1,353 / 1,589
第二十一部・フェルナンド 編
エミリオ・アベラルドという男
しおりを挟む
毎年の募集定員も一名ほどというのも珍しくない。
今回働いてくれているのは、銃器弾薬類鑑定、刀剣鑑定にならび画像鑑定、現場鑑定を担う物理鑑定室の職員だ。
現在品川駅で見つかった香澄らしき人物は五人。
その中で三人が〝別人〟とされていた。
(どこに行ったんだ……)
万が一を思ってスマホをもう一台、さらにアラートつきのGPSを持たせても、何の役にも立たなかった。
あまりに自分が無力で、情けない。
佑は溜め息をついては無理矢理意識を仕事に戻し、モニターの時計表示を見て、「あと五分だから」と自分に言い聞かせた。
やがて終業になったあと、佑は改めてドイツの祖父に電話を掛けた。
その後、祖父からエミリオ・アベラルドの基本情報を得たが、香澄に手を出す男に思えなかった。
その後、祖父からエミリオ・アベラルドの基本情報を得ていたが、どう考えても香澄に手を出す男に感じられなかった。
仕事には真面目だが、明るく陽気な性格で、周囲から愛されるタイプらしい。
そして愛妻家で、娘と息子にもだだ甘のようだ。
仕事以外の時間は基本的に家族と過ごし、誘いがあれば友人たちとも遊ぶ。
だがキャンプなどを除いて泊まりはせず、酒も飲みすぎないし女性と関わらない。
彼の事業は船でものを輸送するのが仕事だ。
石油、石炭、機械、食料品、日用品、ありとあらゆる物を輸送し、世界中の輸出入のキモを握っている。
さらに豪華客船で人を運ぶのも含め、各旅行会社や造船会社と連携している。
アドラーは「佑と接点があると思えない」と言う。
現状、佑もそう思っている。
同じ業界にいるならライバルになるが、アパレルと海運とではあまりに住む世界が違う。
Chief Everyの商品を海運で運ぶ事や、佑が客として豪華客船で旅行をする……なら〝関わる〟と言えるかもしれない。
もっとも、海外に行く時は飛行機、しかもプライベートジェットを使っているので、本当に関わりがない。
豪華客船での旅も経験はあるが、問題を起こした覚えはない。
そんなエミリオに「破滅を願う」と言われてもピンとこない。
しかし香澄から聞いた情報――スペインで海運業を営んでいる男と言えば、彼しかいない。
ネットで調べたエミリオ・アベラルドは、確かにフェルナンドと同じ顔をしていた。
なので一体どこで恨みを買ったか分からず、何もかも手探りの状態だった。
アドラーに電話を掛けながら、佑は壁時計で時刻を確認する。
日本は現在十七時、ドイツは朝の九時だ。
《Hello.》
「オーパか。俺だ。今は大丈夫か? 俺は仕事が終わったところだ」
《ああ、構わない》
「香澄はまだ見つからない。捜査の範囲を空港まで広げてもらっているが、まだ有力な情報は得られていない」
《香澄さんはパスポートを所持していないだろう? 飛行機を利用すると思えない。エミリアの時は自ら出国したが、今は不意を突かれた形だろう?
「考えられるセンとして、囮が時間を稼いでいる間、本物は車に乗って高速に乗って遠くへ運ばれた。もしくは最悪、偽造パスポートを作られたかもしれない」
警察が言うには、暴力団なども使っている手口として、国が発行した〝本物の偽造パスポート〟を作る事ができるらしい。
パスポートさえあるなら、連れ出すほうも堂々と空港に行ける。
そこまで考えてドッと疲れ、佑は大きな溜め息をつく。
《言える事を伝えておこう。札幌にいる護衛から、香澄さんの実家に不審な男がうろつき回っていると報告され、警戒させている》
「…………何かされたのか?」
《その後、彼女のご両親は普通に過ごしていて、被害を受けたように見られない。現段階では見張っているだけ……と言える。マティアスと麻衣さんについては、マティアスが警戒している事もあり、こちらも実害はないそうだ》
報告を聞いて安堵の息を吐いたものの、佑が最も心配しているのは香澄だ。
(……脅されたか?)
あれだけ言い含めていた香澄が自分に逆らってフェルナンドに従うと思えず、余程の理由があったとしか考えられない。
実家の両親を盾に取られたなら、怯えて言う事を聞いても仕方がない。
今回働いてくれているのは、銃器弾薬類鑑定、刀剣鑑定にならび画像鑑定、現場鑑定を担う物理鑑定室の職員だ。
現在品川駅で見つかった香澄らしき人物は五人。
その中で三人が〝別人〟とされていた。
(どこに行ったんだ……)
万が一を思ってスマホをもう一台、さらにアラートつきのGPSを持たせても、何の役にも立たなかった。
あまりに自分が無力で、情けない。
佑は溜め息をついては無理矢理意識を仕事に戻し、モニターの時計表示を見て、「あと五分だから」と自分に言い聞かせた。
やがて終業になったあと、佑は改めてドイツの祖父に電話を掛けた。
その後、祖父からエミリオ・アベラルドの基本情報を得たが、香澄に手を出す男に思えなかった。
その後、祖父からエミリオ・アベラルドの基本情報を得ていたが、どう考えても香澄に手を出す男に感じられなかった。
仕事には真面目だが、明るく陽気な性格で、周囲から愛されるタイプらしい。
そして愛妻家で、娘と息子にもだだ甘のようだ。
仕事以外の時間は基本的に家族と過ごし、誘いがあれば友人たちとも遊ぶ。
だがキャンプなどを除いて泊まりはせず、酒も飲みすぎないし女性と関わらない。
彼の事業は船でものを輸送するのが仕事だ。
石油、石炭、機械、食料品、日用品、ありとあらゆる物を輸送し、世界中の輸出入のキモを握っている。
さらに豪華客船で人を運ぶのも含め、各旅行会社や造船会社と連携している。
アドラーは「佑と接点があると思えない」と言う。
現状、佑もそう思っている。
同じ業界にいるならライバルになるが、アパレルと海運とではあまりに住む世界が違う。
Chief Everyの商品を海運で運ぶ事や、佑が客として豪華客船で旅行をする……なら〝関わる〟と言えるかもしれない。
もっとも、海外に行く時は飛行機、しかもプライベートジェットを使っているので、本当に関わりがない。
豪華客船での旅も経験はあるが、問題を起こした覚えはない。
そんなエミリオに「破滅を願う」と言われてもピンとこない。
しかし香澄から聞いた情報――スペインで海運業を営んでいる男と言えば、彼しかいない。
ネットで調べたエミリオ・アベラルドは、確かにフェルナンドと同じ顔をしていた。
なので一体どこで恨みを買ったか分からず、何もかも手探りの状態だった。
アドラーに電話を掛けながら、佑は壁時計で時刻を確認する。
日本は現在十七時、ドイツは朝の九時だ。
《Hello.》
「オーパか。俺だ。今は大丈夫か? 俺は仕事が終わったところだ」
《ああ、構わない》
「香澄はまだ見つからない。捜査の範囲を空港まで広げてもらっているが、まだ有力な情報は得られていない」
《香澄さんはパスポートを所持していないだろう? 飛行機を利用すると思えない。エミリアの時は自ら出国したが、今は不意を突かれた形だろう?
「考えられるセンとして、囮が時間を稼いでいる間、本物は車に乗って高速に乗って遠くへ運ばれた。もしくは最悪、偽造パスポートを作られたかもしれない」
警察が言うには、暴力団なども使っている手口として、国が発行した〝本物の偽造パスポート〟を作る事ができるらしい。
パスポートさえあるなら、連れ出すほうも堂々と空港に行ける。
そこまで考えてドッと疲れ、佑は大きな溜め息をつく。
《言える事を伝えておこう。札幌にいる護衛から、香澄さんの実家に不審な男がうろつき回っていると報告され、警戒させている》
「…………何かされたのか?」
《その後、彼女のご両親は普通に過ごしていて、被害を受けたように見られない。現段階では見張っているだけ……と言える。マティアスと麻衣さんについては、マティアスが警戒している事もあり、こちらも実害はないそうだ》
報告を聞いて安堵の息を吐いたものの、佑が最も心配しているのは香澄だ。
(……脅されたか?)
あれだけ言い含めていた香澄が自分に逆らってフェルナンドに従うと思えず、余程の理由があったとしか考えられない。
実家の両親を盾に取られたなら、怯えて言う事を聞いても仕方がない。
23
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
密会~合コン相手はドS社長~
日下奈緒
恋愛
デザイナーとして働く冬佳は、社長である綾斗にこっぴどくしばかれる毎日。そんな中、合コンに行った冬佳の前の席に座ったのは、誰でもない綾斗。誰かどうにかして。
憧れのお姉さんは淫らな家庭教師
馬衣蜜柑
恋愛
友達の恋バナに胸を躍らせる教え子・萌音。そんな彼女を、美咲は優しく「大人の身体」へと作り替えていく。「ねえ萌音ちゃん、お友達よりも……気持ちよくしてあげる」眼鏡の家庭教師が教えるのは、教科書には載っていない「女同士」の極上の溶け合い方。
女性向け百合(レズビアン)R18小説。男性は出てきません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる