【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第二十三部・幸せへ 編

世界で一番大切な、俺のうさぎ

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 そこには知らない黒人男性がいて、笑顔で香澄に薔薇を差しだしている。

「えっ……、え? Excuse me, why?(すみません、どうして?)」

 不安に思って周囲を見ると、いつの間にか双子と澪が消えていた。

「えっ」

 けれど久住と佐野、それに双子の護衛が二人側に控えていて、安堵の息を吐く。

「Receive a rose. And follow this ribbon.(薔薇を受け取って。そしてこのリボンを辿っていって。)」

 黒人男性は香澄に一輪の薔薇を手渡し、左手に持っていた赤いリボンを示す。

「……え、と……」

 彼の左手には幅広のリボンがあり、その先を追っていくと別の人が少し離れた場所に立って、同じように一輪の薔薇とリボンを持っていた。

「Can I follow this?(これを辿っていくといいの?)」

 尋ねると、黒人男性は「Yes!」と白い歯を見せて笑った。

 トクン、トクン、と胸を高鳴らせながら、香澄はリボンを辿って次の人から薔薇を受け取る。

 進むごとに薔薇は増え、途中で抱えきれなくなったので護衛に持ってもらう。

 薔薇を渡してくる人は老若男女、年齢、人種問わず色んな人がいて、皆香澄に薔薇を渡すと「Be happy!(幸せになってね!)」と笑いかけてきた。

(これって……)

 薔薇を受け取りながら、香澄は少しずつジェファーソン記念堂に向かっていた。

 白く大きな神殿のような建物が近づく頃には、受け取った薔薇は数えて百本近くになっていた。

(残っているのは……)

 リボンを持ち香澄を待っている人はジェファーソン記念堂に続き、階段を上がった先に向かっている。

(あそこに、誰が……)

 香澄は「Thank you」と言って薔薇を受け取りながら、胸を高鳴らせて階段を上がっていく。

 受け取った薔薇を数えながら進み、百七本まで受け取ったあと、最後の百八本目を持つ男性が――そこにいた。

「あ……」

 リボンの終わりを持って柱の陰から出てきたのは――、タキシードに身を包んだ佑だ。

 彼の姿を見た瞬間、鼻の奥がツンとし、勝手に涙が溢れる。

「…………どう、して……」

 香澄は赤いリボンを辿りながら、ゆっくり彼に近付いていく。

 まるで運命の赤い糸に引き寄せられるように。

 歩み寄ってきた佑は、泣きそうな表情で微笑んで香澄の前で跪いた。

 近くの柱の陰から双子と澪が姿を現したが、香澄は気づいていない。

 佑は両手で香澄の手を握ってくる。

「……すべて思いだした。沢山傷つけて申し訳ない。……どうか、許してくれ」

 その言葉を聞き、香澄の目からポロッと大粒の涙が零れた。

「……本当? ……私、……香澄です。……あなたの婚約者で、秘書で、……一緒に白金台のお家に住んでいて……」

 佑は呆然と言った香澄の言葉を聞き、切なげに、甘やかに笑う。

「そうだよ。……そして世界で一番大切な、俺のうさぎだ」

「~~~~っ! 佑さん……っ!」

 彼しか言わない言葉を耳にした瞬間、香澄は手に持っていた薔薇を落とし、佑に抱きついていた。

「佑さんっ、佑さんっ、佑さん……っ!」

 香澄は激しく体を震わせ、嗚咽しながらしっかりと彼を抱き締める。

 顔を上げ、変わらず美しいヘーゼルの目を見つめ、その頬や顎のライン、形のいい耳に触れ、柔らかな髪を撫でた。

「本当に佑さん? ……いいの? ……私でいいの?」

 混乱したまま尋ねると、彼は透明な涙を流して笑った。

「香澄じゃないと嫌だよ。後にも先にも、俺は香澄しか要らない。君の愛しか要らない」

「うぅ……っ、う、…………っ、うぅううっ……っ」

 ボロボロと涙を流ししゃくり上げる香澄を、周囲の人たちは優しい眼差しで見ている。

「愛してる。もう絶対に離さないから、『側にいる』って約束してくれるか?」

「…………っ、はいっ!」

 佑は涙で顔をクシャクシャにした香澄を抱き締め、そっとキスをしてきた。

 ――あぁ、佑さんのキス。

 大きな体に包まれ、柔らかな唇に愛された香澄は、ずっとその身を支配していた不安がフワッと消えていくのを感じた。

 ――好き。

 ――大好き。

 ――愛してる。

 胸の奥から大きな感情が溢れ、涙となって目からこぼれ落ちていく。

 甘美な口づけが終わったあと、佑は最後の薔薇を渡した。

「百八本の薔薇。……意味は『結婚してください』」
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