【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
585 / 1,589
第十部・ニセコ 編

打撲

しおりを挟む
「0.2が妥当だと」
「そんなに小さいのか!」

 思わず佑は声を上げ、出雲も「らしいな」と不可解そうに頷く。
 そのあとピコンとまた通知音が鳴り、出雲が微笑む。

「『早く帰ってこい』だって。『浮気したら殺す』だって。はー、おっかねぇ」

 出雲は愛しそうに笑い、佑に向かってスマホをかざし何も言わずカシャッと写真を撮った。

「『こいつと一緒です』……、と」

 するとまたピコンと通知が鳴り、出雲が爆笑した。

「なんだ?」
「『彼女に逃げられて可哀想だから、慰めてさしあげろ』だってよ」

 佑は出雲の勝ち気な妻を思い浮かべ、苦々しい顔をするのだった。



**



「……あれ」

 香澄は目を開き、蛍光灯が眩しくて目を瞬かせる。

「香澄ちゃん! 気が付いた!?」

 聡子の声がして視界に彼女の顔が映り、秋成も顔を覗かせた。

「えっと……」

 ゆっくり起き上がって周りを確認すると、どうやらリビングのソファに寝かされていたらしい。

「えっと……、あ、あー……」

 階段から落ちた事を思い出し、「やってしまった」と情けなくなる。

(あれ? でも……)

 後ろから押されたような気がした。
 けれどあの時、二階は真っ暗で誰の部屋にも電気がついておらず、人の気配もなかった。

(神経質になりすぎて、被害妄想になってたのかな。あんまり考えすぎないようにしよう)

 溜め息をついて痛む頭を押さえると、聡子が心配してくる。

「具合悪くない? フラフラするとか」
「あー……、大丈夫、です」

「歩ける?」

 聡子は可哀想なぐらい狼狽していて、「申し訳ないな」と思いつつ香澄は立ち上がる。

「うん、足も捻ってないみたいです。ちょっとあちこち痛いけど、ただの打撲っぽいので大丈夫! もし後で痛みが酷くなったら、湿布をもらいます」

「勿論どうぞ! それでね……ほっぺが……」

 聡子が洗面所から手鏡を持ってきて、香澄に差し出す。

「ん? ……あー……」

 壁かどこかに顔から当たった時に打ったようで、頬骨の辺りが赤くなっている。

「女の子なのに……、病院行く? とりあえず気絶している間に冷やしておいたんだけど……」

 触れてみると、確かに感覚がないぐらい冷えている。

「や、きっとすぐ治ると思うので大丈夫です。ちょっとかっこ悪いから、ガーゼか何か当てておきますね」

 そう言うと聡子は「ガーゼ取ってくるわね!」と踵を返す。

「あ、いえ! その、ガーゼは外に出る時だけで大丈夫です。家の中は……その、いずいですしもったいないし」

 思わず方言であるいずい(しっくりこない、居心地が悪い)という言葉が出てしまうほど、香澄はまだ呆けていた。

「そう?」
「……俺はとりあえず栄子さんに報告しておく」

 ようやく安心しで、秋成が立ち上がった。

「あ、いえいえ! こんな遅い時間に電話かけたら、不幸があったのかってビックリしちゃうから。明日自分で『転んじゃった』って言いますから、大丈夫ですよ」

「……そうか?」

 夜中に電話があって不幸かと思い驚くのは、秋成も体験しているようだ。
 申し訳なさそうな顔をし、香澄の頬を見て溜め息をつく。

「やだなぁ、もう。大丈夫ですって! もう遅い時間ですし、寝ましょう」

 ピルケースを探すと、ちゃんとテーブルの上にあったので安心する。

「ちょっと、薬飲んできます」

 立ち上がって普通に台所まで向かうと、秋成も聡子も安心したようだ。

 カウンターに立つと、少し離れた場所に和也と真奈美が立っているが見えた。
 和也はこちらを見ているし、真奈美はそっぽを向いて黙っている。

 二人を見ると、また不安が押し寄せる。
 だが人を疑ってはいけないと思い、心の中で首を横に振った。

(大した怪我じゃないし、気にしない、気にしない! 明日からルカさんの所で過ごさせてもらうし、大丈夫!)

「お騒がせしてすみません。今日はもう寝ますね」

 ピルを飲んで時間を確認すれば、もう二十三時になろうとしている。
しおりを挟む
感想 575

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

密会~合コン相手はドS社長~

日下奈緒
恋愛
デザイナーとして働く冬佳は、社長である綾斗にこっぴどくしばかれる毎日。そんな中、合コンに行った冬佳の前の席に座ったのは、誰でもない綾斗。誰かどうにかして。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...