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第十六部・クリスマス 編
つれて来てくれてありがとう
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「本当に、コンビニの肉まんとかおでんとか、美味いよな。……斎藤さんには内緒だけど」
「んふふっ、すっごい分かる。これは一種の魔力だよね」
二人してペロリと肉まんの半分を食べてしまうと、次はピザまんを半分にする。
「おっと。香澄、チーズ食べて」
二つに割ったところからトロリとチーズが糸を引き、佑が苦戦している。
「はいっ」
香澄はいい返事をし、垂れかけたチーズをぱくんと食べた。
そのままモグモグと半分にした片割れまで辿り、ピザまんの最初の一口を齧り付く。
二人でピザまんを囓り、食べ終えると何とはなしに飲み物を飲む。
「こういうの、初めてだよな」
「うん。嬉しい」
佑が微笑み、香澄も笑顔になる。
「ここ、割と穴場なんだ。週末はカップルが乗った車が来るけど」
「ふふ、あっちにある車もそうかな」
離れた場所には数台車があり、きっと恋人たちが乗っているのだろう。
「カーセックスって憧れるけど、さすがに誰かに見られるリスクがある場所では嫌だな」
急に佑がそんな話をし、香澄は噴きだす。
「ぶふっ、確かに。……あー、そう言えば。札幌にラベンダーが敷地内に咲いてる大学があるのね。で、麻衣と一緒に見に行ったの。その帰りに通ったちょっとした峠みたいな所があるんだけど、その曲がり角に大量の使用済みティッシュがあったの。見つけた時、思わず麻衣と二人で大笑いしちゃった」
「ふっふ……。それは確実にヤッてたな」
「でしょー。でもゴミは捨てたら駄目だよねぇ。誰かにゴミを処分させるの駄目」
言いながら香澄はクレープの袋を開け、一口齧る。
「ん、ん。おいし」
クレープを食べて幸せな息をつき、しみじみと呟く。
「幸せだな。きっと私、佑さんのためならどんな事だってできるよ」
そう言うと佑は喜んでくれると思ったが、首を横に振られてしまった。
「『どんな事だって』なんて言うんじゃない。そう言えば、香澄を利用する人が必ずでてくる」
「そうだね。ごめんなさい」
香澄は今日誘拐されかけた事を思いだし、気合いを入れ直す。
そのあともしばらく、取り留めない話をした。
やがて佑がエンジンをかける。
「そろそろ、帰ろうか」
「うん。つれて来てくれてありがとう」
リラックスするために少し倒していたシートを直し、シートベルトを締める。
車が発進し、香澄は明日からの事を考え始めた。
「マティアスさんにお礼を言っていいなら、会える日を決めてもいい?」
「構わないよ。個室のある飲食店だとゆっくりできるかな」
「ん、そうしよう」
佑が運転する隣で、香澄はスマホを出してアプリを開く。
先にマティアスに連絡をして、返事がくるまで良さそうな店を検索し始めた。
「佑さん、何が食べたい?」
「何でもいいよ。というか、マティアスの好みに合わせたほうがお礼になるかも」
「そうだね」
返事をして、香澄はひとまずマティアスからの連絡を待った。
やがて通知が鳴り、コネクターナウを開く。
「いつでもいいって。今日はもうホテルに戻ってるみたい」
佑に報告してから、「何か食べたい物はありますか……、と」と呟きながら入力していく。
「しゃぶしゃぶかすき焼きだって。確かに、お鍋いいかもね」
「じゃあ、どこか個室のある店を手配しておいてくれるか?」
「はい。じゃあ、すき焼きにしておくね」
ネット予約をした香澄は、すき焼きに思いを馳せる。
それから、現実に戻った。
「明日、早めに起きてトレーニングしないと」
「はは、付き合うよ」
それから十五分ほどで、二人は帰宅した。
**
翌日、香澄は松井と河野に平謝りをした。
だがすでに事情を知っている二人は「不可抗力だから」と、言及しなかった。
ただ河野には、一言突っ込まれてしまった。
「赤松さんって、本当に不幸を背負い込む体質ですね。京都に有名な縁切り神社があるみたいですから、行ってみたらどうですか?」
突っ込まれたものの、興味のある話なのでつい応じてしまう。
「んふふっ、すっごい分かる。これは一種の魔力だよね」
二人してペロリと肉まんの半分を食べてしまうと、次はピザまんを半分にする。
「おっと。香澄、チーズ食べて」
二つに割ったところからトロリとチーズが糸を引き、佑が苦戦している。
「はいっ」
香澄はいい返事をし、垂れかけたチーズをぱくんと食べた。
そのままモグモグと半分にした片割れまで辿り、ピザまんの最初の一口を齧り付く。
二人でピザまんを囓り、食べ終えると何とはなしに飲み物を飲む。
「こういうの、初めてだよな」
「うん。嬉しい」
佑が微笑み、香澄も笑顔になる。
「ここ、割と穴場なんだ。週末はカップルが乗った車が来るけど」
「ふふ、あっちにある車もそうかな」
離れた場所には数台車があり、きっと恋人たちが乗っているのだろう。
「カーセックスって憧れるけど、さすがに誰かに見られるリスクがある場所では嫌だな」
急に佑がそんな話をし、香澄は噴きだす。
「ぶふっ、確かに。……あー、そう言えば。札幌にラベンダーが敷地内に咲いてる大学があるのね。で、麻衣と一緒に見に行ったの。その帰りに通ったちょっとした峠みたいな所があるんだけど、その曲がり角に大量の使用済みティッシュがあったの。見つけた時、思わず麻衣と二人で大笑いしちゃった」
「ふっふ……。それは確実にヤッてたな」
「でしょー。でもゴミは捨てたら駄目だよねぇ。誰かにゴミを処分させるの駄目」
言いながら香澄はクレープの袋を開け、一口齧る。
「ん、ん。おいし」
クレープを食べて幸せな息をつき、しみじみと呟く。
「幸せだな。きっと私、佑さんのためならどんな事だってできるよ」
そう言うと佑は喜んでくれると思ったが、首を横に振られてしまった。
「『どんな事だって』なんて言うんじゃない。そう言えば、香澄を利用する人が必ずでてくる」
「そうだね。ごめんなさい」
香澄は今日誘拐されかけた事を思いだし、気合いを入れ直す。
そのあともしばらく、取り留めない話をした。
やがて佑がエンジンをかける。
「そろそろ、帰ろうか」
「うん。つれて来てくれてありがとう」
リラックスするために少し倒していたシートを直し、シートベルトを締める。
車が発進し、香澄は明日からの事を考え始めた。
「マティアスさんにお礼を言っていいなら、会える日を決めてもいい?」
「構わないよ。個室のある飲食店だとゆっくりできるかな」
「ん、そうしよう」
佑が運転する隣で、香澄はスマホを出してアプリを開く。
先にマティアスに連絡をして、返事がくるまで良さそうな店を検索し始めた。
「佑さん、何が食べたい?」
「何でもいいよ。というか、マティアスの好みに合わせたほうがお礼になるかも」
「そうだね」
返事をして、香澄はひとまずマティアスからの連絡を待った。
やがて通知が鳴り、コネクターナウを開く。
「いつでもいいって。今日はもうホテルに戻ってるみたい」
佑に報告してから、「何か食べたい物はありますか……、と」と呟きながら入力していく。
「しゃぶしゃぶかすき焼きだって。確かに、お鍋いいかもね」
「じゃあ、どこか個室のある店を手配しておいてくれるか?」
「はい。じゃあ、すき焼きにしておくね」
ネット予約をした香澄は、すき焼きに思いを馳せる。
それから、現実に戻った。
「明日、早めに起きてトレーニングしないと」
「はは、付き合うよ」
それから十五分ほどで、二人は帰宅した。
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翌日、香澄は松井と河野に平謝りをした。
だがすでに事情を知っている二人は「不可抗力だから」と、言及しなかった。
ただ河野には、一言突っ込まれてしまった。
「赤松さんって、本当に不幸を背負い込む体質ですね。京都に有名な縁切り神社があるみたいですから、行ってみたらどうですか?」
突っ込まれたものの、興味のある話なのでつい応じてしまう。
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