【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十九部・マティアスと麻衣 編

『あなたの望みは何ですか?』 ★

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 尋ねておきながら、こんな事をする相手なら、まず自分の正体を教えなだろうと思っていた。

 だが――。

『ご名答。よく分かったね』

 すぐ返事があり、香澄は正体が分かった安堵と、「なぜ」という疑問とで、感情が滅茶苦茶になる。

『どうしてですか? 何が目的ですか?』

 香澄は洟を啜りながら、懸命にフェルナンドの意図を探る。

『説明したとして君に何ができる? もし君に解決できる事なら、とっくに相談していただろう。人命を盾にして脅す者は、もうすでに数え切れないトライアンドエラーを重ねたあとなんだよ』

 文面は穏やかで理知的で、彼がこんな事をしているのが嘘のようだ。

 目を閉じると、フェルナンドが自分の前に立っているような感覚に陥る。

 ラテン系の少し濃い目の顔立ちの、文句なしの美男子だった。

(何が理由で怒らせてしまったの? 親切にしてくれたのに、ろくに挨拶せずに遠ざかってしまったから? いつから彼は私に狙いを定めていた? もしかして出会った時から?)

 せっかく仲良くなれたと思ったのに、こんな事になって悲しいし信じられない。

 彼と出会った時、友達になれるかもしれないと思っていた。

 だが、朝食ビュッフェで声を掛けてきた時から、すでに悪意を抱いていたのなら――。

『あなたの望みは何ですか?』

 香澄は食い下がって彼の目的を知ろうとする。

 しばらく、フェルナンドは反応しなかった。

 目を真っ赤にさせた香澄は、黙って画面を見つめて返事を待つ。

 やがてポンッと短い一文が送られてきた。

『御劔佑の破滅』

 その六文字を見ただけで、心の奥底がスゥッ……と冷えて重たくなっていった。

 ――あぁ、やっぱり。

 ――もしかして、とは思ったけど。

 ――私は佑さんの足枷にしかならない。

 ――彼の役に立ちたいのに、彼を喜ばせて幸せにしたいのに。

 ――私は何一つ、彼のプラスにならない。

「う……っ」

 また涙が零れ、香澄は声を押し殺して泣く。

『私はどうしたらいいですか? 何をしたら佑さんを助けてくれますか?』

 香澄は震える指でトン、トンと液晶をタップし、佑の命乞いをする。

『まだ何も求めないよ。今日は家に帰って、買った本でも読んでいるといい』

「そんな……」

 こうしてアクションを起こしたなら、すぐ何かを求められると思った。

『いつ何をどう求めるんですか?』

『今は何も言わない。君は今まで通りChief Everyで働けばいい。然るべき時に連絡を取るから、その時に応じてくれればいいよ』

『その間、ずっと私たちを見張っているんですか?』

『君たちがいちゃついている間ぐらいは、見なかったフリをしてあげるよ』

「――――っ」

 いつから盗聴されているのか分からないが、私生活がすべて筒抜けだったと知り、羞恥と恐ろしさに襲われる。

(もう何もできない。言えない)

『言っておくけど、盗聴器、カメラを探そうとしたらアウトだからね。君と連絡を取るのにこのアプリを使わせてもらっているけど、アプリを消したり、このアカウントをブロックしてもアウトだ』

 選択肢がないと言われ、香澄は絶望する。

『今日は挨拶程度にしておく。護衛の額からレーザースコープは外れているから、安心するといい。どうやらランチができたらしいから、冷めないうちに食べなさい』

『次はいつ連絡があるんですか?』

 香澄は食い下がって質問する。

 だが何のメッセージを送っても、フェルナンドは反応しなかった。

 十分ほど経ち、香澄はげっそりして個室から出た。

 鏡を見て、自分が酷い顔色になっていると知る。

 化粧ポーチを出して、クッションファンデーションで涙が流れたあとを誤魔化した。

 いつまでも手洗いに籠もっていては二人が話題に困ると思い、諦めて席に戻った。

「お帰りなさい。もう来ていますよ」

「ご厚意に甘えて先に頂いています」

 二人は大盛りパスタを食べていて、いつもと変わりないその姿にまた涙がこみ上げる。

 けれど気付かれてはならないと思い、平静を装って席についた。

 そして「美味しそうですね」と、楽しくもないのに笑う。

 食べたくて注文した料理も、今はちっとも食べたくなくなっている。

 だが食べなければ二人を心配させるし、店の人に悪い。
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