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第十五部・針山夫婦 編
騙されてない?
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「結婚したのは二十五歳だったんだけど、子供はまだ先でいいかな? と思ってたのよね。そうしたら、いざという時になかなかできなくて焦ったわ。妊活をしてやっとりらを産めたの。すべてが計画通りにいく訳じゃないから、香澄ちゃんも『子供がほしい』って思ったら、すぐ佑くんに相談したほうがいいわね」
子供の話になり、香澄はチラッと佑を見る。
彼はソファに座って、こちらを気にしている。
「美鈴、香澄ちゃん。とりあえず乾杯しよう。美鈴はジュースで、な」
「はーい。香澄ちゃんは私の隣ね」
「はい」
ソファに座るとテーブルには飲み物がもう置かれてあり、つまみのチーズや生ハム類、ピスタチオ、枝豆などもあった。
「じゃあ、これからも四人で仲良く付き合えますように! 乾杯!」
出雲がビールグラスを掲げ、佑はハイボール、香澄はシャンパン、美鈴は赤葡萄ジュースのグラスで乾杯した。
「香澄ちゃん、よろしくねー」
「はい」
「香澄、俺も」
「はい、佑さん」
「はい、香澄ちゃん俺もねー」
出雲は腕を伸ばして香澄との乾杯を求める。
「佑くんから聞いたけど、香澄ちゃんってあんまりお酒強くないんでしょ? ジュース類やノンアル飲みたくなったらいつでも言ってね? うち、アルコール、ノンアル問わず色んな品揃えがあるのよ」
美鈴に言われ、香澄は笑顔で頷いた。
「はい、ありがとうございます」
「それでさ!」
美鈴はスラリとした脚を組み、前のめりになって佑を見る。
「佑くんってかなりの良物件だと思うけど、香澄ちゃんもなかなかの逸材だと思うのよ。本当に騙されてない? お姉さん心配になっちゃう」
美鈴の言葉に、佑がガクリと項垂れる。
「本当に人聞きが悪いな? 確かに出会いは急だったけど、きちんと自己紹介した上で、東京で秘書をしてほしいって誘ったつもりだ。なぁ? 香澄」
「う、うん……」
いまさらなれそめを話すのも恥ずかしく、香澄は小さく頷いて枝豆に手を伸ばす。
おつまみで高級チーズや生ハムを食べるのは慣れておらず、ピスタチオというのはもっと慣れていない。
なので、一番馴染みがあり、分かりやすい枝豆はとても助かった。
苦言を呈した佑の言葉に、美鈴はカラッと笑う。
「佑くんって顔が良くて高収入、有名人の割にちょっとズレてるから、女性にコロッと騙されないか心配だったんだけどね。今までだって変な子に引っかからないように、定期的に近況聞いてたでしょ? それが、付き合い悪くなっちゃって、何があったかと思えば、可愛い女の子と同棲してるっていうから……」
美鈴はクピクピッとジュースを飲み、おかわりを手酌している。
その慣れた感じから、かなりの酒豪なのだろうなと窺えた。
「な、何かすみません……」
思わず謝ると、出雲が胸の前でパタパタと手を振る。
「いやいや、いーの! 香澄ちゃんと出会ってから、こいつ落ち着いたし。……まぁ、逆に嫉妬の塊みたいになって、ちょっと危なっかしいけど」
出雲の軽口に、佑はすかさずピシャリと言う。
「うるさい」
言いながらも、彼はピスタチオの殻を剥いて香澄の掌にのせている。
「ありがとう」
お礼を言う香澄に、美鈴が追い打ち的に尋ねてくる。
「佑くんに嫉妬されてきつくない? この人、今までかなり女性関係がドライだったから、『まるで初恋みたいに溺れきってる』って聞いて、心配になっちゃって。あんまり依存、執着されても困るでしょ」
美鈴に言われ、香澄は佑を気にしつつ「うーん……?」と首をひねる。
「とっても愛されてるなっていう自覚はありますが、ありがたくはあっても、困る……っていう事はない……と思います」
その答えを聞いたあと、美鈴は佑に念を押した。
「佑くんは黙っててね?」
「何を言うつもりだ」
前置きする彼女に、佑は疑わしそうな目を向ける。
「又聞きだけど、香澄ちゃんも恋愛経験はそれほど豊富じゃないんでしょ?」
「はい。きちんと付き合ったと言えるのは、佑さんの前に一人だけです」
正直に答えると、美鈴は深く頷く。
子供の話になり、香澄はチラッと佑を見る。
彼はソファに座って、こちらを気にしている。
「美鈴、香澄ちゃん。とりあえず乾杯しよう。美鈴はジュースで、な」
「はーい。香澄ちゃんは私の隣ね」
「はい」
ソファに座るとテーブルには飲み物がもう置かれてあり、つまみのチーズや生ハム類、ピスタチオ、枝豆などもあった。
「じゃあ、これからも四人で仲良く付き合えますように! 乾杯!」
出雲がビールグラスを掲げ、佑はハイボール、香澄はシャンパン、美鈴は赤葡萄ジュースのグラスで乾杯した。
「香澄ちゃん、よろしくねー」
「はい」
「香澄、俺も」
「はい、佑さん」
「はい、香澄ちゃん俺もねー」
出雲は腕を伸ばして香澄との乾杯を求める。
「佑くんから聞いたけど、香澄ちゃんってあんまりお酒強くないんでしょ? ジュース類やノンアル飲みたくなったらいつでも言ってね? うち、アルコール、ノンアル問わず色んな品揃えがあるのよ」
美鈴に言われ、香澄は笑顔で頷いた。
「はい、ありがとうございます」
「それでさ!」
美鈴はスラリとした脚を組み、前のめりになって佑を見る。
「佑くんってかなりの良物件だと思うけど、香澄ちゃんもなかなかの逸材だと思うのよ。本当に騙されてない? お姉さん心配になっちゃう」
美鈴の言葉に、佑がガクリと項垂れる。
「本当に人聞きが悪いな? 確かに出会いは急だったけど、きちんと自己紹介した上で、東京で秘書をしてほしいって誘ったつもりだ。なぁ? 香澄」
「う、うん……」
いまさらなれそめを話すのも恥ずかしく、香澄は小さく頷いて枝豆に手を伸ばす。
おつまみで高級チーズや生ハムを食べるのは慣れておらず、ピスタチオというのはもっと慣れていない。
なので、一番馴染みがあり、分かりやすい枝豆はとても助かった。
苦言を呈した佑の言葉に、美鈴はカラッと笑う。
「佑くんって顔が良くて高収入、有名人の割にちょっとズレてるから、女性にコロッと騙されないか心配だったんだけどね。今までだって変な子に引っかからないように、定期的に近況聞いてたでしょ? それが、付き合い悪くなっちゃって、何があったかと思えば、可愛い女の子と同棲してるっていうから……」
美鈴はクピクピッとジュースを飲み、おかわりを手酌している。
その慣れた感じから、かなりの酒豪なのだろうなと窺えた。
「な、何かすみません……」
思わず謝ると、出雲が胸の前でパタパタと手を振る。
「いやいや、いーの! 香澄ちゃんと出会ってから、こいつ落ち着いたし。……まぁ、逆に嫉妬の塊みたいになって、ちょっと危なっかしいけど」
出雲の軽口に、佑はすかさずピシャリと言う。
「うるさい」
言いながらも、彼はピスタチオの殻を剥いて香澄の掌にのせている。
「ありがとう」
お礼を言う香澄に、美鈴が追い打ち的に尋ねてくる。
「佑くんに嫉妬されてきつくない? この人、今までかなり女性関係がドライだったから、『まるで初恋みたいに溺れきってる』って聞いて、心配になっちゃって。あんまり依存、執着されても困るでしょ」
美鈴に言われ、香澄は佑を気にしつつ「うーん……?」と首をひねる。
「とっても愛されてるなっていう自覚はありますが、ありがたくはあっても、困る……っていう事はない……と思います」
その答えを聞いたあと、美鈴は佑に念を押した。
「佑くんは黙っててね?」
「何を言うつもりだ」
前置きする彼女に、佑は疑わしそうな目を向ける。
「又聞きだけど、香澄ちゃんも恋愛経験はそれほど豊富じゃないんでしょ?」
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正直に答えると、美鈴は深く頷く。
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