【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
1,197 / 1,589
第十九部・マティアスと麻衣 編

第十九部・序章 初夢と出社

しおりを挟む
 夢を見ていた。

 香澄は海にいた。

 海の上に浮かんでいるのか、飛んでいるのか分からない。

 ビーチではない、遙か沖の紺碧の海が大きくうねっていた。

 ――怖い。

 大きな波に呑まれてしまいそうで、香澄は必死に泳ごうと手足をバタつかせる。
 苦しい気がして懸命に呼吸をする。

 溺れてしまいそうな海の圧迫感に怯えていた時、香澄の手を温かな手がギュッと握った。

 ――あ……。

 その温もりを感じ、香澄は落ち着いていく。

 夢の中だけれど、大好きな人の香りがした。

 気が付けば海はエメラルドグリーンに変わっていて、陽光を浴びてキラキラと輝いていた。

 香澄は波打ち際にいて、美しい海を大好きな人と一緒に眺めている。

 手に持っているのは、みずみずしい果物だろうか。

 フワッと桃の香りがして、香澄は手にしていた果実を頬張った。
 口いっぱいに甘い果汁が迸り、「んー!」と幸せな笑顔になる。

 手を繋いでいた佑がこちらを振り向き、微笑んでキスをしてきた。

 甘い、甘いキスを繰り返しているうちに、ムラムラしてきて――。



**



「ん……っ」

 ちゅうっと何かを吸って、香澄は目を覚ました。

 少し口の中がモソモソする。

「ん……?」

 寝ぼけて目を開くと、濡れた佑のTシャツが目に入る。

「おはよ」

 クスクスと笑い声がしたかと思うと、頭を撫でられて額にキスをされた。

「ふぁ……、あ……」

 大きな欠伸をして伸びをし、香澄は天井を見上げる。

(……綺麗な海だったな……。果物も美味しかった)

 夢の残滓に浸っていたいが、佑が起き上がったので自分も覚醒しなくては、と少しずつ気持ちを引き締めていく。

(……というか、寝ぼけて佑さんのTシャツにキスしちゃった……。なんか赤ちゃんみたい)

 思いだしたように自分の寝ぼけ具合を自覚し、香澄はおずおずと謝った。

「……Tシャツ、ごめんね」

「ん? 気にしなくていいよ。どんな夢を見ていたのか、聞きたい気持ちはあるけど」

 彼はそう言って、クシャクシャッと香澄の頭を撫でた。

 ぼんやりしていると、今日これからイベントがあるのを思いだした。

 一月二日にして仕事か……と思いつつ、香澄も目をこすりながら起き上がった。

「秘書さん、元旦、二日とイベント関係で出社した社員は、仕事始めのあと二日間休みだから頑張って」

 佑が香澄の気持ちを見透かして、ポンと背中を叩いてくる。

 彼に気遣わせてしまって、一気に申し訳なくなった。

「ご、ごめんなさい……。佑さんはずっとお仕事なのに」

「俺は慣れてるからいいんだよ。前は仕事のオンオフをなかなか付けられなかったけど、今はオフの楽しみを知っているから、むしろ仕事が楽しい」

 愛しげな目で見られてチュッと頬にキスをされると、〝オフの楽しみ〟が自分だと分かる。

「佑さん、偉いな。私、そんなにずっと頑張れないや。……いや、その! 秘書のお仕事は誠心誠意頑張らせてもらってます。……けど、私はお休みが楽しみというか。いや、でも職場でも好きな人と一緒っていうだけで、十分幸せなんだけど……」

(けど一緒だからこそ、失敗したり体調を崩した時、佑さんに迷惑を掛けるから、申し訳ないっていう気持ちもあるけど……)

 残りは心の中で呟き、もう迷惑を掛けないようにしようと自分に言い聞かせる。

「香澄はそれでいいんだよ。俺は周りに『いつまでもそのやる気をキープしているのが凄い』と言われる。純粋に褒められているんじゃなくて、『いつか潰れないように気を付けろ』と言われているんだが。まぁ、以前に潰れた事があるから、自分でもある程度コントロールできてる……つもりだ」

 香澄の知らない時代の事を言われ、「うん」と頷いて彼の頭をよしよしと撫でた。

「無理はしないでね。一人の体じゃないんだから」

「ふっふ……。それは俺のセリフだよ」

 佑は肩を揺らして笑い、もう一度香澄を抱き寄せて頬にキスをすると、「よし」とベッドから下りた。

「私も支度しようっと」

 香澄もベッドから下りると、また欠伸をしながら自分の部屋に向かった。



**



 出社前、佑と香澄は麻衣と双子、マティアスに玄関まで見送られていた。

「じゃあ、行ってきます」

「イベント、十一時からだっけ?」

「うん。イベント会場は混むと思うから、皆さんとはぐれないように気を付けてね」

「問題ない。マイの手は俺がしっかり握ってる」

 麻衣に言ったのだが、マティアスがどや顔で親指を立ててきた。
しおりを挟む
感想 575

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...