賽銭を入れて、合掌……両手を合わせて一礼、なむなむして最後に一礼です』
『理解した』
チラッと双子を見ると、「有名な寺だからご利益も大きいのかな」と言いつつやはり一万円札を入れている。佑もその隣で一万円札を入れ、静かに手を合わせていた。
(うう……。私は五円で初志貫徹だもん)
コソコソと小銭入れから五円玉を出し、香澄は自分もお賽銭を入れて参拝をした。
『さて、これからどこ行く? もう割と時間が遅いね?』
先にスカイツリーや併設した商業施設もまわったので、もう十八時近くなっている。
『じゃあー……。居酒屋でも行きましょうか。のんびりお酒飲みましょう』
ゆっくり歩き出しつつ、香澄はスマホでタヌキの信楽焼を置いてある居酒屋を検索しだす。
だがなかなかヒットしなくてうんうん唸っていると、佑が声を掛けてくれた。
「有楽町に知り合いがやっている居酒屋があるから、そこに行くか? 小さいが一応店先にタヌキの置物もあるし、個室があって落ち着く店なんだ」
「ぜひ! さすが佑さん!」
ぱぁっと顔を輝かせると、佑はまんざらでもない顔をする。
けれど、自分は秘書なのにこんなんじゃ駄目だな……と反省するのだった。
**
車で有楽町まで移動し、ビルを上がると、確かに店先にタヌキの置物がある。
『なるほど……』
マティアスがしゃがみ込み、しげしげとタヌキの置物を見つめ、撫で回す。
最後にスマホで色んな角度から写真を撮り、満足したようだ。
「いらっしゃいませ、御劔様」
店内は間接照明で照らされた、バーのように落ち着いた雰囲気だ。
男性が出てきて佑と挨拶をすると、「お席を用意してあります」と個室へ先導してくれた。
店内は全席個室が売りのようで、引き戸越しに人の笑い声などが聞こえるが、他の客と鉢合わせる確率が低くプライバシーが守られている。。
「わぁ、素敵」
通された個室は一番いい夜景が見える部屋らしい。
「香澄、どっちに座る?」
佑に言われ、香澄は窓側かドア側か一瞬迷う。
だが酒を飲むとトイレが近くなる事を考え、ドア側にしておいた。
隣には当たり前に佑が座り、向かいに双子、マティアスが座る。
双子はさっそくおしぼりで手を拭きつつ、メニューを広げて「何の酒にしよっかなぁ」と視線を走らせていた。
『神社にある手を清めるのと同じようなものか』
『そうです。あと、私の事はもっと気軽に香澄と呼んでくださっていいですよ』
『ああ、分かった』
人でごったがえしているが、双子とマティアスは面白がって煙を浴びる。
香澄と佑も、人が大勢いるので押しのけて……とはいかないが、離れたところで浴びたつもりになっていた。
『手と口を清めておきましょうか』
手水舎に向かうと、香澄はバッグからタオルハンカチを取りだし、作法にのっとって手と口を清める。
マティアスが不思議そうに見ていたので、もう一度清めつつ丁寧に教えてあげた。
ハッとして北海道神宮でのお賽銭格差を思い出し、香澄は前もって意地を張りつつ言う。
『マティアスさん、お賽銭は五円でも十分気持ちがこもっていればいいんですからね。ほら、日本語でも〝ご縁があるように〟って言いますし』
懸命に小銭派を増やそうとしていると、アロイスがニヤッと笑ってマティアスの肩を組んだ。
『マティアス、金あるなら沢山落としてけよ。その金がこの寺を守り、存続させていくためのものになる。語呂合わせのいい小銭よりも、大金の方が寺だって嬉しいはずだって』
『……確かに、そうだな』
(あああ……!)
双子はたまにこうやって、よく分からない意地悪をする。
「香澄、気にするな。幾らだっていいんだよ」
「……そういう佑さんだって、惜しげもなく一万円入れるくせに……」
「…………幾らだっていいからな」
香澄を励ましたつもりが恨みがましく言われ、佑はもう一度同じ言葉を繰り返すと、ポンポンと頭を撫でてきた。
そして本堂でお参りをする。
ハッとマティアスを見ると、今にも柏手を打ちそうだったので、思わず腕に飛びついて止めた。
『お寺はパチパチしないんですよ』
『なるほど』
『お賽銭を入れて、合掌……両手を合わせて一礼、なむなむして最後に一礼です』
『理解した』
チラッと双子を見ると、「有名な寺だからご利益も大きいのかな」と言いつつやはり一万円札を入れている。佑もその隣で一万円札を入れ、静かに手を合わせていた。
(うう……。私は五円で初志貫徹だもん)
コソコソと小銭入れから五円玉を出し、香澄は自分もお賽銭を入れて参拝をした。
『さて、これからどこ行く? もう割と時間が遅いね?』
先にスカイツリーや併設した商業施設もまわったので、もう十八時近くなっている。
『じゃあー……。居酒屋でも行きましょうか。のんびりお酒飲みましょう』
ゆっくり歩き出しつつ、香澄はスマホでタヌキの信楽焼を置いてある居酒屋を検索しだす。
だがなかなかヒットしなくてうんうん唸っていると、佑が声を掛けてくれた。
「有楽町に知り合いがやっている居酒屋があるから、そこに行くか? 小さいが一応店先にタヌキの置物もあるし、個室があって落ち着く店なんだ」
「ぜひ! さすが佑さん!」
ぱぁっと顔を輝かせると、佑はまんざらでもない顔をする。
けれど、自分は秘書なのにこんなんじゃ駄目だな……と反省するのだった。
**
車で有楽町まで移動し、ビルを上がると、確かに店先にタヌキの置物がある。
『なるほど……』
マティアスがしゃがみ込み、しげしげとタヌキの置物を見つめ、撫で回す。
最後にスマホで色んな角度から写真を撮り、満足したようだ。
「いらっしゃいませ、御劔様」
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男性が出てきて佑と挨拶をすると、「お席を用意してあります」と個室へ先導してくれた。
店内は全席個室が売りのようで、引き戸越しに人の笑い声などが聞こえるが、他の客と鉢合わせる確率が低くプライバシーが守られている。。
「わぁ、素敵」
通された個室は一番いい夜景が見える部屋らしい。
「香澄、どっちに座る?」
佑に言われ、香澄は窓側かドア側か一瞬迷う。
だが酒を飲むとトイレが近くなる事を考え、ドア側にしておいた。
隣には当たり前に佑が座り、向かいに双子、マティアスが座る。
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