【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
1,001 / 1,589
第十六部・クリスマス 編

彼と一緒に歩く先が破滅の道であっても

しおりを挟む
 佑は落ち着いた表情のまま、淡々と話す。

「香澄がコーヒーショップで眠ったのは、大きいサイズのカフェオレ二杯分に睡眠薬を飲まされたからだ。苦いとか、味に違和感はなかったか?」

「あ……」

 言われて始めて、あの時「苦い」と感じたのを思いだした。
 コーヒー的な苦さもあったが、その奥に纏わり付くような苦さもあったのだ。

 だがあの時は、目の前に初対面の外国人がいて、昼休憩の時間を気にして焦っていた事もあり、コーヒーの味を気にする余裕がなかった。

「その味を忘れないでくれ。今後俺がいない場所で飲食物の味に違和感を覚えたら、絶対にそれ以上口にしたら駄目だ。勿論、二度と同じ事が起こらないように俺も気を配る。だが今後、俺や護衛がいない場所で、知り合いではない人と飲食しないでほしい」

 説明されても、心の中はまだ信じられない思いで一杯だ。

 あの女性が……と失望するより、まず謝罪した。

「ごめんなさい」

 香澄は佑の目を見て謝り、キュッと唇を噛んで視線を落とす。

「……迷惑、かけたいつもりじゃないのに。……心配させようなんて、思ってなかったの。でも……。……言い訳はしない。……ごめんなさい」

 目に涙が浮かんだが、瞬きをして誤魔化す。
 怒られるかと思ったが、佑は黙って頭を撫でてくれた。

「俺も、守れなくてごめん」

「…………っ」

 ぶんぶんと首を横に振ると、ギュッと抱き締められた。

「俺は知らない間に色んな人に恨まれている。無自覚に蹴落とした人もいるだろう。契約をやめた会社だってあるし、世界中にライバルがいる。それとはまったく別に、個人的な事で恨みを買っているかもしれない。どう考えても、香澄が誰かの恨みを買うなんてあり得ない。香澄に何かがある時は、必ず俺が関わっている。……だから今回も俺の責任だ」

「そんな……っ。私が、ボケッとしてたから……」

 佑の目を見て「違う」と伝えたくても、強く抱き締められていて叶わない。

「……許してくれ。俺のせいで香澄は危険な目に遭ってしまう。札幌で普通に暮らしていたら、あんな目にも遭わなかっただろう」

 佑が言っている事がイギリスの件だとすぐ分かり、香澄は首を横に振る。

「ちが……」

「違わない。俺といる限り、香澄は身に覚えのない恨みを買う。それは事実だ」

「――――っ」

 まるで「俺と一緒にいてはいけない」と言われている気がして、胸が痛い。

 佑が自分を傷付け、否定する事を言う。
 そんな姿、見たくない。

 やめて、と言いかけた時、佑は香澄の肩を掴んで体を離し、見つめてきた。

 ――微笑わらっている。

 二人の関係を否定する事を言っておきながら、佑はうっすらと笑っていた。

 彼は潤んだ目で続ける。

「でも離さない。香澄は俺のものだ。君が『嫌だ』と言っても別れないし、側に居続けてもらう」

 許してほしいといいながらも、佑は香澄を選んでくれた。

 香澄はまるで、奈落の底から、釈迦の手にすくい上げられたような歓喜を得た。

 彼と一緒に歩く先が破滅の道であっても、「別れる」など決して言われたくなかった。

「うん……っ。離さないで。何があっても……、側に、いたい」

 香澄は安心して新たな涙を零し、泣き笑いの表情で彼の頬を撫でる。
 佑は満足げな表情で頷き、優しく彼女の頬にキスをする。

 それから、少し表情を引き締めて話題を戻した。

「今回のように、いつ何が起こるか分からない。極端な話、外にいれば何かしらの危険があると思ってほしい。そのために護身術を……と思うかもしれない。でも香澄はいきなり見知らぬ相手を撃退するなんて無理だろう? 今回はマティアスだから撃退できたと思っている」

「えっ? ちょ、ちょ……ま、待って? マティアスさんが? 助けてくれたの?」

 尋ねた香澄に、佑は少し複雑な表情で頷く。

「偶然だったそうだ。このビルに向かっていた時、たまたま香澄が知らない男に背負われてコーヒーショップから出てきたのに出くわした。とっさの判断でマティアスは男二人をぶちのめし、香澄を取り戻してくれた。……女は逃げていったそうだ」

「……マティアスさんが……」

 一度はトラウマにもなったマティアスが、文字通り体を張って助けてくれた。

 ありがたい事だが、それとは別に、本当に自分が誘拐されかけた事に今さらながらゾッとする。

 香澄は思わず佑の服を掴む。

「マティアスには俺から礼を言った。もし香澄から直接礼を言いたいなら、今度三人で食事をしてもいい」

「う……うん。そうしたい。……ありがとう」

 佑はあまりマティアスと会いたくないだろう。

 今回の滞在を許可してくれても、あまり乗り気ではないのは分かっている。
しおりを挟む
感想 575

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...