1,189 / 1,591
第十八部・麻衣と年越し 編
〝都心 ラブホテル ムードがいい〟
しおりを挟む
「キス、慣れてるの?」
「……え? ……普通だ」
マティアスは目を瞬かせる。
「〝普通〟が分からない。彼女は何年前までいた?」
こんなふうに、元カノ事情を根掘り葉掘り聞くのは、本当に〝面倒臭い女〟だ。
嫌で堪らないけれど、前に進むために尋ねた。
彼ならきっと〝面倒な女〟と思わない。
そう信じられたから聞けたのだと思う。
「……最後に付き合ったのは大学生頃か? それ以来、秘書業に就いてからは決まった相手はいない」
「うそぉ?」
思わず漏れた声に、マティアスは真面目な表情で頷く。
「本当だ。仕事のストレスでそれどころではなかった。今は解放されて、ようやく恋愛を楽しもうという気持ちになれているが」
マティアスが「恋愛を楽しむ」と言ってもいまいちピンとこないが、本人が言うならそうなのだろう。
「……じゃあ、その間、キスとか…………下世話だけど、性処理的な事は?」
「風俗に行った事はある。だがその内どうでも良くなった。自分の問題より復讐を果たす事に専念し、ムラムラした時は一人で処理した」
恥ずかしがる事なく言われ、麻衣は困惑する。
「……彼女がほしいとか、イチャイチャしたいとか、……そう思う余裕がなかったの?」
「そうなるな」
マティアスは傷ついた過去に苦しむでもなく、淡々と答える。
「……じゃあ、なんでこんなにキスがうまいの?」
素直になるのはとても恥ずかしい。
自分がひねくれていると自覚しているからこそ、マティアスに嫉妬している気持ちを詳細に伝えるのが恥ずかしかった。
「……うまい、か?」
マティアスは目をぱちくりと瞬かせ、初めて言われたという顔をする。
「う……うん」
「気持ち良かったか?」
言われて、彼の温かくぬめらかな舌で口内をまさぐられた時の、叫びたくなるような、どうにもならない感覚を思いだし、ブワッと体温が上がる。
「…………すごく」
あまりの恥ずかしさに、内心「ちくしょう」と思いながら頷く。
「よしっ」
恥ずかしくてムカつくほどなのに、マティアスはなぜか小さく拳を握って喜んでいる。
「何が『よし』なの!」
べしっとマティアスの胸板を叩くと、彼は嬉しそうに笑いながら麻衣の手を掴み、その甲にキスをしてきた。
「マイ、もっとキスをしたら駄目か?」
幸せそうな顔で尋ねられ、気圧される。
「……こ、ここは御劔さんの家だから、そういう事は駄目」
そう言うと、マティアスは何か考えたのかタブレット端末を弄り始めた。
(なんだろ……)
画面を覗き込むと、マティアスは検索エンジンに〝都心 ラブホテル ムードがいい〟と打ち込んでいる。
麻衣は思わずシーツに突っ伏した。
(だあああああああああああ!! 嘘でしょ!?)
「ちょ、ちょっと、何調べてるんですか!」
「ここでは嫌なんだろう? ならホテルしかないじゃないか。俺も日本のラブホテルを体験してみたかった」
「そう簡単に行く所じゃないでしょう!」
ラブホテルなど別次元の世界すぎて、旅行に行くよりハードルが高い。
「俺は行った事がない。二人で初体験してみないか? きっと楽しい」
マティアスは気になったホテルの内装を、じっくり見ている。
「好きなホテルの雰囲気はあるか? ここはアジアンリゾートを意識しているらしい」
「だっ、だからラブホの事なんて知りませんったら!」
「だから二人で一緒に知ればいいだろう」
マティアスはそう言ったあと、頬にチュッとキスをしてきた。
「んなぁっ!?」
「本番まで慣れよう。言っておくが、俺は日本人の男より日常的にキスをすると思う。アロクラに比べて面白みのない性格だと自覚しているが、マイを愛しく思う気持ちは隠したくない」
これからも遠慮せずチュッチュすると言われ、麻衣は赤面したまま固まっている。
「ラブホテルに行くのは嫌か?」
「い……、……うぅ……。……う……。嫌……じゃ、ない……けど…………」
絞り出すように言う麻衣に、マティアスは畳みかける。
「どうせ専門の場に行くなら、セックスしてみないか?」
「――――!」
(この男はあああああああああ!!)
麻衣はボフンッと顔面をシーツに押しつけ、悶える。
「……え? ……普通だ」
マティアスは目を瞬かせる。
「〝普通〟が分からない。彼女は何年前までいた?」
こんなふうに、元カノ事情を根掘り葉掘り聞くのは、本当に〝面倒臭い女〟だ。
嫌で堪らないけれど、前に進むために尋ねた。
彼ならきっと〝面倒な女〟と思わない。
そう信じられたから聞けたのだと思う。
「……最後に付き合ったのは大学生頃か? それ以来、秘書業に就いてからは決まった相手はいない」
「うそぉ?」
思わず漏れた声に、マティアスは真面目な表情で頷く。
「本当だ。仕事のストレスでそれどころではなかった。今は解放されて、ようやく恋愛を楽しもうという気持ちになれているが」
マティアスが「恋愛を楽しむ」と言ってもいまいちピンとこないが、本人が言うならそうなのだろう。
「……じゃあ、その間、キスとか…………下世話だけど、性処理的な事は?」
「風俗に行った事はある。だがその内どうでも良くなった。自分の問題より復讐を果たす事に専念し、ムラムラした時は一人で処理した」
恥ずかしがる事なく言われ、麻衣は困惑する。
「……彼女がほしいとか、イチャイチャしたいとか、……そう思う余裕がなかったの?」
「そうなるな」
マティアスは傷ついた過去に苦しむでもなく、淡々と答える。
「……じゃあ、なんでこんなにキスがうまいの?」
素直になるのはとても恥ずかしい。
自分がひねくれていると自覚しているからこそ、マティアスに嫉妬している気持ちを詳細に伝えるのが恥ずかしかった。
「……うまい、か?」
マティアスは目をぱちくりと瞬かせ、初めて言われたという顔をする。
「う……うん」
「気持ち良かったか?」
言われて、彼の温かくぬめらかな舌で口内をまさぐられた時の、叫びたくなるような、どうにもならない感覚を思いだし、ブワッと体温が上がる。
「…………すごく」
あまりの恥ずかしさに、内心「ちくしょう」と思いながら頷く。
「よしっ」
恥ずかしくてムカつくほどなのに、マティアスはなぜか小さく拳を握って喜んでいる。
「何が『よし』なの!」
べしっとマティアスの胸板を叩くと、彼は嬉しそうに笑いながら麻衣の手を掴み、その甲にキスをしてきた。
「マイ、もっとキスをしたら駄目か?」
幸せそうな顔で尋ねられ、気圧される。
「……こ、ここは御劔さんの家だから、そういう事は駄目」
そう言うと、マティアスは何か考えたのかタブレット端末を弄り始めた。
(なんだろ……)
画面を覗き込むと、マティアスは検索エンジンに〝都心 ラブホテル ムードがいい〟と打ち込んでいる。
麻衣は思わずシーツに突っ伏した。
(だあああああああああああ!! 嘘でしょ!?)
「ちょ、ちょっと、何調べてるんですか!」
「ここでは嫌なんだろう? ならホテルしかないじゃないか。俺も日本のラブホテルを体験してみたかった」
「そう簡単に行く所じゃないでしょう!」
ラブホテルなど別次元の世界すぎて、旅行に行くよりハードルが高い。
「俺は行った事がない。二人で初体験してみないか? きっと楽しい」
マティアスは気になったホテルの内装を、じっくり見ている。
「好きなホテルの雰囲気はあるか? ここはアジアンリゾートを意識しているらしい」
「だっ、だからラブホの事なんて知りませんったら!」
「だから二人で一緒に知ればいいだろう」
マティアスはそう言ったあと、頬にチュッとキスをしてきた。
「んなぁっ!?」
「本番まで慣れよう。言っておくが、俺は日本人の男より日常的にキスをすると思う。アロクラに比べて面白みのない性格だと自覚しているが、マイを愛しく思う気持ちは隠したくない」
これからも遠慮せずチュッチュすると言われ、麻衣は赤面したまま固まっている。
「ラブホテルに行くのは嫌か?」
「い……、……うぅ……。……う……。嫌……じゃ、ない……けど…………」
絞り出すように言う麻衣に、マティアスは畳みかける。
「どうせ専門の場に行くなら、セックスしてみないか?」
「――――!」
(この男はあああああああああ!!)
麻衣はボフンッと顔面をシーツに押しつけ、悶える。
23
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる