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第二十一部・フェルナンド 編
婚約指輪トーナメント戦
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もしも落としたらとか、傷つけたら、盗まれたらなど思うと、気が気でないからだ。
勿論、大好きな人からもらった婚約指輪なら、肌身離さず身につけたいが、常にビクビクしなければならないのは、本末転倒な気がする。
(……と言っても、どちらにせよこのクラスで指輪を買うなら、見た目が派手だろうがシンプルだろうが、とんでもない値段なんだろうけど……)
佑と付き合っている時点で、こういう問題については諦めなければならないのだ。
(それに一生に一度の記念品だからこそ、庶民意見での我が儘を言っちゃいけない気がするな……)
自分の遠慮がいつも佑を困らせているのは自覚しているので、こういう時だけは佑も満足できる買い物に協力しなければ……と思った。
「だから、香澄が気に入りそうなデザインの指輪が置いてある店を予約したんだ。勝手に決めてごめん」
「ううん。私、ジュエリーに詳しくないから、方向性を決めてくれて嬉しい」
そういうと、佑はホッとしたように笑った。
ヴァンドーム広場に面している建物は、どれも昔ながらの建築様式で城のようだ。
さらにハイジュエリーブランドショップに入ると、白を基調としたロココ調を思わせる、それでいてモダンな内装となり、感覚がおかしくなってしまいそうだ。
どうやらこの店は、ナポレオンの御用達だったらしく、天井からはシャンデリアが下がり、ショーケースに展示されているジュエリーはどれも照明を反射してキラキラと輝いている、素晴らしい店内模様だ。
店に入ると黒い服に身を包んだ、仕事のできそうな女性が出迎えてきたので、一気に緊張してしまった。
佑はフランス語で予約していた旨を告げ、二人は個室へ向かう事になった。
飲み物の希望を聞かれて、佑はカフェ――エスプレッソを頼み、香澄はカフェ・クレーム――カフェラテを頼んだ。
飲み物と一緒に美味しそうなマカロンやショコラも出されたので、「豪華だな」と思いながらいただいた。
そもそも数百万の買い物をするのだから、一粒四百円ぐらいの高級ショコラだとしても、店としては安い物なのだろう。
やがてカタログが運ばれてきて、佑と一緒にそれを眺める事になる。
「薬指、八号で良かったよな?」
「ん? うん」
カタログに載っている指輪たちは、どのデザインも中心に燦然と輝くダイヤが鎮座し、どう足掻いても大きなダイヤからは逃げられないらしい。
「気に入ったデザインはある? これは?」
そう言って佑は、中央に大きな石があり、リングにもメレダイヤが嵌まっているパヴェリングを指さす。
「ちょ……、ちょっとこれはゴージャス過ぎるかな……」
香澄は慌てて別のページを開くものの、シンプルそうだがやはり大きめのダイヤが嵌まっている写真を見て「うっ」となり、さらにページを捲る。
すると今度はまるでティアラのようなデザインのリングがあり、「いやいやいや!」と思ってさらに捲っていく。
途中から、リングカラーがプラチナやホワイトゴールド、ピンクゴールドなど変化しているのに気づき、「色も決めないとならないのか……」と納得する。
そのあともペラペラとページを捲った香澄は、スンッ……と真顔になってカタログを閉じてしまった。
「決まった?」
佑が顔を覗き込んでくるが、香澄の目はグルグルしている。
「……ど、どれもお高級で同じように感じてしまって……」
「うーん……」
ポーッと前を見て放心している香澄を見て、佑は考え込む。
「じゃあ、迷っている物から、二択で絞っていこうか。トーナメント方式だ」
「んふっ」
まさかパリの高級店にきてまでトーナメントと聞くと思わず、香澄は思わず笑ってしまう。
「ざっくりでいいから、気になったのを教えて」
そう言われ、考えが纏まらないながらも「いいな」と思った物を指さしていく。
そのあと、婚約指輪トーナメント戦が始まった。
「こっちとこっち。三秒以内で答えて」
佑がバッバッとカタログを捲り、香澄はインスピレーションで応えていく。
「ええっ!? こ、こっち!」
その様子を、女性スタッフはニコニコして眺めている。
トーナメントを繰り返していくうちに、最終的に三つまで絞る事ができた。
そこまで決まったところで実際の商品を持ってきてもらい、香澄の指に嵌めてみる事になる。
「ウワアアアアア……」
比較的シンプルなデザインとはいえ、高級な事には変わらず、一つ目を試着してみた香澄はブルブルと手を震わせる。
我ながら格好悪い事この上ないが、仮に銀座あたりに同じブランドの店があるとしても、パリまで足を運ぶとなると感覚がまったく違う。
勿論、大好きな人からもらった婚約指輪なら、肌身離さず身につけたいが、常にビクビクしなければならないのは、本末転倒な気がする。
(……と言っても、どちらにせよこのクラスで指輪を買うなら、見た目が派手だろうがシンプルだろうが、とんでもない値段なんだろうけど……)
佑と付き合っている時点で、こういう問題については諦めなければならないのだ。
(それに一生に一度の記念品だからこそ、庶民意見での我が儘を言っちゃいけない気がするな……)
自分の遠慮がいつも佑を困らせているのは自覚しているので、こういう時だけは佑も満足できる買い物に協力しなければ……と思った。
「だから、香澄が気に入りそうなデザインの指輪が置いてある店を予約したんだ。勝手に決めてごめん」
「ううん。私、ジュエリーに詳しくないから、方向性を決めてくれて嬉しい」
そういうと、佑はホッとしたように笑った。
ヴァンドーム広場に面している建物は、どれも昔ながらの建築様式で城のようだ。
さらにハイジュエリーブランドショップに入ると、白を基調としたロココ調を思わせる、それでいてモダンな内装となり、感覚がおかしくなってしまいそうだ。
どうやらこの店は、ナポレオンの御用達だったらしく、天井からはシャンデリアが下がり、ショーケースに展示されているジュエリーはどれも照明を反射してキラキラと輝いている、素晴らしい店内模様だ。
店に入ると黒い服に身を包んだ、仕事のできそうな女性が出迎えてきたので、一気に緊張してしまった。
佑はフランス語で予約していた旨を告げ、二人は個室へ向かう事になった。
飲み物の希望を聞かれて、佑はカフェ――エスプレッソを頼み、香澄はカフェ・クレーム――カフェラテを頼んだ。
飲み物と一緒に美味しそうなマカロンやショコラも出されたので、「豪華だな」と思いながらいただいた。
そもそも数百万の買い物をするのだから、一粒四百円ぐらいの高級ショコラだとしても、店としては安い物なのだろう。
やがてカタログが運ばれてきて、佑と一緒にそれを眺める事になる。
「薬指、八号で良かったよな?」
「ん? うん」
カタログに載っている指輪たちは、どのデザインも中心に燦然と輝くダイヤが鎮座し、どう足掻いても大きなダイヤからは逃げられないらしい。
「気に入ったデザインはある? これは?」
そう言って佑は、中央に大きな石があり、リングにもメレダイヤが嵌まっているパヴェリングを指さす。
「ちょ……、ちょっとこれはゴージャス過ぎるかな……」
香澄は慌てて別のページを開くものの、シンプルそうだがやはり大きめのダイヤが嵌まっている写真を見て「うっ」となり、さらにページを捲る。
すると今度はまるでティアラのようなデザインのリングがあり、「いやいやいや!」と思ってさらに捲っていく。
途中から、リングカラーがプラチナやホワイトゴールド、ピンクゴールドなど変化しているのに気づき、「色も決めないとならないのか……」と納得する。
そのあともペラペラとページを捲った香澄は、スンッ……と真顔になってカタログを閉じてしまった。
「決まった?」
佑が顔を覗き込んでくるが、香澄の目はグルグルしている。
「……ど、どれもお高級で同じように感じてしまって……」
「うーん……」
ポーッと前を見て放心している香澄を見て、佑は考え込む。
「じゃあ、迷っている物から、二択で絞っていこうか。トーナメント方式だ」
「んふっ」
まさかパリの高級店にきてまでトーナメントと聞くと思わず、香澄は思わず笑ってしまう。
「ざっくりでいいから、気になったのを教えて」
そう言われ、考えが纏まらないながらも「いいな」と思った物を指さしていく。
そのあと、婚約指輪トーナメント戦が始まった。
「こっちとこっち。三秒以内で答えて」
佑がバッバッとカタログを捲り、香澄はインスピレーションで応えていく。
「ええっ!? こ、こっち!」
その様子を、女性スタッフはニコニコして眺めている。
トーナメントを繰り返していくうちに、最終的に三つまで絞る事ができた。
そこまで決まったところで実際の商品を持ってきてもらい、香澄の指に嵌めてみる事になる。
「ウワアアアアア……」
比較的シンプルなデザインとはいえ、高級な事には変わらず、一つ目を試着してみた香澄はブルブルと手を震わせる。
我ながら格好悪い事この上ないが、仮に銀座あたりに同じブランドの店があるとしても、パリまで足を運ぶとなると感覚がまったく違う。
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