【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十九部・マティアスと麻衣 編

何があったのか、聞いてもいいですか?

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「メイクラブを意識しているのかもしれないが、今はまだその時間じゃない。したい時はマイの意思を聞くから、それまでは普通に接してほしい」

「……わ、分かった……」

(ハッキリ言うな……。ある意味、ムードがない)

 メイクラブという言葉を使われて、彼が日本人ではないのを再確認する。

(日本人男性なら、よっぽどのキザじゃない限り言わないだろうな)

 いっぽうで、マティアスが「メイクラブ」と表現するのに多少の迷いがあった。

 ドイツ語での表現を使えば麻衣は理解できないが、日本でよく言う「セックス」は彼にとっては性別を表す言葉だ。

 迷った挙げ句、マティアスは「メイクラブ」と言ったのだが、その理由を麻衣は知らない。

(やる時になったら『じゃあやろうか』って切り替えるの? 初心者にもっと優しくして……)

 心の中で頭を抱えていると、また食べ物について尋ねられる。

「マイは何を食いたい?」

「……今のラインナップでいい」

「飯はどうする?」

「んー……。丼……も気になるけど……カルボナーラもいいな……。あ、いや。フォーがいい」

「じゃあ、丼とフォーを半分ずつシェアしよう」

 マティアスは立ち上がってフロントに電話をし、オーダーする。

「とりあえず飯を食ってから、デザートの事を考えよう」

 彼はまた麻衣の隣に座り、沈黙が落ちる。

(う……)

 どうしたものかと考え、何とか間を繋ぐ話題を……と思ったあと、なぜ彼がこんなにストレートすぎる言い方をするのか質問する事にした。

 日本語を習得したばかりで考え方も海外的とはいえ、マティアスと双子ではあまりに違いすぎている。

 性格もとても独特だし、二人きりになった今なら、プライベートな話をしてもいいのでは……と、踏み込む事にした。

「……あの、さ。聞いてもいい?」

「なんでも」

 隣り合って座り、彼の顔が見えない今だからこそ、少し勇気を出す。

「マティアスさんって、子供の頃からそういう性格だった?」

「…………もう少し無邪気だったかな」

「いや、子供時代はそうだろうけど……。そうじゃなくて。……色々あったとかなんとか……」

 どう尋ねたらいいか分からず言葉を濁らせると、マティアスはあっさりと頷いた。

「ああ、それか。……あまり聞いて面白い話じゃないぞ。前の職場というか……雇用主関係だ」

「エミリア……さん?」

「ああ」

 マティアスの口から女性の名前が出て、少しだけ複雑な気持ちになる。

 彼がエミリアという女性に、まったく恋愛感情を持っていないのは分かっている。

 だがここまでマティアスに影響を与えた存在だと思うと、どこか落ち着かない。

「……何があったのか、聞いてもいいですか?」

 隣に座るマティアスを見ると、彼はいつもの静かな表情のまま口を開いた。

「俺の家は代々、メイヤー家の秘書業をしていた。メイヤー家はドイツで大手保険会社や、その他企業も抱える大富豪だ。遡ればドイツ貴族にも連なる由緒ある家柄でもある。それはアドラーさんの所も同じだな。日本では電化製品や車の大企業で、もとは明治時代の貴族だった家柄があるだろう。それと同じと思ってくれていい」

「ん……」

 お嬢様とは思っていたがそこまでとは思わず、途方もない世界に溜め息をつく。

「エミリアはメイヤー家の長女だ。祖父に大切に育てられ、我が儘放題に育った。だが見て分かる〝嫌な女〟ではなく、表向きは周囲に優しい模範的なお嬢様だ。そうしていれば、親や祖父が喜ぶと理解しているからだ。その裏で、自分の欲のためならどこまでも残酷になれる女だった。あいつが本当に愛した男は、決して結ばれない存在だ。その男に拒絶され、昇華しきれない想いを抱えたエミリアは、どんどん暴走していった」

 思っていたよりずっと深刻な話になり、麻衣は覚悟を決めて彼の話を聞く。

「俺は生まれた時から、エミリアの下僕だった。または奴隷、玩具だ。生まれた時から、エミリアに仕えると決まっていたと言っていい。どこかで逃げたなら、今頃自由を手に入れていただろう。だが父もメイヤー家に仕えていたし、母は体が弱く、入退院を繰り返していた」

 マティアスはポキリと指を鳴らす。

「俺はメイヤー家の援助で大学に行き、卒業したあとあの家に仕えて働き始めた。俺の周りは『援助という〝投資〟を受けたなら、メイヤー家に仕えて当然』という考えの者ばかりだった。就職先の自由など、最初からなかった」

 マティアスの話を聞いた麻衣は、これが本当に現代の話なのかと半ば呆然としていた。
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