【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
1,046 / 1,591
第十六部・クリスマス 編

馬鹿ですよね?

しおりを挟む
「ワンピースの後ろ、切れてます。痛くないんですか? カッターか何かで切ったような感じでした。……あっ、腕も!」

 そう言って生島は香澄の左腕を取り、赤いロンググローブをつけた腕の外側を香澄に見せようとする。

「赤松さん!」

 その時、客に押し出されて遠くへ行ってしまった久住と佐野が、完全に出遅れた形で走ってくる。

「あ……」

 生島に言われて確認すれば、確かに肘の下辺りが切れている。
 割と厚手の生地だったのに、ざっくりと鋭利な刃物で布地ごと香澄の腕が切れていた。

「痛くありませんか?」

「……分かったら、今になって痛くなってきた気がします……」

 呆然としたまま返事をした香澄は、左腕と腰――ちょうど尻の谷間の始まり辺り――がジンジンと痛み出したのを感じる。

「あは……。今ごろ痛くなるなんて、恐竜並みですね」

「いいですから! 医務室行きますよ! そこの護衛の人二人は、周囲に怪しい人がいないか確認してください! 赤松さんは俺が責任持って医務室に連れて行きますから!」

 生島の剣幕に押され、久住と佐野は走りだした。

 彼は香澄の手首を掴むと、近くにいる社員に「赤松さんが怪我を負ったので、オフィスの医務室に行きます」と伝えた。

 香澄は生島に引っ張られて、ととと……と小走りに歩いて行く。
 途中で「あー、サンタさんだー」と無邪気に喜ぶ子供に手を振り、バックヤードに入ってやっと息をつく。

 エレベーター待ちになるとさすがに生島も手を離し、混乱した顔で尋ねてくる。

「赤松さん、犯人の顔は見なかったんですか?」

「いえ。切られたっていうのも全然分かっていなくて……。お菓子を配るのに夢中になっていたので……」

「はぁ……。これを社長が知ったら、どれだけ荒れる事やら」

 溜め息混じりに言い、生島は腕を組んでトントンと指で神経質に自分の腕を打つ。

(それもそうだ)

 ギクッとし、香澄はそろっと生島に頼む。

「……だ、黙っていてくれませんか?」

「何言ってんですか。黙ってたって無駄でしょう。赤松さん、社長と同棲してるんですよね? それで婚約者でしょう? ケツだって見られてるでしょう? 即バレですよ」

 ズバッと言われ、思わず赤面する。

「こういう場合、速やかに報告したほうがいいんです。社長なら金と人脈でスピード解決してくれますから。逆に黙っていたら俺の立場が悪くなります。それぐらい察してくださいよ」

 そう言う生島は、営業部での成績が良くて佑からも覚えもいい。

 佑が昼休みに社内を見回っている時、彼に腕相撲の勝負を申し込むほどには仲が良く、誰にでもオープンに話し掛け、裏表のない性格をしている。

 二十七歳ながら面倒見がよく、後輩から慕われていると聞いた。

「……す、すみません……」

 小さく謝った時、目の前でポーンと電子音がしてエレベーターのドアが開く。
 二人してゴンドラに乗り込み、生島が医務室がある三十三階を押した。

「はぁ……。赤松さん。あんまりうるさく言いたくありませんが、あなたは社長の掌中の珠なんですからね? それを傷付けられたら、社長がどうなるか分かってますよね? 赤松さんって可愛いやり手っていう雰囲気を醸し出しておきながら、結構抜けてて馬鹿ですよね?」

「……そ、そんなにハッキリ言わなくたっていいじゃないですか」

 双子にも頻繁に「バカだねー」と言われるが、生島のように心底……という様子で言われると落ち込んでしまう。

「社長の婚約者である自覚はありますか? 中小企業の社長じゃないんですよ? 〝世界の御劔〟って言われてる億万長者ですよ? 石油王の友達がいて、大統領・首相クラスと会っている存在ですよ? その婚約者がサンタコスプレしてノコノコと大勢の前に出て、さっきなんて野郎に絡まれてたじゃないですか。俺も配置にいたんで、ヘルプにいけなくて悪かったですけど」

「ちゃ、ちゃんと解決しました! それにお菓子配り隊に志願したのは、人手が足りなさそうで大変だなって思ったからで……」

「そんなの他の社員に任せたらいいじゃないですか。うちは男女ともにコスプレ衣装はふんだんにあるんですから。赤松さんがやらなくても菓子を配る係は誰でもできます。でも赤松さんにもしもの事があった場合、代わりはいないんですからね?」

 ぐうの音も出ないほど言い負かされ、香澄はとうとう降参した。

「……はい。……反省します」

 その時、ゴンドラが三十三階に着いた。

「どもっす」

 生島は受付に挨拶をし、香澄を先導してズンズンと廊下を奥に進んでいく。

 やがて生島は医務室とプレートのある部屋の前で立ち止まり、ドアをノックした。
しおりを挟む
感想 576

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...