【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十四部・東京日常 編

いなくなった佑

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「まぶしいでしょ。私、見てくるから」

 香澄は佑の手から体温計を受け取り、部屋の外にでる。

「うそ……」

 体温計は39.7度を示していて、胸が痛くなる。

 香澄は慌てて佑のところに戻り、「インフルじゃないの?」と尋ねる。

「いや、夏だしインフルの可能性は低いと思う。熱が高かっただろ? 毎回そんなものだよ」

 そう言って佑は香澄に背中を向け、ゲホッと咳き込む。

「マスクくれるか? 香澄にうつしたくない。気持ちはありがたいけど、別室に避難していてくれないか?」

「でも……」

「お水飲もうか。水分取ったほうが、汗を掻いて熱が下がるかも」

 香澄はすぐキッチンに向かい、ミニバーからミネラルウォーターのペットボトルを取りだす。
 そしてまた佑のもとに戻り、「飲めるだけ飲んで」と彼を抱き起こす。

 熱で力が入らないだろうと思い、キャップを開けて佑にペットボトルを手渡す。

「ん……、く」

 佑はぼんやりとした表情で飲み口を唇につけ、喉を上下させて割と多くの量を飲んだ。

「治ったら、口移しで飲ませて」

 さらにそんな事を言うので、呆れてしまう。

 佑はまたモソモソと布団に潜り、自分で保冷剤を額にのせ、よこしまな願望を口にする。

「熱が下がって汗を掻いてきたら、香澄に拭いてもらうのもアリだな」

「もぉ、そういう減らず口はいいの! ……っていうか、うるさくしてごめんね。あ、そうだ。これはあまり効果がないらしいけど、貼ってるだけで気持ちいいから」

 そう言って、冷感シートを取りだし、ペリペリとフィルムを剥がして佑の額に貼る。

「……ありがと」

「部屋の隅で座ってるね。それならいいでしょ?」

 一人で決めてしまうと、香澄はまた広いスイートルームの中を歩き、動かせそうな椅子を探した。

 ダイニングの椅子は重くて諦め、洗面所にある籐の椅子はどこか心許ない。
 結局、リビングにあるソファのオットマンを抱えて運んだ。

 香澄もマスクをつけ、寝室の隅に体を預けて静かに息をつく。

 佑はそれ以上何か言うのを諦めたようで、大人しく寝てくれたようだった。

(頃合いを見て、保冷剤の溶け具合をチェックしよう。氷枕も温くなりそうだったら、またフロントに連絡をして新しい物に取り替えてもらって……)

 そう決めてスマホで時間を確認すると、深夜二時前だ。

(一時間後にチェックしよう)

 スマホを閉じ、香澄は仮眠できるように軽く目を閉じた。





 それからジャスト一時間後ではないが、体が軋んで目が覚め、保冷剤を確かめる。

 割と柔らかくなっていたので、冷凍庫から予備を出して取り替えた。
 氷枕も確かめたかったが、起こしたら申し訳ないのでやめておく。

(他にできる事はないかな……)

 考えようとしたが、寝不足なのであまり頭が働かず、思わずあくびをする。

(朝になったらフロントに連絡をして、お粥を頼んで……)

 香澄はしょぼしょぼと瞬きをして、もう一度あくびをする。

 そのあと、壁にもたれ掛かって眠ってしまった。





「……ん、……あれ……」

 目が覚めると、香澄はベッドに横になって眠っていた。

「ここはどこだっけ」から始まり、「ああ、ホテルだ」となり、佑が熱を出していた事を思いだして飛び起きた。

「佑さん!?」

 香澄が寝ていたのは、佑が眠っていた寝室だ。

 氷枕や保冷剤はベッドサイドに置かれていて、部屋の隅で座っていたはずの香澄は、いつのまにかベッドに寝かされていた。

「え、えっと……。佑さん?」

 リビングに行っても佑の姿はない。

(ベッドを取ってしまったからかも!)

 そう思ってマスターベッドルームに向かったが、そこにもいない。
 洗面所、トイレとくまなく探したが、どこにもいない。

「帰っちゃった?」

 そう思ってウォークインクローゼットを見ると、コートやスーツはあるし、昨日履いていた靴もそのままだ。
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