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第十六部・クリスマス 編
私、この人たちの事何も知らない
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「ねぇ、ミサト。仕事が終わるまで待ってるから、遊ぼうよ」
「仕事が終わるのは深夜一時です。そのあとに片付けもありますから、帰ったらすぐ休みたいです。ですから難しいです」
友達に双子の話をすると「玉の輿」「ドイツ人彼氏」「双子から求められて逆ハー」など言われた。
しかし友達は彼らの〝圧〟を知らないので、好きな事が言えるのだと思う。
まず顔が良くて二人で同じ顔をしている。
その二人に口説かれるので、正直心臓が持たない。
それに断っても断っても、彼らはめげない。
〝遠慮〟や〝空気を読む〟事もしない。
きっと思い通りにならない事はない人生を送ってきたのだろう。
そう思うと、彼らの人生と傲慢な態度に腹が立ってくる。
腹が立つと言っても、「大嫌い! 近付いてほしくない!」とは違う。
なぜ腹が立つかと言えば、「私の気も知らないで……」という感情が強いからだ。
自分はこんなにも遠慮しているのに、双子はあまりに自由すぎる。
けれどそれは結局、思いのままに振る舞っている彼らへの嫉妬だ。
彼らのように本能のままに生きられたら、ストレスを抱える事もないのだろう。
心の中で決めつけ、上辺だけで判断しようとする自分の短慮さにも腹が立つ。
「いつ休みなの?」
「お答えできかねます」
美里は微笑み、あくまでバーテンダーとしての態度を貫く。
その対応に、双子は顔を見合わせて肩をすくめた。
「まぁ、突然現れた〝ガイコクジン〟に口説かれて、警戒してるの分かるけどね」
「会うのは二回目だし、デートって急すぎるのかな。日本の女の子は警戒心が強いよね」
アロイスの言葉を聞いて、美里はカチンとする。
(ドイツの女性は声をかけたらノリ良くついてくるんですか?)
そんな事を考えながら、美里はオーダーされたカクテルを次々に作っていく。
手を動かしながら、以前に彼らがイタリア語やフランス語で電話していたのを思いだす。
(世界中にガールフレンドがいるくせに、なんで私をナンパするんですか。完全にからかってるでしょ)
美里は表面上冷静を保って仕事をしているが、双子が見つめてくるので落ち着かない。
「やっぱり可愛いね、ミサトは」
「そうそう。うまく言えないけど見た目ドストライクだよね」
(見た目だけですか)
美里はGカップあるので、胸だけを見てナンパされた事は何度もある。
だからこそ、女性を外見だけで判断する男性が嫌いだった。
「それで警戒心強くてツンツンしてるところもいいよね」
「そうそう。人に慣れてない猫みたい」
猫が褒め言葉かどうかは謎だが、からかわれているのは分かる。
「どうやって落としたらいいんだろうね?」
「っていうか、個人的に話せないと僕らを知ってもらえないよね。いつまでも客とバーテンダーのままだったら話が進まないし」
クラウスの言葉を聞いて、不覚にも納得してしまった。
(それはそうかも。私、この人たちの事何も知らない)
コネクターナウで好き放題メッセージを送ってくるので、基本的な情報は知っている。
けれどメッセージだけでは分からないものは沢山ある。
そんな美里の心境の変化を知ってか知らずか、クラウスが諭すような口調で話しかけてきた。
「ねぇミサト。僕らは本当に君を知りたいんだ。『ナンパされた』って思ったのは分かってるし、今だって信用されてないのは理解してるよ。でも僕ら、根が〝こう〟なんだ。真剣な時だって、ふざけてるように見られちゃう」
「……不快に思わせてしまったらすみません」
自分がどう感じているかを言い当てられ、美里は素直に謝る。
「謝んなくていいよ。俺たちはそう見られるのに慣れてる。というより、いい加減に振る舞っていたからそう見られて、逆にキャラが定着しちゃったっていうか」
「なるほど……。そういうふうに生きてて、損しなかったんですか?」
いい加減に振る舞えば、誰からもいい加減に返されるのは当たり前だ。
彼らがわざとおちゃらけて見せているのは分かるし、本当はとても頭がいいだろう事も察する。
考えつかない事ではないのに、なぜ改めなかったのかと不思議になる。
「損得は考えなかったかな? まー……、ちょっと事情があってね。真剣に生きてもどうにもならない事があったんだよ。いい加減にしてたっていうより、やけっぱちになってたっていう感じかな?」
やはり、双子には〝事情〟があった。
「……何か、あったんですか?」
その問いを聞き、双子は顔を見合わせて苦く笑う。
「仕事が終わるのは深夜一時です。そのあとに片付けもありますから、帰ったらすぐ休みたいです。ですから難しいです」
友達に双子の話をすると「玉の輿」「ドイツ人彼氏」「双子から求められて逆ハー」など言われた。
しかし友達は彼らの〝圧〟を知らないので、好きな事が言えるのだと思う。
まず顔が良くて二人で同じ顔をしている。
その二人に口説かれるので、正直心臓が持たない。
それに断っても断っても、彼らはめげない。
〝遠慮〟や〝空気を読む〟事もしない。
きっと思い通りにならない事はない人生を送ってきたのだろう。
そう思うと、彼らの人生と傲慢な態度に腹が立ってくる。
腹が立つと言っても、「大嫌い! 近付いてほしくない!」とは違う。
なぜ腹が立つかと言えば、「私の気も知らないで……」という感情が強いからだ。
自分はこんなにも遠慮しているのに、双子はあまりに自由すぎる。
けれどそれは結局、思いのままに振る舞っている彼らへの嫉妬だ。
彼らのように本能のままに生きられたら、ストレスを抱える事もないのだろう。
心の中で決めつけ、上辺だけで判断しようとする自分の短慮さにも腹が立つ。
「いつ休みなの?」
「お答えできかねます」
美里は微笑み、あくまでバーテンダーとしての態度を貫く。
その対応に、双子は顔を見合わせて肩をすくめた。
「まぁ、突然現れた〝ガイコクジン〟に口説かれて、警戒してるの分かるけどね」
「会うのは二回目だし、デートって急すぎるのかな。日本の女の子は警戒心が強いよね」
アロイスの言葉を聞いて、美里はカチンとする。
(ドイツの女性は声をかけたらノリ良くついてくるんですか?)
そんな事を考えながら、美里はオーダーされたカクテルを次々に作っていく。
手を動かしながら、以前に彼らがイタリア語やフランス語で電話していたのを思いだす。
(世界中にガールフレンドがいるくせに、なんで私をナンパするんですか。完全にからかってるでしょ)
美里は表面上冷静を保って仕事をしているが、双子が見つめてくるので落ち着かない。
「やっぱり可愛いね、ミサトは」
「そうそう。うまく言えないけど見た目ドストライクだよね」
(見た目だけですか)
美里はGカップあるので、胸だけを見てナンパされた事は何度もある。
だからこそ、女性を外見だけで判断する男性が嫌いだった。
「それで警戒心強くてツンツンしてるところもいいよね」
「そうそう。人に慣れてない猫みたい」
猫が褒め言葉かどうかは謎だが、からかわれているのは分かる。
「どうやって落としたらいいんだろうね?」
「っていうか、個人的に話せないと僕らを知ってもらえないよね。いつまでも客とバーテンダーのままだったら話が進まないし」
クラウスの言葉を聞いて、不覚にも納得してしまった。
(それはそうかも。私、この人たちの事何も知らない)
コネクターナウで好き放題メッセージを送ってくるので、基本的な情報は知っている。
けれどメッセージだけでは分からないものは沢山ある。
そんな美里の心境の変化を知ってか知らずか、クラウスが諭すような口調で話しかけてきた。
「ねぇミサト。僕らは本当に君を知りたいんだ。『ナンパされた』って思ったのは分かってるし、今だって信用されてないのは理解してるよ。でも僕ら、根が〝こう〟なんだ。真剣な時だって、ふざけてるように見られちゃう」
「……不快に思わせてしまったらすみません」
自分がどう感じているかを言い当てられ、美里は素直に謝る。
「謝んなくていいよ。俺たちはそう見られるのに慣れてる。というより、いい加減に振る舞っていたからそう見られて、逆にキャラが定着しちゃったっていうか」
「なるほど……。そういうふうに生きてて、損しなかったんですか?」
いい加減に振る舞えば、誰からもいい加減に返されるのは当たり前だ。
彼らがわざとおちゃらけて見せているのは分かるし、本当はとても頭がいいだろう事も察する。
考えつかない事ではないのに、なぜ改めなかったのかと不思議になる。
「損得は考えなかったかな? まー……、ちょっと事情があってね。真剣に生きてもどうにもならない事があったんだよ。いい加減にしてたっていうより、やけっぱちになってたっていう感じかな?」
やはり、双子には〝事情〟があった。
「……何か、あったんですか?」
その問いを聞き、双子は顔を見合わせて苦く笑う。
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